小学校教諭「誰だオカマは」と差別発言、これは氷山の一角にすぎない
埼玉県の小学校で、5年生の授業中に男性教諭が「誰だオカマは」など差別的な発言をしたというニュースがありました。
クラスに在籍している「男女両方の性に違和感を持っている」ことをオープンにしている児童が帰宅後保護者に相談。保護者が学校に抗議した所、教諭から謝罪があったそうです。
この教諭に対して憤る気持ちはもちろんありますが、殊更に個別ケースとしてのこの教諭を責め立てることが、必ずしもこの問題の本質的な解決ではありません。
2015年には文部科学省から全国の教育委員会に性的マイノリティに関する通知を出しているにもかかわらず、こうした問題がなぜ起きてしまっているのか。氷山の一角にすぎないこの件をもう少し大きな視点から捉え、今後どうすれば同じような問題を未然に防ぐことができるのかを考えたい。
この記事では、
- 今回の件のどこが問題だったのかについて振り返り、
- 現状の制度における課題を整理し、
- 同じような問題が起きないために今後どうすれば良いか
を順番に考えていきます。
それではまず、今回の件のどこが問題だったのか、から振り返ってみましょう。
先生が率先して「セクシュアリティを揶揄する」ことを示してしまっている
小学校5年生の社会科を担当していた男性教諭は「教科書の音読中、男子児童の一人が(女性のように)声色を変えてふざけたので、注意しようと不用意に『ここにオカマがいるのか。誰だオカマは』と発言してしまった」と話しているそうです。発言をした教諭は、クラスに男女両方の性に違和感をもっているという児童がいたことを把握していました。
どういったシチュエーションでその発言があったのかはわかりませんが、クラスに当事者がいることを認識していたにもかかわらず、「女性のように声色を変えていること」=「オカマ」と揶揄したり、「不用意に発言」という所からも偏見があったことは明らかです。
そしてそれが誰かを傷つける可能性があるという想像力はなかったのではないか。「多様な性について知らなかった」では済まされないですが、教職員にとってもまだまだ適切に知る機会が多くないことも事実です。また、知ったとしてもそのことが本当の意味で身につくかというと、まだそこまでは至らないのが現状かもしれません。
いずれにせよ、性的指向(どの性別の人を好きになるか/ならないか)、性自認(自分の性別をどう認識しているか)が何であっても、それを理由に揶揄したり差別的な発言をすることは、教室にいるかもしれない性的マイノリティの児童生徒や、まだ自分のセクシュアリティに悩んでいる人、これから向き合うかもしれない人、当事者の友人がいる人など、教室にいる”誰か”を傷つけてしまうことがあります。
当事者がそこにいるかいないか、見えているかいないかにかかわらず、本来児童生徒を守る立場であるはずの教員が、率先して「セクシュアリティを揶揄する」ことを他の児童にも示してしまっているという点も、教育として非常に問題があると考えます。
現状の制度における課題を4つのポイントから整理してみる
次に、現状の制度における課題を整理してみましょう。
抑えておきたいポイントは以下の4つ
今回の件で唯一良かったと思う点は、教諭の差別発言に対して児童とその保護者が正式に抗議できたことです。ここには社会の変化を感じました。しかし、たまたま明るみになった今回の件は、実は氷山の一角にすぎません。学校で先生にカミングアウトをしたことがある人は1割程度という調査もあり、当事者は見えにくい状態です。差別的な発言があっても抗議できる可能性は低いでしょう。
現状の課題①「文部科学省の通知の限界」
冒頭に少し触れましたが、2015年の4月には文部科学省から全国の教育委員会に対して「性的マイノリティへの配慮や相談体制を整える」必要があるというような内容が含まれた通知を出しています。さらに翌年には教職員向けのパンフレットも作成しています。
これによって確実に、学校で多様な性に関する理解を深めようとする機運は高まりつつあります。しかし、やはり現状としてこの通知は全ての学校に周知徹底されているわけではありません。例え法律があったとしても全ての現場が適切な対応を取れているわけではないように思います。増して「通知」だけで現場にきちんと知れ渡るものなのかは少々疑問です。内容的にも、どういう発言が差別にあたるのか等細かく書いてあるわけではないため、現場の教員にもなかなか浸透しにくい状況です。
現状の課題②「学習指導要領にLGBTは含まれていない」
