「ホモネタって笑っていいの?」これからのメディアとLGBTの関わり方

「ゲイ引退」というタイトルがスポーツ誌の一面見出しにつけられた件がまだ記憶に新しい。友人の菊本寛さんがハフィントンポストに寄稿した「オネエが笑われることの何が不快か」というブログで指摘されているように、まだまだメディアで消費されている笑いが一般社会で再生産されている現状があります。

 

私たちが無意識のうちにメディアから受けている影響は大きく、しかもそれを反射的に学びとり、悪気なく実践してしまっていたりします。また、メディアと一括りにするには難しい程、私たちは様々なチャンネルから情報を得ることができるようになってきました。どうすればメディアや受け取る側の無意識的な差別や偏見をなくしていけるのか。今回「メディアとLGBT “ホモネタ"って笑っていいの?」というイベントに参加してきたので、その中で特に印象に残ったことを紹介したいと思います。

 

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(シンポジウム「メディアとLGBT "ホモネタ"って笑っていいの?イベントサイトより))

 

メディアのLGBTに関する倫理規定

 

主催は東京弁護士会「性の平等に関する委員会」
貴重講演に続き、パネリストとして評論家・シノドス編集長の荻上チキさん、タレント・文筆家の牧村朝子さん、BuzzFeedJapan記者の渡辺一樹さんが登壇されました。

 

貴重講演では、各メディアの倫理規定等についてのお話がありました。

  • 日本放送連盟放送基準では、11章「性表現」に「性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する。」と書かれています。事例として記載されていたのは、番組中の「ホモの見分け方」コーナーに講義があり中止された。という事例や、深夜の情報番組でMtF(Male to Female)のトランスジェンダーの方の日常生活に密着し、女性トイレを使用するシーンを放送で使えるかという問い合わせに対して、性同一性障害の問題をまじめに取り上げていると判断し使用可と回答した。などの事例が取り上げられていました。

 

  • テレビ東京報道倫理では、3.人権の尊重のところに「性別、性的指向などによって差別しない」と明記されていたり、また、<全体の文脈での点検>というところには以下の記載がありました。

    「ある言葉によって傷つけられたと感じる人がいる以上、いわゆる「差別語」の使用は避けなければならい。またいわゆる「差別語」を使わなくても、差別はあり得る。従って、全体の文脈の中で差別していないか点検すべきである。映像表現にも同様の配慮が必要である。」

     

  • 日本新聞協会の新聞倫理綱領や日本雑誌協会の雑誌編集倫理綱領でも人権の尊重という記載はありますが、特にLGBTに対して触れていませんでした。しかし、共同通信社の記者用語集では2008年からホモセクシュアルをホモ、レズビアンをレズと省略しないという記載が加わっていました。

 

「基準がある所とない所があることに加え、一定の基準があるにもかかわらず差別や偏見を助長する番組や記事が制作されてしまっている現状があります。」

 

笑えるオネエか、泣ける性同一性障害

 

パネルディスカッションでは評論家、タレント、記者それぞれの立場からメディアとLGBTについて議論が交わされました。

 

タレント・文筆家の牧村さんは冒頭に「笑えるオネエ、泣ける性同一性障害」というタイトルでメディアとLGBTに関する歴史や自身の経験を話しました。

牧村さんによると、古くから伝統芸能とされるものは異性装をしていたり、今でいうLGBTは存在していたと話します。そこから「めずらしい人」「笑いの対象」そして最近では「配慮する対象」となってきたという印象を持っているそうです。実際に自身がアイドルをされていた際には、番組のひな壇で男性の好きなタイプを聞かれたり、オーディションでカミングアウトした所「日本初のレズビアンタレント」と表現されたりしたそう。「レズビアンタレントといわれると、パフォーマンスみたいでうーんって思った。」と牧村さんは話します。「男の筋肉きもーい」と言ってくださいということを言われたりもしたこともあるそうです。

 

BuzzFeed記者の渡辺さんは、LGBTという言葉のGoogle検索数に関して「2012年を1とすると2017年で約20倍になりました。ただ、それでもゲイやレズビアンという言葉に比べると10分の1以下の検索数で、今後もっとニュースとして報じていかなければと思っています。実際に記事を書いている者としての感覚では、LGBTと書いただけでそんなにドカンと読まれるかというとそうではなく、日常のニュースとして消費されていると感じています。」と話しました。さらに、「娯楽やエンタメでは”ちょっと違う何か"を楽しむというような世界観の対象としてLGBTが描かれていることが多く、逆に真面目な報道の記事では"なにか困っているから助ける、支援する"という切り口で書かれることが多いです。「身近にいて、なにも変わらないんだよ」というような内容のものはまだまだ少ない印象を持っています。」とのこと。

 

それに対して評論家・シノドス編集長の荻上チキさんは、「日本では概ねLGBTを福祉的な描写で描くことが多い」と話します。「まだ社会的に認知されていないので、いかに不平等な状況にあるのかを示すことは大事です。また、実際にセクシュアルマイノリティはいじめを受けやすく、長期化もしやすいというデータがあります。一般的にいじめのピークは小学校高学年なのに対して、セクシュアルマイノリティは中学校です。理由としては多くの方が思春期に性を意識しはじめるから。それによって不登校など進学や職歴に影響を与えてしまっている現状があり、それなのに教科書には「思春期には自然と異性に興味がわく」と書いてあったりします。」と話しました。

(※先日出された学習指導要領の改訂案では、未だ「思春期になると異性への関心が芽生える」と書かれており、セクシュアルマイノリティの声は反映されていません。文科省は3月15日までパブリックコメントを受け付けています)

 

日常の態度の手本となる"アティチュードモデル"

 

メディアにおけるLGBTロールモデルがいない現状があると思いますが、という質問に対して、牧村さんは「自分をレズビアンロールモデルだとは思っていません。でもロールモデルが必要な部分もある。ジョディフォスターさんみたいな人がいるといいなと思ったりします。」と話しました。

荻上さんは「役割であるロールモデルではなく、日常の態度やコミュニケーションの手本となるアティチュードモデルが必要ではないか。」と話すと同時に「日常の風景を見えるようにしていくことが大事。例えば当事者がテレビ番組見ているときに「いまの表現は嫌だったなー」とTwitterでつぶやくのは意味があるかもしれない。」と語りました。

 

セクシュアリティは"タグ"になっていく

 

LGBTというカテゴリーに関して、荻上さんは「LGBTに限らずカテゴリーをつけることによって見えるようにするということはよくありますが、そのカテゴリーは時代によって変わっていくため、使い方には注意が必要。」と話します。「今はLGBTという言葉が求められていますが、場合によっては一括りにすることで誤った配慮を生むこともある。」「複合的な差別や困難につながることも多いため、LGBTという言葉を使うことでほかの問題が削り落とされるように使われてしまったり、アピールとして使われている反面、踏み絵的に使われているようになっている部分もある。」と話しました。

 

本来「LGBTLGBTではないか」ではなく、一人一人が多様な性のありかたのひとつであると思いますが、セクシュアリティが真の意味で”普通"になるためには、まずメディアはどうすればよいかという質問に対して、渡辺さんは「まずは、個人の自由や権利を尊重するための報道をしていくことだと思う。その上で、こんなすごい人、面白い人がいる。その人がたまたまゲイやトランスジェンダーだった。というような書き方ができたら、それを読んだ子どもたちがセクシュアリティを原因に悩まなくて済むようになるのかなと思います。」と話しました。

 

荻上さんは「LGBTというカテゴリーはある側面では、心と身体の性が一致している異性愛ではない人ということで団結しています。しかし、当事者の語りも世代によって変わります。今はまだ大きなアイデンティティになっているかもしれないけれど、例えばレズビアンであること以外にその人にはいろんな属性がある。そのため、セクシュアリティも最終的には「タグ」になっていくのではないかと思います。

妄想ニホン料理』という日本オリジナルの料理の名前を海外の料理人に伝え、どういう料理であるかは説明せずに、その名前と簡単なヒントから妄想で料理をしてもらうという番組があります。ある回で中東の方二人が日本料理を作っているのを見て、私はおもわず泣いてしまいました。その当時はフランスでテロが起きていた時で、ニュースでもその件が多く報道されていました。そんな中この二人の料理人は実は一人がクリスチャンで、もう一人はムスリムだったんです。でも、全然そこテーマじゃなくて、あくまでこのひとたちにとってそれはタグなんです。」と話しました。

 

「ある種の中心主義を問い直し解体していく、霧散していってネットワーク化する。それぞれのタグの中で生きていき、時折連帯することが大事だと思います。」

 

セクシュアリティが「言っても言わなくてもどちらでも良い」ものになるために

 

メディアといっても様々なので一概に批判はできないし、例えばオネエと呼ばれ活躍されている人たちをすべて批判するというのは違うと思います。それでもメディアで語られるような笑いをそのまま一般社会で再生産してしまうのではなく、受け取る側もメディアとの付き合い方を考える必要があります。身近な関係の中にあたり前のようにLGBTと呼ばれる人がいたり、自分自身のセクシュアリティも多様な性の一つなんだと自覚する人が増えると、あくまでセクシュアリティは自分を構成する要素の一つであり、「タグ」であるという認識が広がるのかなと思いました。

日本におけるLGBTの人口は左利きやAB型の数と同じくらいと言われていますが、左利きやAB型であることと同じくらいセクシュアリティが「言っても言わなくてもどちらでも良い」ものになると良いなと思います。

 

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

違いに対して味方=ALLYでありたいと思う姿勢が、多様性を力に変える

allyという言葉があります。意味は「同盟する」「類族させる」、名詞では「味方」という意味もあります。Allianceという言葉の方が聞き覚えがあるかもしれません。

味方という意味での"ally"が今、求められています。

 

予断を許さないLGBTに関するトランプ大統領令

 