小学校や中学校の保健の教科書には「思春期になると自然と異性に関心が高まる」という内容が記載されおり、性的マイノリティの存在が想定されていません。今年2月の学習指導要領の改訂の際に、多様な性について学習指導要領に取り入れてほしいという声が多数あがりましたが、文科省は「LGBTを指導内容として扱うのは、保護者や国民の理解などを考慮すると難しい」と判断し、結局内容は変わりませんでした。そのため、教員養成課程においても、多様な性について学ぶ機会は未だ必修ではありません。人によっては何も学ばず現場にでてしまい、今回のような差別発言を「不用意に」言ってしまうかもしれない状況なのです。
現状の課題③「全ての教職員に対して研修は実施されていない」
各学校ごとではありますが、教職員が多様な性について学ぶ機会は全国的に増えてきています。しかし、実施している/していない学校、さらに研修をしていても、個々人の教員の受け止めなど、理解状況はバラバラで、環境の整っていない学校に通っている児童生徒にとっては、自分らしく生きることは非常に厳しい状態です。やはり全ての地域で一定水準の研修を実施すべきだと思います。
現状の課題④「日本にはLGBTを保護/承認する法律がない」
日本には性的指向や性自認を理由とした差別を禁止するような法律がありません。文科省からの通知が出ていても教員全てに行き渡っているわけではない中で、今回のような発言をなくしていくためには、少なくとも学校現場において「こういう言動はダメ」ということが明確に示される必要があると思います。
さらに③で述べたのように、残念ながら多様な性に関する研修を行うかどうかは学校の主体性に任されてしまっており、現状全国の学校で研修を実施することはできていません。法律ができることによって広く研修を実施することの後押しになると思います。
差別的な言動にNOと言える法律も、丁寧に理解を広げることも両方必要
同じような問題を起こさないために今後どうすれば良いのか。
課題を整理して見えてくるのは「差別的な言動に対しNOと言える法律」も、「丁寧にコミュニケーションを重ねて理解を広げること」も両方必要だということです。
もちろん法律だけあればこの問題が解決されるわけではない。けれども、今回大きな問題なのは、既に文科省が施策を打っているにも関わらず、教員という公的で、子どもたちに与える影響の大きい立場にいる人が、「目の前に当事者がいたにもかかわらず(本来は当事者の有無にかかわらずですが)不用意に差別的発言が出てしまった」ということであり、これが氷山の一角だと思われる点です。
そして、当たり前ですがこれは学校現場だけのことではありません。まだまだ差別的な発言にNOという理解の浸透が、表層的なものとなっているように思います。職場や行政、医療、民間サービスなど、社会全体で法律として「差別的な言動にNO」と示しつつ、ひとりひとりに理解を広げるための「丁寧なコミュニケーション」の両輪で回していくことが必要ではないでしょうか。
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最後に余談ですが、今回の報道の中で「男女両方の性に違和感を持っている」児童のことを「LGBTの児童」と呼んでいたところに違和感を感じました。LGBTという言葉は性的マイノリティを表す総称の一つとしても使われていますが、個人を表す時など、場合によってはその存在を抽象化しすぎて「LGBTという人」がいるかのような表現になってしまいます。
本来はその人のセクシュアリティをそのまま書く方が適切だと思いますが、ただ、「LGBTの児童」という記載となってしまう背景には、「LGBT」と「SOGI」の関係など、概念を適切に把握しきれていないことが垣間見られます。ここでも、社会全体に向けた表層的でない理解の浸透が課題となっているように思います。
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
フロリダ銃乱射事件から1年、「プライドパレード」がいつもと少し違った理由
アメリカ、フロリダ州オーランドにあるゲイナイトクラブ「PULSE」で、死者50人、負傷者53人に登る銃乱射事件が起きてから昨日でちょうど1年。11日に首都ワシントンやロサンゼルスなど各所で開催されたプライドパレードでは、普段の華やかなパレードとは少しだけ違った印象を受ける場面がありました。
それは、ロイターの記事でのパレード主催者のコメントにも現れています。
「今年はパレードでなく、行進を行うべき年だ。われわれのコミュニティを祝うものであると同時に、われわれを取り巻く環境や、人権を巡るデリケートなバランスを認識する機会でもある」。
このコメントはとても示唆的だと私は思います。