アメリカでは、トランプ大統領が署名した大統領令のうち、難民の受け入れを制限するものやいくつかの国からの入国を制限するものが議論になっています。

そして昨日、LGBTに関してもある動きがありました。

ドナルド・トランプがLGBTQへの差別を容認する大統領令を準備しているとの報道 - FNMNL (フェノメナル)

ドナルド・トランプ大統領が、職場、社会福祉、ビジネス、養子縁組など様々な領域においてLGBTQを差別することを認める大統領令を準備していることをLGBTQ Nationやワシントン・ポストのコラムニストのJosh Roginが明らかにした。

しかし、今朝のニュースでは、トランプ大統領はオバマ前大統領が職場での差別から性的少数者を守るとする大統領令を維持するという報道がされました。

東京新聞:トランプ氏はLGBT守る ホワイトハウス声明:国際(TOKYO Web)

ホワイトハウスは1月31日、声明を出し、トランプ大統領は性的少数者(LGBT)を含む全ての米国民の権利を守ると表明した。イスラム圏7カ国からの市民入国禁止が発表された後、トランプ氏は性的少数者に差別的な政策を導入するのではないかと人権団体などが懸念を示していた。

ホッとする間もなく、次は連邦最高裁判所の判事に保守派のニール・ゴーサッチ氏を指名するという発表がありました。

トランプ大統領 連邦最高裁判事に保守派を指名 | NHKニュース

ゴーサッチ氏は49歳。ハーバード大学を卒業し、連邦控訴裁判所の判事をつとめ、避妊具を使用した産児制限に消極的な司法判断を示したことで知られます。

ゴーサッチ氏が議会で承認されれば、連邦最高裁の構成は、保守派が5人、リベラル派が4人となり、性的マイノリティーの権利の拡大など社会を2分する問題で保守派の意見が通りやすくなると見られます。

アメリカ連邦最高裁判所同性婚禁止は違憲、つまり全州で同性婚が認められる判決がでたのが2015年の6月。この時の最終投票は賛成5、反対4でギリギリの結果でした。
今回トランプ大統領が保守派の判事を指名したことによって、同性婚が再び禁止とされる可能性がなくはありません。発言は時によって異なるため、予断を許さない状況です。

 

性的少数者を守る大統領令の維持のニュースには正直安堵しました。しかし、それと同時に何とも言えない気まずさのような感情も抱きました。もしかしたらそれは、LGBTさえ守られればそれで良いのかという思いからなのかもしれません。

今、allyが求められていると思う理由は、不寛容が広がりはじめている世界で、LGBTに限らず、違いに対して味方でありたいと思う人がもっと可視化されていく必要があると思うからです。

 

すれ違いの連鎖を断ち切るために

 

LGBTの文脈で語られるALLY(アライ)という存在は、Straight Ally(ストレートアライ)を指しています。LGBTではない人、ストレートと呼ぶ時もありますが、シスジェンダーヘテロセクシュアル(心と体の性が一致していて、異性愛)の人でLGBTを理解したい、支援したいと思う人のことを指す言葉です。

例えば何か制度や社会規範を変えるとき、特にマイノリティが権利を獲得する際は当事者だけで社会を変えることは難しい。公民権運動に参加した白人や、女性の権利のために活動する男性など、味方となってくれる非当事者の存在が重要になってきます。

日本におけるLGBTの人口は7.6%=13人に1人と言われています。13人に1人だけが声を上げるのではなく、13人のうち12人を味方につけることで社会は変わっていくのです。

 

こう書くと、何だかALLYという存在が仰々しく感じてしまうかもしれませんが、日本におけるALLYは、もっとハードルの低いものではないかとも思います。
現状としてあるのは、LGBTは「きっとカミングアウトしても受け入れられない」と思い込み、自分のコミュニティに居づらさや疎外感を感じてしまう。それに対してLGBTではない人は、LGBTについて知らないし出会ったこともないと思い込み、悪気なく無意識にLGBTを傷つける言葉を使ってしまっていたりする。そういうお互いのすれ違いが連鎖的に続いていると思います。

そして、この連鎖を断ち切ることができるのがALLYという存在だと私は考えています。LGBTのことを知っていて、理解したいと思っていることを表明するALLYが可視化されることで、この相互のすれ違いが解消されていきます。

 

どうしたらALLYになることができるのかと考えた時、私は「知る」「変わる」「表明する」というたった3つのステップを実行できれば、その人はALLYなのではないかと思っています。
まずはLGBTや性の多様性について知り、その気づきから、差別的な言葉を使わないようにしたりして意識を変え、ALLYであることを表明する。たった3つのステップです。表明する際は例えばSNSのプロフィールにさりげなくAllyと入れてみたり、性の多様性を表す6色のレインボーを身につけたりすることもALLYであることの表明になると思います。

 

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あらゆる違いに対して味方でありたいと思った時、誰もが誰かのALLYになれる 

 

トランプ大統領の就任式翌日、アメリカ・ワシントンD・Cでは女性の権利を訴え、トランプ大統領に反対するデモ「ウィメンズ・マーチ」が開催されました。私はそれに参加した男性たちの声を集めた記事を読みました。

「女性の権利デモ」に男性たちも加わった。その理由を15人に聞いてみました

私たちの周りには、大勢の素晴らしい女性がいます。彼女たちなしでは、今の自分たちはなかった。彼女たち全てのために、今日はデモに加わります。

これを呼んで、ふと「この人たちもALLYなんだ」と感じました。

ALLYとはLGBTではない人で、LGBTを理解したい、支援したいと思う人のことを指す言葉でした。
しかし、果たしてALLYが指す意味はそれだけなのでしょうか?
私はALLYという存在は、もっと広いものではないかと考えています。

 

例えば私はゲイですが、レズビアントランスジェンダー、他のセクシュアリティの人の気持ちを全て理解できるかというとそうではありません。それでも困っている時には味方でありたいと思っています。つまり、LGBTもALLYになれるのではないかと考えているのです。同じように、障害を持っていたり、生まれた地域が異なったり、話す言語が違ったり、理解することは難しいかもしれないけれど、味方でありたいと思うことも、きっとそれはALLYなのではないかと考えるようになりました。
他にも、子育て中の方や、シングルマザー、電車で泣いている赤ちゃん、高齢者、若者、貧困、難民など、それぞれの立場に対して味方でありたいと思う人はきっと多いのではないかと思います。

突き詰めれば同じ人間なんて1人もいないからこそ、その人の特性や属性にかかわらず、あらゆる違いに対して味方でありたいと思った時、誰もが誰かのALLYになれるのではないでしょうか。自分自身が誰かにとってのALLYでありたいと思った時、ふと見渡してみると、自分に味方してくれている存在、自分にとってのALLYが実は周りにたくさんいることに気づけるはずです。

 

違いに対して味方=ALLYでありたいと思う姿勢が多様性をチカラに変える

 

世界が不寛容に向かって進みはじめているように見える最中、日本はやっと多様性を受け入れようという方向に向かおうとしています。ただ、ダイバーシティという言葉がただのマジックワードになってしまっている部分もある気がしています。
多様性を受容するということは、自分と異なるものが目の前にあったとき、それを良しとする姿勢を自らとることだと思います。その時、もしかしたらこれまで自分が抱いていた規範との何かしらの齟齬が生じるかもしれません。それと折り合いをつけるために、何かしらの我慢や忍耐が伴う場合もあります。自分の心の持ちように変化が必要になってくるかもしれません。

英語でToleranceという言葉があります。この言葉は「寛容」と同時に「我慢」という意味も持っています。寛容という言葉は、それだけ我慢や忍耐を必要とするものなのかもしれません。

それでも、違いに対して味方でありたいと思うこと、ALLYでありたいと思う姿勢が本質的に多様性をチカラに変えていくと私は信じています。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

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いま、カミングアウトについて考えたいこと。

深夜2時31分。付き合っているパートナーからLINEがきた。

 

「母さんと姉ちゃんにカミングアウトした」

 

 

3人で話をしていた時に、ふとパートナーが「今悩んでいることがある」と切り出した。「それはLGBTと関係があること?」と聞き返されたことをきっかけにカミングアウトしたそう。今までの人生のことを母と姉に伝え、3人で号泣しながら語り合った。

母親と姉から「言ってくれてありがとう。」という言葉と、以前パートナーがLGBTに関心があることを話した時から、実は色々調べていたことを伝えられた。

今まで会話の中でセクシュアリティについて触れた時は何回もあったそう。「理解できない」という言葉や「まさかあなたは違うよね」「まさか付き合っているわけじゃないよね」という否定的な言葉も耳にしていた。テレビにオネェと呼ばれるタレントが登場するとチャンネルを変えられる時もあった。

「家族が大好きだからこそ、伝えたいけれども伝えられない。」そんな思いをパートナーから聞いていたので、カミングアウトの話を聞いて自分のことのように嬉しかった。

 

家族を含む様々な関係性の中で、セクシュアリティに限らず衝突やすれちがいは必ず起きることだと思う。絶対に途切れることのないつながりなんてむしろ存在しないとも思う。それが無知や偏見によるものであることもきっと多い。

でも、決してそれは"終わり"ではない。いつだって途切れても、気づいて、振り返って、また結びなおすことができる。

そんな関係性ってとても素敵だと思う。

 

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身近な人ほどカミングアウトが難しい 

ここ数日、芸能人のカミングアウトが続いた。

“新世代オネエ”ぺえ、両親へカミングアウトの瞬間に「号泣」の声殺到 母の複雑な本音も…「慎平らしく生きて」 - モデルプレス

「2人にカミングアウトする前にテレビで言っちゃったじゃん?今オネエタレントでやっていてどう思っているんだろうなってのはすごくある」と恐る恐る本題を切り出す。「はっきりとした言葉は聞いてないよ」と促す母親に対して「恋愛対象が…男っていうか…」とぺえが明かすと、父親は「あんまり聞きたくない」と正直に言葉を濁した。

翌日、ぺえが「中途半端な気持ちでやっているわけじゃないから応援してほしいと思ってる」と改めて告げると、母親は「複雑だね、やっぱり」と涙。「『困ったな』と思ったり、『そうなんだ』って思ったり、『嘘だと良いな』と思ったり、そう思うけど、子どもが幸せでいるのが一番親は嬉しいから」と本音を語りつつも、応援することを心に決め、父親も「慎平(本名)が幸せであればうちら夫婦も幸せ」とエール。

「まだまだ同性愛がどこでも理解される世の中ではないかもしれない。カミングアウト出来ずに悩んでいる人もいると思います。無理にとは言いませんが勇気をだしてさらけ出してみると凄く気持ちが楽になります。もっと毎日が楽しくなるかもしれません。私はカミングアウトしたこと後悔していません!」

 

「タッチ」声優・三ツ矢雄二、カミングアウトが話題 ゲイであるとテレビ初告白 - シネマトゥデイ

アニメ「タッチ」の上杉達也役などで知られる声優の三ツ矢雄二が12日深夜に放送されたバラエティー番組「じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告」(テレビ東京)でゲイであることをテレビ初告白し、話題になっている。

これまで自身のセクシャリティーについて聞かれるたびに「グレーゾーン」と言葉を濁してきた三ツ矢だが、番組でそのことについて突っ込まれると、「あれは理由があって、兄がいるんですけど、兄が定年退職するまではちょっと曖昧にしておこうと。会社で何か言われると兄に迷惑がかかると思ったので」と説明し、「兄が定年退職しちゃったんで『もういっか!』ということで」と発言。 

 

LGBTにとって、まだまだカミングアウトしづらい現状がある。NHKが2015年10月に実施したアンケートによると、カミングアウトした人のうち、その相手は友人が最も多く、過半数が最も身近な家族や職場の同僚などに打ち明けられていない

毎日会う人や、身近な人になればなるほど、カミングアウトすると「このコミュニティに居続けることはできなくなるのではないか」という不安や恐れからカミングアウトすることが難しい。また、LGBTという枠組みで語られつつも多様なセクシュアリティがある中、それぞれがカミングアウトする時にぶつかる壁もまた様々である。

そんな中、この2人がそれぞれ身近で大切な関係のことを思い、家族や広く世間にカミングアウトした勇気は本当に素晴らしいものだと思った。

 

カミングアウトするのは、相手を信頼しているから

カミングアウトするということは、相手を信頼している証拠。その人とこれからも友人として、家族として、仕事仲間として、様々な関係の中で"嘘をつかなければいけない"自分ではなく、ありのままの自分でこれからも関わっていきたいから伝えるのではないかと思う。

 

「カミングアウトされたらどう応えたらいいの?」という質問をよく受ける。カミングアウトされた側も、どういう言葉をかけたらいいのか、どう応えた方が誰も傷つかなくて済むのか、どこまで聞いて良いのか、きっと戸惑うと思う。だからこそ、どう応えるかに正解はない。

カミングアウトされた人は「きっとこの人は自分を信頼してくれているんだ」と思って肯定的に受け止めて欲しい。そして疑問に思ったことは自分自身のモラルに従って、素直に聞いてみて欲しい。そうやって会話を重ねることで、その関係性は今までよりもっと素敵なものになっていくと思う。

カミングアウトは一度きりで決着がつくことではない。もしかしたら、1度目のカミングアウトでは心ない言葉をかけられてしまうかもしれない。それでも少しずつお互いに歩み寄っていくことで、きっと相手の心のどこかにその言葉は響くはず。カミングアウトしてからがスタート。ゆっくりで良いので会話を重ねていって欲しい。

 

カミングアウトするしないを選択できる世の中へ

もちろんカミングアウトすることが"正義"ではない。カミングアウトする、しないを自分が選択でき、どちらを選んだとしても不利益を被ることのない社会になると良い。有名人がカミングアウトしても、特にメディアに取り上げられることのないほどそれがあたりまえな世の中になると良いと思うし、そうしていきたい。

だから、その社会が実現するまでは、カミングアウトしたいと思った人を全力で応援したいし、勇気を振り絞って誰かに伝えることができた人を、私は全力で祝福していきたい。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

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「もし子どもの足を引っ張っているなら、手を離してあげて」ゲイの息子を持つ親がLGBT成人式で伝えたこと

「お前まじでホモなのかよ」
「俺のことは掘るなよー!」

成人式の後の中学の同窓会で、友人からかけられた最初の言葉でした。

 

カミングアウトして臨む初めての成人式

 

今日1月9日は成人の日。今年は全国で123万人の新成人が誕生するそうです。新成人の皆さま、成人おめでとうございます。

地元の成人式に出席したのが2年前かと思うと、20歳を過ぎてからの時間はあっという間に過ぎていくなと痛感しています。

 

私がはじめてゲイであることを友人にカミングアウトしたのは、高校を卒業してすぐの春休みでした。大学で地元を離れることが決まっていて、友人とは「毎日顔を合わせる存在」ではなくなったからこそ伝えられたのかなと思うと、約1年が経ち、成人式のための帰省はいつもより少し楽しみで、少し不安だったのを覚えています。


地域によっては一悶着ある式典ですが、私の地元では滞りなく進み、その後中学校の同窓会が開かれました。
カミングアウトしてから約1年。噂として自分のセクシュアリティが広まっているだろうなというのはある程度想像していたので(本来はセクシュアリティを勝手に第三者にばらすことをアウティングといって、避けるべき行為です)冒頭のような揶揄も、いつも通りの返しでひと笑い起きたあとは、他愛のない話で中学時代のことを懐かしんでいました。

とはいえ、成人式に参加したこと自体後悔しているかというと全くそうではなく、中学も高校の同窓会もどちらも楽しくて、旧友との再会は話が尽きず気づけば日付も変わっていたりして、参加して良かったなと思っています。

 

LGBTの新成人は約9万3千人

 

成人式はLGBTにとって参加しづらい現状があります。男性はスーツや袴。女性は振袖といったドレスコードが男女でわかれているため、トランスジェンダーが自分の望む服装で参加することが難しかったり、同性愛や両性愛等の人にとっても、学生時代にセクリュアリティが理由でいじめにあっていて、成人式に参加することが難しかったりすることが少なくありません。

今年の新成人は約123万人ということでしたが、LGBTの人口は約7.6%電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2015」)と言われているので、計算上ではLGBTの新成人は約9万3千人ということになります。決して少なくない数だと思います。
本来は、ありのままの自分で自治体の成人式に出席できることが良いと思いますが、上記のように、まだまだ自分らしい姿で祝福されることが難しい現状があるのです。

 

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私が所属している特定非営利活動法人ReBitでは、誰もがありのままの自分で出席できる「LGBT成人式」を2011年から毎年全国各所で開催しており、東京では今年度で6回目を迎えることとなりました。

成人式は大人になったことを祝福する場だと思いますが、ReBitでは、成人を「成りたい人」ととらえ、成人式を「成りたい人になるための第一歩を踏み出すきっかけの日」と位置付けています。そのため、当事者の家族や友人を含め、LGBTだけでなく様々なセクシュアリティや幅広い年齢の方に毎年ご参加いただいています。

 

息子を語るとき、私の中でセクシュアリティは案外小さな事なんです

 

式典の目玉はやはり新成人の辞です。毎年数名の方が自身のライフヒストリーや、それぞれの「成りたい人」についての思いを語ります。胸を張って、自分らしく生きているさまや、力強く語るその言葉ひとつひとつに会場では涙を流す人も。

実は私も2014年度のLGBT成人式で母親とともに登壇し、私からは新成人の辞を、母からは新成人への辞を読みました。

 

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「小学校時代の息子の口癖は「無理」や「普通」、今とは正反対の自信のない子どもでした」

母からの新成人への辞では、私の幼少期を親視点で振り返るところから始まりました。その後もセクシュアリティの話よりは、どちらかというと息子である私の性格や、挫折体験、そこから得たであろう学びについて話していました。

「このように、息子を語るとき、私の中でセクシュアリティは案外小さな事なんです。息子は勇気を出して戦ったり、挫折したり、いろんな経験をたくさんして、今の彼になりました。

大切なのは、健康や性格や人格であって、セクシュアルマイノリティーである事の悩みが、そこに悪い影響を与える事で、それはとても悲しい事だと思います。」

そして、私の中でも最も印象に残っているのが、ゲイの息子を持つ親として同じ親へ伝えたい言葉。 

「ここに来ている方の中には、親御さんにまだ何も話しをしていない方もいらっしゃるでしょう。息子は大学生になってカミングアウトしてくれました。

 

でも、ショックはありませんでした。小さな頃にテレビを見て「俺がおかまになったらどうする?」と、息子が聞いてきた時から、布石はそこらじゅうにあったんです。

 

今日ここにいらっしゃる親御さん達の中にも、心当たりがあった方は多いのではないかと思います。そして、そんな事はどうでもいいと気が付くまでに、紆余曲折あったと思います。

 

もしも、子どもの足をひっぱっている人がいるなら、手を離してあげてください。ご自分の理想に誘導しようとされている方は、腹をくくって潔くあきらめましょう。

 

子ども達は、いつだって行くな行くなと思う方に歩いて行くものです。親である私たちも子どもの頃はそうやって親を悩ませてきたのではないでしょうか。子どもたちは自分の進みたい方向にちゃんと進んでいくのです

 

私は子ども達に、失敗して、恥をかいて、傷ついても、誰かのせいにする事もなく、笑って立ち上がれる強さを持って欲しいと思いながら子育てをしてきました。

 

これからも生きていく中で、セクシュアリティが原因でも、そうじゃなくても、つらい思いはたくさんたくさんするでしょう。どんなつらい事も、やがて自分の糧になります。笑い話にできる事もあるかもしれません。

 

けれど私が言いたいのは、つらい時につらいと言える強さも、同じように持っていて欲しいということです。

 

逃げる勇気も、頼る弱さも、同じように重要な事です。

 

私はいつもあなたの言葉を待っています。たまには、LINEではなく電話もください(笑)。ご静聴ありがとうございます。」

  

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

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2016年を振り返って

2016年の印象的だった出来事を、自分自身の振り返りも兼ねて。

 

1月

NHKの「あさイチ」に出演

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杉山文野さん、松中権さん、室井舞花さんと並んでとても緊張していました。
NHKの有働さんもV6の井ノ原さんもとても暖かくむかえていただいて、途中からだいぶリラックスできた気がしています。新年早々、貴重な体験をさせていただきました。

 

 

2月

イギリスでLGBT関連の団体を視察

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Stonewallやケンブリッジ大学LGBT学生委員会、イギリス初のゲイの国会議員のクリススミスさんにお会いしたり、濃厚な1週間でした。

その時感じたことなどをブログでもまとめています。

1.ゲイの大学生が、ケンブリッジ大学のLGBTの学生と会ってみてわかった3つのこと - SoshiMatsuoka BLOG

2.中学校で、LGBTへのいじめを防ぐためには - SoshiMatsuoka BLOG

3.「その後の記憶がない」イギリス初のゲイの国会議員がカミングアウトした結果 - SoshiMatsuoka BLOG

 

 

3月

TEDxMeijiUniversityに登壇

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MEIJI ALLY WEEKのことを中心にお話しました。スライドはシンプルに、時間制限のあるなか話すというプレゼンテーションスタイルから得るものは多かったです。

そのときの映像:LGBTの先には何があるのか | Soushi Matsuoka | TEDxMeijiUniversity - YouTube

 

 

愛知教育大学で講演

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中学時代の友達が愛知教育大学でBALLoonというサークルを立ち上げ、企画してくれたイベント。これから教職員を目指す方に多く参加していただけて印象的な会でした。

 

 

4月

日テレ「NEWS ZERO」に出演

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MEIJI ALLY WEEKの取り組みなどから「ALLY」について取り上げていただきました。桐谷美玲さんの顔が尋常じゃなく小さかった(笑)

 

SmartNewsインターンシップ

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所属しているNPO法人ReBitとして昨年度、SmartNews ATLAS Programの第1期に参加し支援していただいていましたが、その延長線上でインターンとして働かせてもらうことに。

現在は「SmartNews ATLAS Program 2 - 子どもが平等に夢見れる社会を残そう」というタイトルで第2期がスタートしています。ぜひご注目ください。

 

 

5月

TOKYO RAINBOW PRIDE

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初めての運営側スタッフとしてWEB/SNS周りを担当したり、CMとして自分の作った音楽と映像が渋谷のMODIの屋外広告に流れたのを見たのは感動でした。

 

 

6.7.8月

6-8月は一度就活を進めながら自分がやりたいことを考え直す期間でした。
9月から休学という選択をして、もう少しできることをやってみようと思っています。

 

 

9月

医療系学生団体Miのイベントに登壇

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同世代の違う業界の団体がやっているイベントでお話させてもらうのは初めてだったので印象的でした。

 

地元、名古屋で講演

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教職員の方や、地域の方、中学生高校生など幅広い年代の方が来ていただいて、地元でこうした動きが広がっていくのが嬉しかったです。

 

 

10月

RAINBOW CROSSING TOKYO開催

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ReBitで企業とLGBTがともに「自分らしく働く」を考えるをイベント、RAINBOW CROSSING TOKYOを開催し、主に広報まわりを担当しました。企業とLGBTやALLYのたくさんの方が交流できて、熱いイベントでした。

 

HuffingtonPost/LGBT総合研究所のイベントに参加

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就活や転職での困りごと等から考えるグループワークのモデレーターを務めました。

以下から当日のイベントの様子が見れます。

www.huffingtonpost.jp

 

 

11月

映画「ハンズオブラブ」上映会&トークショー開催

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明治大学で松竹さんと一緒に開催した映画「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」の上映会とトークショーの司会を担当しました。

 

一橋大学のイベントで登壇

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8月頃、一橋大学院の事件がWEBメディアを中心に多く報道されてから数ヶ月。一橋大学ジェンダー社会科学研究センター(CGraSS)主催のイベントで大学でできる支援についてお話しました。

 

 

12月

soarに掲載

soar-world.com

自分自身について記事として深く取り上げていただいたのは初めてで、貴重な経験でした。等身大の思いを語ることができたかなと思います。

 

AbemaTV「Abema Prime」で内閣府の結婚支援関連の検討会の提言案にコメントしました

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その前にコメントしたHuffingtonPostの記事をきっかけに提言案の内容も変わり、より多様な価値観を尊重する方向性になっていてよかったです。

 

九州大学で講演

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九州大学のキャリアデザインの授業、「王さまと王さま」を訳されたゲルマー・アンドレア先生主催の公開講座と、2日間かけて違う参加者層に向けてお話ができて、こちらも少しいつもと違う新しい経験をさせていただきました。

 

 

 

そんな2016年ももうすぐ終わり、新しい年が始まりますが、さっそくイベントがあったりと年明けから走り出していく予定です。

 

・1月13日(金)は、SmartNews ATLAS Programが贈る連続イベント「社会の子ども」のVol.2「子どもに誰が・いつ・どう性を伝えるか」トークショーを開催します

shakainokodomovol2.peatix.com

 

・1月15日(日)にはNPO法人ReBitの2016年度LGBT成人式を開催します

lgbtseijinshiki.themedia.jp

どちらも絶賛参加申し込み受付中ですので、ぜひおこしください。

 

2月からはNPO法人ETIC.のMAKERS UNIVERSITYに参加することになりました。 

makers-u.jp

 

昨年実施したMEIJI ALLY WEEKの時から、「誰もが誰かのALLYになれる」というコンセプトを掲げて活動してきました。

LGBTだけにとどまらず、ひとりひとりが持つあらゆる違いに対して味方でありたいと思った時、誰もが誰かのALLYになれる。

来年ももっとスピードを上げて進んでいきたいと思っています。

今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

 

2016年LGBTニュースまとめ

2016年を振り返って、個人的に印象に残っているLGBT関連のニュースをまとめてみました。

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1月

LGBT特集のイノッチ発言に賞賛「理解者になろうとする前に、自分だったらどうか想像してみること」

ネット上では、イノッチのこんな言葉が称賛を集めていました。

「人として付き合っていけたら一番いいと思うんですよ。ゲイだろうとレズビアンだろうと、いい奴も悪い奴もいると思うし」
「これを見てアライ(理解者)さんになろうとする前に、自分だったらどうか想像してみること」
「日本の社会のためには、みんなが気持ちよく仕事できるのが一番いいわけじゃないですか。制度とか難しいと思うけど、そういう方向に向かっていくしかないんじゃないかな」

 

2月

三重県伊賀市で同性パートナーシップ制度

三重県伊賀市は16日、同性カップルを公的に「パートナー」と認める制度を4月1日から始めると発表した。「LGBT」と呼ばれる性的少数者の人権を尊重する姿勢を示すことで、市民の意識改革を促す狙いがあるという。 

 

沖縄県那覇市でも同性パートナーシップ制度

 「性の多様性を尊重する都市・なは(通称・レインボーなは)」宣言した那覇市は、同性カップルを結婚と同等の関係と認める「パートナーシップ制度」を、「ピンクドット沖縄2016」が開催される7月17日をめどにスタートさせる。また同制度に加え、市独自の取り組みとして市職員で通称名の使用を希望する場合は、辞令交付などの行政処分にかかる場合を除き許可していく方針。

 

3月

LGBT」高校の教科書に掲載

2017年度の高校教科書に「LGBT」という言葉が盛り込まれる。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーを指すこの言葉が教科書に登場するのは、これが初めてとされる。 

性的マイノリティや多様な家族についての記述は、地理歴史や公民、家庭の3教科の教科書計31点あり、うち家庭の4点がLGBTを取り上げたという。

 

生田斗真、桐谷健太と恋人役 初のトランスジェンダー女性役で新境地

俳優の生田斗真が、荻上直子監督が5年ぶりに手がけるオリジナル脚本の新作『彼らが本気で編むときは、』(2017年2月25日公開)で、初のトランスジェンダーの女性役で主演することが20日、わかった。

 

アメリカ全50州で、同性カップルが養子を迎えることが可能に

3月31日、アメリカの連邦裁判所は、ミシシッピ州の同性カップルが養子を迎えることを禁じた法律を違憲とする判決を下した。これにより、アメリカの全50州で同性カップルが養子を迎えることが合法となった。

 

4月 

文科省が性的マイノリティの児童生徒に関する教職員向けパンフレットを公開

LGBTなど「性的マイノリティ」の児童生徒について、教育現場はどう対応すべきか。文部科学省は4月1日、教職員向けパンフレットを公表した。

文科省が2014年に実施した調査や、2015年4月に出したLGBTの児童生徒への配慮を求めた通知がベースになっている。

 

5月

イタリア、結婚に準ずる権利認める 同性カップル権利法が成立

イタリアで5月11日、同性カップルに結婚に準じた権利を認める「シビル・ユニオン」の合法化法が下院で可決した。
レンツィ首相は公式Facebookページで、「多くの人にとって記念すべき日となった。ついに認められたと感じる人も、今夜は眠れなかった人も、どこで祝おうかと思っている人も、もう待てないと思っていた人も」などと書き込んだ。
これにより、G7の主要7カ国で同性カップルに関する国の法律がないのは日本のみとなった。

 

本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除 HRW調査

日本政府は、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーLGBT)の子どもを学校でのいじめから保護できていないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で指摘した。LGBTの人びとへの平等な権利保障に関する議論が社会全体で高まる中、国のいじめ防止対策は2016年の見直し時期を迎える。

 

東京レインボープライド2016開催

同性愛やトランスジェンダーといった性的少数者(LGBTなど)が自分らしく生きることができる社会を目指そう、と訴える「東京レインボープライド2016」のメインイベント「フェスタ」が7日、東京都渋谷区の代々木公園で始まった。

運営委員会によると、今年は過去最高の7万人の来場を見込んでいるという。

 

The Huffington Post
東京レインボープライド2016、大盛況のフェスタ初日に行ってみた(画像集)

BuzzFeed
東京レインボープライド 代々木公園で国内最大級のLGBTフェスタ

 

KABA.ちゃんが女性の声を初披露 性別適合手術後、初の番組生出演

 

6月

フロリダ ゲイクラブ銃乱射事件

12日午前2時ごろに同性愛者向けのナイトクラブ「パルス」内で乱射を始めたという。49人が死亡、53人が負傷して病院に運ばれた。13日朝までに、死者48人の身元が確認されたという。

 

 イギリス ウィリアム王子がゲイ雑誌の表紙を飾る

英国の同性愛者向け雑誌「アティチュード」の表紙にイギリス王室のウィリアム王子が掲載され、LGBTへのいじめ問題について「どんな人でも性のあり方によっていじめを受けることがあってはならない」と語りました。

 

8月 

一橋大学ロースクールの男性がアウティングにより自死

一橋大学ロースクールに通っていた男性(当時25)が、校舎から転落して亡くなった。仮名をAくんとする。彼はゲイであることを同級生にばらされ、苦しんでいた。愛知県在住の遺族は、秘密をバラした同級生や大学を提訴。85日、東京地裁で、第1回の口頭弁論が開かれた。

 

リオ五輪、LGBT選手の参加者数が過去最高に

欧米メディアによると、リオデジャネイロ五輪性的少数者(LGBT)の参加者数が過去最高となった。米CNNテレビは人権団体の調べとして、今回は少なくとも41人が出場し、23人だった2012年ロンドン五輪を超えたと報じた。

 

LGBT、働く人の8% 職場にいると「抵抗を感じる」が35% 連合が調査

職場の上司や同僚、部下などが、いわゆるLGB(同性愛者、バイセクシュアル)であった場合、どのように感じるか聞いたところ、「嫌だ」(どちらかといえばを含む)は35.0%、「嫌でない」(同)は65.0%。職場に同性愛者やバイセクシュアルがいることに抵抗を感じるという人は3人に1人の割合となった。

 

10月

work with Pride 2016開催


11月

渋谷区 同性パートナーシップ証明書発行から1年

2015115日にスタートした同性カップルへの「パートナーシップ証明書」の発行開始から1年、渋谷区はダイバーシティ推進のための施策を積極的に進めている。今度はLGBTのためのコミュニティスペースの設置を打ち出し、そのキックオフイベントが113日、行われた。

 

ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ大統領に


12月

成宮寛貴さん報じたメディアの罪、ゲイ当事者が指摘「同性愛"疑惑"が娯楽として消費された」

同性愛の当事者は、一連の報道の渦をどのように受け止めたのか。ゲイを公表している南和行弁護士は、ハフィントンポストに寄稿し、「同性愛の噂話が娯楽として消費される」ことで同性愛者らへ与えた被害を以下のように指摘した。

 

 札幌市 同性パートナーシップ制度を検討 政令指定都市では初

市の案では、希望するカップルに証明書を交付し、婚姻関係にある異性パートナーに準じた扱いが受けられるようにする。これまで同性同士では困難とされてきた生命保険の受け取りや住宅入居時の手続きがしやすくなると見込まれる。

 

台湾で同性婚認める法案の審議開始 アジア初

台湾で同性婚を認めることを盛り込んだ民法の改正案が議会に提出され、アジアで初めて同性婚が法的に認められるかどうか、審議の行方に関心が高まっています。

台湾では「LGBT」と呼ばれる性的マイノリティーへの理解が若者を中心に進んでいて、ことし10月には当事者や支援者による8万人規模のパレードが開かれ、蔡英文総統も同性婚への支持を表明しています。

 

ジョージ・マイケルさん死去

英国のシンガー・ソングライタージョージマイケルさんが死去した。53歳だった。マイケルさんの広報担当者が25日、「自宅で安らかに息を引き取った」と発表した。98年に自ら同性愛者であることを公表。 

 

Beyond the Rainbow

5月に開催された東京レインボープライド2016のテーマが「Beyond the Rainbow 〜LGBTブームを超えて〜」でした。

今年もLGBTという言葉を多くの場所で見聞きしました。理解が広がっていくことは素晴らしいことですし、LGBTLGBTではない人にとっても、より自分らしく生きられる社会へつながることだと思います。

2016年を振り返って、嬉しいニュースも多くありましたが、それと同時に悲しい事件も世界中で起きていて心が痛みます。

まだまだLGBTが抱える困難は山積しています。ブームとして終わらせるだけでなく、ひとつひとつ着実に解消していきたい。

LGBTって言葉を前によく聞いたけど、あれ何だったんだろう」ではなく、「LGBTなんて言葉が昔はあったらしいね」と、LGBTLGBTではないかというカテゴリーにもとらわれず、自分らしく生きている人たちがあたりまえに存在している世の中になると良いなと思います。

 

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

「異性愛、法律で禁止へ」高校生が映画を通して描く、セクシュアルマイノリティの生きづらさ

NPO法人映画甲子園主催 高校生のためのeiga worldcup 2016の結果が先日発表されました。
自由部門の優秀作品賞を受賞したのは、愛知県立昭和高等学校の「The Other Side」という作品。
扱うテーマは「セクシュアルマイノリティ」です。

 

映画はこちら

jimotv.jp

 

映画紹介文

性的少数者への差別や偏見をテーマにしました。登場人物達の抱える生きづらさがより身近に伝わるように世界観を工夫しました。

 

冒頭から引き込まれるものでした。
テレビに映るテロップには「異性愛 法律で禁止へ」の文字。

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*1

2年前の自然受精禁止法の成立に続き、2月16日、欧米諸国に続いてここ日本でも異性愛者禁止法が国会で成立しました。この法案により、今まで法的には犯罪とみなされていなかった異性間の交際、また、交際している男女の同居が法的に禁止されることとなりました。

背景としては、人口に対して同性愛者が異性愛者より多く、精度の高い人工授精によって、自然出産より安全で健康な子どもが生まれる確率が高い社会。つまり、マジョリティである同性愛者が安全な人工授精によって子どもを授かるより、異性愛者の自然妊娠・出産の方がリスクが高いことから、この異性愛者禁止法が成立しているという設定でした。
 
異性愛者がマイノリティであり、社会から抑圧されている中、物語ではある高校の教室で一組の男女がお互いを好きになります。周囲に異性愛者だとバレないよう、二人はお互いに同性の偽名をつけあい、同性のカップルを装いながらLINEや電話で愛を育んでいく。しかし、二人の関係は長くは続きませんでした….

 

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*2

 

この映画の中の、同性愛が”普通"である社会で一組の男女のカップルがお互いを好きになっていく過程を見ていると、今私たちが生きる現実の社会と対比していまい、結局異性愛は美しく、素晴らしい、異性愛至上主義のようなものを描いているのかなと、ふと思ってしまっている自分がいました。しかし、この映画が伝えたいのはそんなことではありませんでした。
好きになる性、性的指向が「多数派ではない」たったそれだけで社会から抜け落ちてしまう。差別や偏見にさらされ、自分で自分自身のことを否定してしまう、そんなマイノリティの生きづらさをリアルに描写しており、クライマックスでは、現実と同じようにシンプルな解決方法などなく、それでも尚前進する。高校生を生きる彼ら自身が考えるあるひとつの答えが提示されています。
 

次の世代が歩きやすいように

実は私もこの愛知県立昭和高等学校の出身であり、しかも映画研究部にも少し所属していました。
今回、映画研究部でこの映画の脚本を書いた当事者の高校生が私に連絡をしてきてくれたことで、映画のことを知りました。
彼は高校でもゲイであることを特に隠すことなく生活しているそうです。私が通っていた頃は自分のセクシュアリティに気づきつつも、なかなか周囲にはオープンにはできずにいたので、彼の勇気は本当に素晴らしいなと思います。
 
ここ数年で「LGBT」という言葉がメディアでもよく取り上げられ、一種のブームのように語られてきていますが、はたして当事者は自分らしく生きられるようになってきているのだろうかと思うと、時々わからなくなることがあります。例えば、同世代の自分の周囲では徐々に意識が変わってきているように感じることもありますが、とはいえ一橋大学院でゲイの学生が自死した事件等も現実にはまだまだ起きています。職場の同僚が同性愛者・両性愛者だったら嫌だと答える人が35%もいるという調査もあります日本労働組合総連合会LGBTに関する職場の意識調査」2016年6月-7月)
 
もちろん、今こうして私が自分らしく生きていると思えていることや、ブログを書いたり、LGBTについて発信できているのも、次の世代が歩きやすいよう、先人たちが道を切り開いてくれたからこそだと思います。今すぐに目に見える形ではないかもしれないけれど、一歩一歩着実に前に進んで行くことで、その次を歩く人たちの足どりが軽くなっていたり、選択できる道が増えていたり、自分自身を否定しないですむようになっていたらいいなと思って、そう信じて活動しています。
そんな中、自分も通っていた高校で、いま自分らしく学校生活を送っている人がいる。それだけでなく映画という手法でまた次の道を繋いでいる。こんなに素敵なことはないと思いました。
 

わたしの「ふつう」とあなたの「ふつう」は違う。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。

同じく愛知県つながりで、先日話題になった人権週間に合わせて制作された啓発ポスターには、こんな言葉が書かれています。
わたしの「ふつう」とあなたの「ふつう」は違う。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。
例えば自己紹介で「松岡宗嗣です。7月29日生まれで、A型のしし座です。」と、血液型や星座を言うのと同じように「ゲイです。」と、言っても言わなくてもどっちでも良い、それくらいセクシュアリティが多様であることが"あたりまえ"になるといいなと思います。
 
高校生が描く、力強い30分のメッセージです。ぜひ見てみてください。
 
映画「The Other Side

 

ちなみに、同校の「いる夏、いない夏。」という作品も入賞しています。2作同時に入賞はすごいですね。是非あわせてご覧ください。

*1:映画「The Other Side」より

*2:映画「The Other Side」より

「卒業したら死のうと思う」と語った先輩へ、なにも伝えられなかったLGBTの後悔

LGBTレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字からとった性的マイノリティの総称のひとつ)は日本の人口のうち約7.6%=13人に1人と言われています。既に約484万人のLGBTが日本全国で、あなたの隣で、働いています。

しかし、就職活動中に「ホモ」や「オカマ」といった差別用語によるハラスメントを受けることや、就職後も、配属先で笑いの対象にされたり、自分のセクシュアリティがバレないよう嘘を続けながら働いているLGBTも少なくありません。

今回、私が所属しているNPO法人ReBitの代表である藥師実芳さんへインタビューをし、自身の体験から、就労におけるLGBTの抱える困難や、それらを解消するきっかけとなるイベントについて語っていただきました。

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「卒業したら死のうと思う」と語った先輩へ、なにも伝えられなかった後悔


LGBTの就活・就労に対する事業を展開することになったきっかけは、藥師さんが大学3年生の時。「1つ上にトランスジェンダーの先輩がいたんですけど、周りにもセクシュアリティをオープンにし、常に明るく、みんなから好かれているような人でした。でもある時、その先輩は「大学を卒業したら死ぬしかない。自分はトランスジェンダーだからどうせ働けない」とぽろっと言ったんです。
「そんなことないですよ」と答えたけれど、その根拠がなかった。ここに行ったらサポートがある、こんなロールモデルがいる、こんなLGBTフレンドリーな企業があるという情報が当時はほとんどなくて」と藥師さんは語ります。

その翌年、藥師さん自身が就職活動を経験。結果としては、50社受けて2社内定を獲得するも、誰に相談すればいいのかもわからず「よく就活帰りの中央線でひとりで泣いていました。」と語りました。
受けた会社によっては、トランスジェンダーであることを理由に、面接の途中で帰らされたり、面白おかしく話を聞かれたり、体の構造について聞かれるなど、ハラスメントを受けることもありました。

「こういった悩みを相談できたり、共有できる場や、ロールモデルLGBTフレンドリーな企業に出会える場があればよかった」そんな思いから社会人1年目にキャリアカウンセラーの資格を取得し、LGBT就活支援を始めました。3年目を迎えるこの事業では約500人のLGBT就活生を応援。日本初となるLGBT就活サイトも立ち上げました。

セクシュアリティのせいで、自分に選択肢が少ないんじゃないかと感じている人がいるとしたら、そうでないと伝えたい。どんな業界でも、どんな業種でも選べる。そんなメッセージを企業と一緒に伝えていきたい。」

学齢期、就活期、就労初期からLGBTをサポートしたい


「国内の約484万人のLGBTのうち、同僚一人にでもカミングアウトしているLGBTの割合は4.8%。300人の職場でようやく1人カミングアウトできているかいないかという状況です。」と藥師さんは語ります。(電通ダイバーシティ・ラボ LGBT調査 2015年4月 LGBT500人への調査

自分の上司や同僚・部下が同性愛者や両性愛者だった場合「嫌だ」と答えた人は約35%という調査もあり(日本労働組合総連合会LGBTに関する職場の意識調査」2016年6月-7月)、このカミングアウトの割合の低さの背景には、こういった嫌悪があると考えられます。

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LGBTの人は就活のときも、はたらきはじめてからも困りやすいんです」と藥師さんはいいます。

カミングアウトをして就活をすると、面接官に理解がない場合、ハラスメントを受けることがあります。また、カミングアウトをしないで就活をすると、セクシュアリティアイデンティティのひとつだからこそ、例えば学生時代にがんばってきたことや、その企業に入りたい理由の背景にセクシュアリティが関わっていた場合、嘘をつかないといけません。また、LGBTについての研修や福利厚生の状況を企業側に聞くことができず、結果的に「自分が安全に働ける職場なのかどうか」を知ることができません。

履歴書の男女欄の記入や、職場でのカミングアウトなど、トランスジェンダーの約69%、同性愛者や両性愛者の約40%が求職時に困難を感じるといわれています。

(出展:特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ国際基督教大学ジェンダー研究センター2015)

働きはじめると更に困難があります。カミングアウトして働く場合、人事には理解があっても、配属先にLGBTに対する理解がないと、ハラスメントなどにつながります。また、カミングアウトしていない場合でも、例えば「土日なにしてたの?」と聞かれたときに、同性パートナーをはじめとした家族や、自分自身について開示することが難しくなることで、コミュニケーションや人間関係に困難が生じることがあります。

また、福利厚生に同性パートナーが家族と想定されないことで、同性パートナーが入院した場合に休みが取れなかったり、転勤になった際にパートナーと一緒に行く事ができないことがあり、その職場で働き続けることが困難になることがあります。

違いを想定している場所は、誰にとっても働きやすい場所


「カミングアウトしても、しなくても自分らしく働くことができる職場が理想です」と藥師さんは語ります。誰かがカミングアウトしていてもしてなくてもLGBTの人がいることが前提となっている職場。そして、LGBTの存在が想定されている場所は、LGBTではない人にとっても働きやすい場所だと思います。例えば信仰の違いや、考え方の違い、文化の違いなど、目に見えない違いも含めた違いが想定されている職場は、誰にとっても働きやすい職場であるはずです。

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あなたが選べない選択肢はないと伝えたい


人生においても大部分を占める「職場」で、自分らしく生きることができないことはとても辛いことです。
そんな中、最近ではLGBTへの差別禁止規定を明文化したり、同性パートナーも配偶者と認め結婚祝い金を支給する企業が出てきました。さらに、死亡保険金の受取人を同性パートナーに指定できるプランを整えたり、企業の中にLGBTの社員コミュニティができる企業も出てきました。少しずつですが、社会は変わりつつあります。

LGBTでも職業の選択肢を狭める必要はない。「あなたが選べない選択肢はない」と伝えていくために、NPO法人ReBitでは、様々な業界のLGBT施策に取り組む企業を呼び、企業も、LGBTLGBTでない人も、就活生も、学生も、社会人も、ともに「自分らしくはたらく」を考えるワークEXPO「RAINBOW CROSSING TOKYO」を10月8日(土)に開催することになりました。

「このイベントに何百人という人がくることは、企業のダイバーシティ施策を後押しする強いメッセージになります。企業が変えてください、ではなく、このイベントに来たあなた自身が企業を変えるメッセージになる。来場したひとりひとりのストーリーを企業側が感じとって、行動に移していく、その交差点を作りたい。」と藥師さんは語ります。

RAINBOW CROSSING TOKYOの「CROSSING=交差点」には、企業と企業の交差、企業と学生の交差、企業とLGBTの交差、LGBTLGBTじゃない人の交差。様々な人や思いが交差する場をつくりたいという願いが込められています。

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LGBTも、ALLYも、一緒に


RAINBOW CROSSING TOKYOでは、企業による講演や、各企業と参加者との交流ブース、LGBTLGBTを理解し、支援したいという「ALLY(アライ)」の社会人によるパネルトーク、個別質問会、オーダーメイドスーツの採寸や販売など、多数のコンテンツが実施されます。

参加は無料で、対象は、自分らしくはたらくことに興味のある就活生・学生・求職者・社会人(年齢・セクシュアリティ不問)です。もちろんLGBTではない人も参加できます。

LGBTは見た目で違いはわからないけれど、あなたの隣にも必ずいる。あなたが知ることで職場がLGBTフレンドリーになるきっかけになる。」と藥師さんは言います。

自分の職場にLGBTがいるかわからない、カミングアウトされたけど、どう応えればいいかわからなかったという人、社会人でも学生や就活生でも、これから職場でALLYとして行動したいけど、どうすれば良いかわからないという人の、ひとつのきっかけになるはずです。

13人に1人のLGBTだけでは職場は変えられません。ALLYと一緒に声をあげて行動していくこと、13人のうち13人が声をあげていくことで環境は変わっていきます。

RAINBOW CROSSING TOKYO


最後に、藥師さんがFacebookで投稿した一文を載せたいと思います。

5年前、「どうせ働けないから死のうと思う」とトランスジェンダーの先輩に言われた僕は何も言えなくて。
4年前、実際就活をすると不安を誰にも相談できずにひとり泣いた。
3年前、「LGBT就活」をはじめて今までに約500名のはたらくを応援。
2年前、構想をはじめたイベントを、いよいよリリースしました。

10月8日、やります。
学生も就活生も既卒生も社会人も、企業関係者も支援者も。LGBTの人もLGBTじゃない人も。あなたに、来てほしいと思ってます。

 

空き家で貧困を解決する!?「ハウジングファースト」とは

「ハウジングファースト」という言葉を聞いたことがありますか?

これは1990年代にアメリカではじまったもので、住まいを失った人々に生活訓練や就労支援等ではなく、まず最優先に安心して暮らせる住まいを提供するというホームレス支援のアプローチのひとつです。

私自身この言葉を知ったのはつい最近でした。そのきっかけである、8月21日にスマートニュース株式会社で行われたイベント「空き家で貧困を解決する〜ハウジングファーストの挑戦〜稲葉剛×森川すいめい×望月優大トークイベント」について紹介したいと思います。

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ホームレス支援のシステム


現在のホームレス支援のシステムでは、例えば路上やネットカフェで生活する方が福祉事務所で生活補助を申請したとき、民間の宿泊所やドヤと呼ばれる簡易宿泊所に移されるそうです。そこから老人ホームやアパートを借りたりという流れもあるそうですが、問題はその前の宿泊施設。

そこは大人数での集合生活を余儀なくされたり、汚れや虫の発生など劣悪な環境下で、多くの施設利用者はそこから退去してしまったり、場合によっては施設に入所してから精神疾患を患ってしまうこともあるそうです。

ちなみに最近では、路上生活者だけでなくアパートに住んでいる低年金の高齢者がアパート立ち退きになったことがきっかけで、生活保護をうけ施設に入ることが多くなっているとのことで、同じように施設への入所と劣悪な環境により退去を繰り返してしまうこともあるそう。

そんな中、カナダやフランス、スウェーデン、スペイン、ポルトガル、オランダ、オーストラリア等の各国で取り組まれているハウジングファーストという考え方が注目されています。

そして、それを日本でも実践していこうと、登壇者の1人である稲葉剛さんが代表理事をつとめる一般社団法人つくろい東京ファンドを中心に、ハウジングファースト東京プロジェクトが結成され、現在はクラウドファンディングでその資金を集めています。

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「信頼すること」と「失敗させること」


登壇者の1人で精神科医の森川すいめいさんは、アメリカで実際にハウジングファーストによるホームレス支援を実施しているNGO「Pathways to Housing PAの事例より、従来型の支援の問題点と、なぜハウジングファーストが良いのかを説明していただきました。

従来のホームレス支援では、どこかに住むために一定期間治療や生活訓練を行い、その後アパート入居を目指すという方式が取られていました。しかし、それでは多くの人が途中でドロップアウトして路上生活に戻ってしまったり、アパートに入居できるようになるまでの時間がすごく長くなったり、また、アパートに入居できた途端支援がストップしてしまったりすることで自力での生活が困難になり、再び路上生活に戻ってしまう等、多くの問題を抱えていました。

Pathways to Housing PAでは、最初からアパートを提供し、例えば電気のつけ方や買い物の仕方を教えたり、多職種のチームや地域でサポートを行うことで、利用者の自由度が高くなったことや、退去率が低くなったことが理由で、従来の長い時間をかけてアパートへ入居させる方法よりも効率的かつ社会的なコストを削減することができたそうです。

Pathwaysは「何回でも失敗していい。あなたが刑務所に行こうと薬物を使用しようと常に私たちはあなたの味方だ。」という強い意志を持ってサポートを行っているそうで、「信頼すること」や「失敗させること」はホームレス支援にかかわらず、自立に向けた重要な要素であることを教えていただきました。

また、Pathwaysが実施しているハウジングファーストには35項目のルールに近いものが作られていて、その項目を得点化することで高いところには国から補助がでたりと、しっかり制度として整えてルールを守って運用していくことも大切だということをお話していただきました。

とはいえ、家があって、生活への支援があればそれでいいのかというとそうではない。と、つくろい東京ファンドスタッフの大澤さんは語ります。

ホームレスは住むところがないだけではなく「孤独」であることも、自身の自尊感情を低下させてしまっている要因である。と、あるホームレスの方がホームレス生活を通して存在意義が薄れていってしまった話など、具体的な事例を交えてお話ししていただきました。

自由ではあるが孤独。

家だけではなく、コミュニティの形成など多角的な支援が必要である現状。ハウジングファーストのこれからの課題についても教えていただきました。

貧困という課題にどのような姿勢でのぞむか


モデレーターをつとめたスマートニュースの望月さんの「生活保護を受けている人に対する世間の視線はなかなか厳しい。もちろんホームレス支援の現場などにもっと人が増えていってほしいと思うが、そうではない人たちが、貧困という課題に対してどのような姿勢でのぞめば良いのか」という質問に対して、つくろい東京ファンドの稲葉さんは生活保護受給者の割合について説明していただきました。

本来生活保護を受けることができる人のうち、実際に生活保護を受けている人はたったの2割。

その理由は大きく2つあり、1つ目は生活保護の申請者に対する差別的な運用によって、窓口で追い返されてしまう「水際作戦」と呼ばれるもの。2つ目は、生活保護を受けるということ自体に対する後ろめたさ、世間の目を気にしてのことだそうです。この世間の目に対して精神科医の森川さんは「自分とちょっと違う人といかに生きていくかを意識して考えてほしい」と語ります。

現在、世界中の精神科の病室のベッドのうち5分の1が実は日本にあると言われているそうです。地域でちょっとヘンな人がいたらすぐに病院に行けと言われたり、ちょっと自分と違うひとをすぐに排除する日本の空気感が理由のひとつではないかとお話ししていただきました。

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隣近所からあいさつをするところからはじめたい


自殺で亡くなる割合が低い地域は、うつ病の人がそれに後ろめたさを感じず表に出せる人の割合が多いそう。そして周囲もそれに対して「大変だね」といってむしろ積極的に関わったりする。そういうエリアは、やはり道端で他人と関わる雰囲気がある地域が多いそうです。

そう考えてみると、ホームレスや貧困の問題は決して遠いものではなく、とても身近なことなのではないかと実感が湧いてきます。ひととのコミュニケーションや多様性を受け入れあえる価値観、社会の仕組みや、そして幸せのあり方。普段私がLGBTへの理解を求めて活動していることと繋がる点が多くあったと感じました。

相対的な貧困率や子どもの貧困率は高くなってきています。それに対して実は空き家率も高くなっているそうです。このイベントをはじめ、空き家で貧困を解決しようとハウジングファーストを実践するために日々奮闘している方々を応援しています。

そして私自身も、まずは隣近所からあいさつをするところから始めてみようかなと思います。

「その後の記憶がない」イギリス初のゲイの国会議員がカミングアウトした結果

こんにちは、オープンリーゲイの大学生で、NPO法人ReBitスタッフの松岡宗嗣です。イギリスに行って感じたことをブログを書いてきましたが、これが(勝手に)最終回です。

第1回

soshi-matsuoka.hatenablog.com


第2回

soshi-matsuoka.hatenablog.com

 

最終回は「LGBTに関する政治」についてです。
イギリスで様々なLGBTの団体や活動家の方とお話しするなかで、私は、ある歴史的な共通のターニングポイントがあること気づきました。それは「1980年代」です。

激動の1980 年代


映画「パレードへようこそ」で登場するLGSM(Lesbians and Gays Support the Miners)が、サッチャー政権のもと抑圧されてきた炭鉱労働者たちと連帯したのが1980年代。

LGBTの権利に関する運動が広がっていく中、Stonewallが生まれるきっかけとなった法律"Section28"が作られたのが1988年。そして、ゲイであることをはじめてオープンにした国会議員が誕生したのが1984年。こうした1980年代の動きはイギリスのLGBTの歴史にとって重要であったと思います。

様々な葛藤や憶測や決断で渦巻く1980年代の中で、私は特に重要だったある人物にお会いすることができました。

その人物とは、国会議員クリス・スミスさんです。

イギリス初、ゲイの国会議員


クリス・スミスさんは1984年に国会議員はじめてゲイであることをカミングアウトした政治家で、2005年には、同じく国会議員ではじめてHIV陽性者であることもオープンにした方です。

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クリスさんが国会議員になったのは1983年。当時はゲイであることを公的にはオープンにせず、身近な人にだけカミングアウトしていたそうです。

選挙中、もし誰かにばらされてしまったら?という問いに対しては、「はい、私はゲイです。それが何か?次の質問は?」と答える気でいたそうです。しかし結果的に誰に何も聞かれることはなく、セクシュアリティがオープンになることはなかったということでした。

当選を果たしてから、クリスさんの心の中には自分らしく生きたいという気持ちと、周囲のLGBTの活動家が批難されている現実を見て、いつか公的にカミングアウトしようと決心していたそうです。

私の名前はクリス・スミスです、そして私はゲイです


その時が訪れたのは1984年の11月。ある街でできたLGBTを差別する法案に対して反対デモが行われ、クリスさんは応援演説を頼まれました。遅刻してデモに参加したクリスさんは約1000人の参加者を前にして、冒頭こう話し始めました。

「My name is Chris Smith. I am Gay.(私の名前はクリス・スミスです、そして私はゲイです)」

観客は立ち上がり盛大な拍手を送りました。

「スピーチしはじめて1分以内に拍手を送られたことは人生でこの1回だけだ」と、今だからこそ笑いながらお話していただきましたが、当時のカミングアウトはとても怖かったそう。そのスピーチの後の記憶が全然ないと語っていただいたことから、計り知れない覚悟を感じました。

その後クリスさんのカミングアウトは多くのメディアにとりあげられ、LGBTの当事者からお礼や感謝の手紙が多く寄せられたそうです。LGBTに対して偏見のあった政治家たちも、クリスさんがカミングアウトしてから、LGBTへの対応が良い意味で徐々に変化していきました。

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正直であること


クリスさんの次にLGBTであることをオープンにした国会議員が誕生したのは、クリスさんがカミングアウトしてから約9年後。ゲイであることをはじめて公的に明かしたクリスさんは、多くのLGBTを救ったのだろうと思います。

最後に、日本の政治家に一言いうとしたら何を言いますか?と質問したところ
「もしゲイであることを隠している政治家の方がいたら、私はカミングアウトすることを応援します。国民は"正直"であることを望むからです。」と笑顔で答えてくれました。

中学校で、LGBTへのいじめを防ぐためには

こんにちは、オープンリーゲイの大学生で、NPO法人ReBitスタッフの松岡宗嗣です。前回はケンブリッジ大学LGBTの学生に話を聞いてみました。

前回:

soshi-matsuoka.hatenablog.com

 

今回は、「LGBTに関する教育」について触れてみたいと思います。私自身NPO法人ReBitのスタッフとしてLGBTについての出張授業を行っていることもあり、イギリスのLGBT関係の団体はどのようにLGBTについての授業や研修をしているのか気になっていました。

そこで、イギリスのLGBT関係の団体の中でも特に大きいNGOであるStonewallにお邪魔してきました!

出迎えてくださったのは、キットさんとクレアさんです。

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Stonewallは1989年に設立したNGO団体で、Section28と呼ばれる「公的な教育現場で同性愛を助長してはならない」という法律に反対するために生まれました。創設者のなかの一人には、映画ロード・オブ・ザ・リングガンダルフ役でも有名なイアン・マッケランさんがいます。

Stonewallの活動は政治家へのロビー活動や学校、企業への研修、独自のキャンペーンなど多岐にわたります。また、国内外のLGBTに関する多くの団体や活動家をつないでいる役割も担っているそうです。オフィスはロンドンのウォータールー駅付近のビルにあり、中も広くて綺麗で驚かされました。

LGBTについて先生が先生を教えるための研修

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私が所属するNPO法人ReBitで実施する出張授業では、小学校から大学まで、様々な学校にLGBTの学生メンバーが伺い、学生や教職員の方向けにLGBTの基礎知識だけでなく自分自身のライフヒストリーなどを話しています。

それに対して、Stonewallが教育現場で実施しているLGBTについての教育で特徴的だったのは、"Teacher training"(先生への研修)に加えて、 "Teacher to Teacher training"(先生が先生を教えるための研修)を行っている点です。現場の先生が生徒だけでなく、他の先生にも伝えていけるような研修を実施しているのは素晴らしいですね。

研修の際に、Stonewall ではテキストや授業案、DVDなどをセットにしたInformation Packという授業キットを先生たちに配布しているそうです。実際に使用している教材やDVD、グッズなどをお土産として一部いただいてきました!

教材の中には、「ストレートアライとして、どのようにLGBTフレンドリーな職場を作ることができるか」というものや、「女性であり、レズビアンであることとは」など、細かく視点が分かれているものもあります。(一部PDFでも手に入れることができます)

今回は、日本におけるLGBT教育にも応用できそう!ということで、中学校向けLGBT教育の入門書にあたる"Getting Started"を一部紹介したいと思います。

中学校で、LGBTへのいじめを防ぐためには


Getting startedの副題は「中学校における同性愛や両性愛トランスジェンダーへの嫌悪によるいじめを防ぐためのツールキット」となっています。

使い方としては、このテキストをもとにLGBTに対するいじめをどのように防ぐかを5つのステップに従って考えていきます。テキストの中にはいくつかのテンプレートやチェックリストがあり、それらがこの教材を使用している人を手助けしてくれます。

テキストではまず、用語集、いじめの実態、法律ではどうなっているか、差別用語の例がコンパクトにまとめられています。ここを読むだけでもふむふむと納得できそう。

いじめを防ぐ5つのステップ


どのようにいじめや差別発言等を防いでいくかを示す5つのステップがこちら。

1.グランドルールをつくる
同性愛や両性愛トランスジェンダー嫌悪によるいじめに対してのポリシーを明確にしましょう。

2.学校の方針について、保護者とコミュニケーションをとる
手紙などを利用して、いじめに反対するポリシーについて保護者の方々とコミュニケーションをとりましょう。

3.実態を記録する
いじめや差別用語の実態をモニタリングし、記録しましょう。

4.学校で何が起こっているかを調査する
生徒や職員、保護者に対し、いじめや差別的言動についてアンケート等で調査しましょう。

5.LGBTの若者をサポートする
チェックリストを利用し、LGBTに関する情報や学校の制度を確実にしましょう。

それぞれの項目にはツールキットと呼ばれる例やチェックリストが載っており、そちらも参考にしながら実際に考えていくことができます。
Getting Startedをはじめ、いただいた教材の多くはpdfでWEBサイトにアップされています。関心のある方はStonewallのページからぜひダウンロードしてみてください。

Some people are gay. Get over it!


Stonewallが大々的に行っているキャンペーンに "Some people are gay. Get over it!"というものがあります。「何人かはゲイなんだから、しょうがないじゃん!」みたいな意味。つまり、LGBTと呼ばれる人たちがいることはまぎれもない事実なんだから、困り事に対して取り組んでいかなきゃいけないでしょ!という強めなメッセージです(笑)

日本も含めて世界中のどこでもLGBTはいます。今まではいないとされていたものが、実は見えていなかっただけ。今を生きている人だけでなく、次の世代のひとたちがより自分らしく生きていけるよう、教育をはじめ、あらゆる角度からGet over it!と強めに(笑)声をあげていくのも良いかもしれません。

ゲイの大学生が、ケンブリッジ大学のLGBTの学生と会ってみてわかった3つのこと

世界中から注目を浴びるなか、国民投票でEUから離脱することが決まったイギリス。

ついこの前の6月25日にはロンドンのプライドパレードであるPride in London 2016が行われ、現職警備員が恋人にプロポーズをする動画がTwitterで多くリツイートされていたりと、盛り上がりを見せていました。

そんなイギリスに以前行った際、様々な方面でLGBTに関する活動をされている方にお会いすることができたので、そこで得たものをブログに書いてみようと思います。

 

LGBTの若者、教育、政治をテーマに勝手に連載しちゃいます


私はオープンリーゲイな大学生で、学生生活を送りつつ、特定非営利活動法人ReBitのスタッフとしてLGBT教育事業などに携わったり、大学からLGBTの理解者、味方であるAlly(アライ)を増やしていくキャンペーン"MEIJI ALLY WEEK"を企画したりしています。

そんなゲイの大学生がイギリスに行って感じたことを「若者」「教育」「政治」の3つの視点から(勝手に)連載していきます!

まず第一回目は「LGBTの若者」

自分自身も大学生であることから、イギリスのLGBTの大学生はどんな生活を送っているのか気になっていました。
そこで、日本でも有名なあの名門大学「ケンブリッジ大学」にお邪魔してきました!

ケンブリッジ大学LGBTの学生に会ってみてわかった3つのこと


1.学生が大学に物申すことができる

 

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そもそもケンブリッジ大学は31のカレッジからなる集合体で、各カレッジが自治体のような体制をとっています。

各カレッジの学生をまとめる組織としてCUSU(Cambridge University Students' Union)という学生委員会があり、その中のひとつ、CUSU LGBTLGBTの学生のための委員会。LGBTをはじめとして、誰もがより通いやすい大学になるよう活動しているそうです。

CUSU LGBT+の代表のサラさんによると、トランスジェンダーのための学内雑誌や、LGBTの基礎知識や学生生活ガイドを掲載したパンフレットを作って新入生全員に配ったり、学生の意見をまとめて実際に学長に伝えて制度を変えたりすることもあるそう。

入学時にそういったパンフレットが貰えるのは、LGBTの学生にとって安心感につながるだろうし、全員に配ることによってLGBTではない人にも情報が共有されているのが良いですね。日本の大学にも広がってほしい!

2.セクシュアリティだけじゃない!LGBTを軸にしたサークルがいくつもある

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実際にケンブリッジ大学に通っている日本人のLGBTの学生にも会ってお話を聞くことができました。

ケンブリッジ大学には大小様々なサークルがあり、しかも「LGBT のサークル」だけでなく、例えばLGBTに関する映画を見るとか、アジア系のLGBTの集まりなど、セクシュアリティ×エスニシティ、趣味、アクティビティなどを組み合わせたサークルがいくつもあるそうです。ダイバーシティ豊かだからこそ、自分にあったサークルを見つけられそうですね。

ちなみに、その学生は日本にいたときはセクシュアリティを隠して生活をしていたそう...

ケンブリッジに来てからは、多くのLGBTの学生がセクシュアリティをオープンにしていることを目の当たりにし、自らもオープンにして学生生活を過ごしているそうです。

ただ、アジアにはLGBTが少ないイメージを持たれていることが多いそうで、初対面のときはいわゆるストレートと呼ばれるような、異性愛者だと思われてしまうことが多いということでした。

3.毎週火曜日はLGBT Night Clubが開催!

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大学のキャンパスというと、敷地が広くて、芝生があって、校舎がいくつもあって...というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。実はケンブリッジというのは街の名前で、その街の中にいくつも乱立しているカレッジをまとめてケンブリッジ大学と呼びます。

街なので様々なお店が軒を連ねていますが、その中にはもちろんナイトクラブもあります。ケンブリッジ大学に通う学生も多く訪れるそう。

さらに、あるクラブでは、毎週火曜日がLGBT Night Clubになるそうです!(残念ながらケンブリッジに行った日は火曜日ではなかったので行けませんでした...)

自分らしく学ぶことのできる環境を自分たちで整える

CUSU LGBT+では、定期的なcoffee meetingの他にLGBTの啓発や教育、交流など多岐にわたるイベントも開催しています。

サラさんによると、これから力を入れていきたいことは、外国からのLGBTの留学生のニーズを知り、LGBTの留学生にとっても通いやすい大学にすることだそうです。

ケンブリッジ大学も最初からLGBTフレンドリーな大学だったわけではなく、時間をかけて一歩一歩進んできた経緯があります。

日本のLGBTを取り巻く環境はここ数年でめまぐるしく変化してきました。LGBTも含めた誰もが通いやすい大学にしていくために、大学も少しずつ変化していく必要があるのではないでしょうか。