LGBTブームの恩恵と課題
今年5月に発刊された雑誌「世界」の特集タイトルは「<LGBT>ブームの光と影」、さらに、先日発刊されたAERA6月12号の特集タイトルは「LGBTブームの嘘」でした。日本ではここ数年でLGBTに関する情報が急激にメディアに取り上げられ、その言葉の認知度は著しく向上しました。「ブーム」と表現されるほど、そのスピードは早く感じられているようです。
その恩恵は確実に現れています。渋谷区や世田谷区の同性パートナーシップ制度を皮切りに、現在6つの自治体で同様の制度が施行されています。性的指向や性自認による差別禁止の明文化や、社内研修など、企業のLGBTに関する取り組みは年々増加しています。5月に開催された東京レインボープライドでは、参加者数が過去最高の10万人を記録しました。セクシュアリティをオープンにしている当事者がメディアに取り上げられ、身近な範囲でも、少しずつLGBTも自分らしく生きることのできる社会へと進んでいるように感じています。
しかし、こうした良い影響の反面「LGBTという言葉だけが一人歩きしているように感じる」という声を度々耳にします。その背景には、都市部と地方での情報や理解度の差、LGBTの市場化など、当事者が置き去りにされていると感じる現状や、他にも見落とされていることがあるのかもしれません。企業や自治体のLGBTに関する施策は進みはじめていますが、残念ながら未だ日本にはLGBTを保護/承認する法律がなく、自治体の同性パートナーシップ制度にも法的効力がありません。
バランスを大切にしていきたい
私たちは、性的指向や性自認にかかわらず自分らしく生きることのできる社会を実現するために、何を目的とするのかを改めて明確にしておく必要があります。そして、私はそこに大きく2つの目的があると思っています。
ひとつは、「性的指向や性自認にかかわらず、平等な権利を持つ」こと
もうひとつは、「LGBTであることで笑い者にされるのでも、腫れもの扱いにされるのでもなく、あたりまえな存在として扱われる」ことです。
これらの目的のために私たちは「LGBT」という虹色の旗のもとで団結し、声をあげています。そして、性的指向や性自認を理由とした不当な扱いや差別・偏見から自分自身を守ることができる法律を必要としています。
同性であっても法的にパートナーとの関係を保障して欲しいし、子どもが自分自身のセクシュアリティで悩まずにすむよう、学校で全ての子どもが多様な性のあり方について適切に学べるようにして欲しい。カミングアウトが就職活動に不利になる理由になってほしくないし、職場で性的指向や性自認を理由にハラスメント受けて働き続けられなくなることをなくしていきたい。トランスジェンダーの人が自分の性自認に基づくトイレを使用しても何も問題がないようになってほしいし、戸籍の性別を変更する際に手術を必要とする条件をなくしてほしい。
もちろん法律だけで社会全体の理解が進むわけでも、何かひとつ変われば全てが一瞬で良くなるわけでもありません。ミクロの面でLGBTについて理解してもらうためには、学校や職場、家族や友人間でも、やはり知識に加えて、当事者と出会ってもらうことが重要だと私は思います。そういったひとつひとつが積み重なり、さらに制度と結びつくことで社会全体の理解につながります。
ブームで終わらせないために、スピードが早いと感じている時だからこそ冷静になって、良い波には乗り、時には振り返って見落としてきた道を探る。そのバランスを大切にしていきたいです。
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka
台湾で同性婚容認へ「婚姻は子どもを産むことを前提としていない」
台湾で、同性婚が認められていない現行の民法は「違憲」と判断され、2年以内に修正することが命じられました。
以前、明治大学で開催されたワークショップ「台湾における婚姻平等化に向けた法改正の動き」の内容をブログにまとめましたが、その最後に「司法院大法官が3月に憲法法廷(口頭弁論)を開き、憲法解釈を行うことを決定しました」と書きました。その憲法法廷で今日5月24日、同性婚が認められていないことは「違憲」と判断されたことになります。
また、立法機関が2年内で法律の修正または制定をしなかった場合、民法の婚姻は自動的に同性にも適用され得ることになるそうです。
AFPBBの報道よると、今回の判断は14人の大法官のうち10人以上の賛成が必要でしたが、反対に回ったのは2名のみだったそうです。
アジア初の同性婚が実現するのか…!台湾すごい。本当におめでとうございます!
— 松岡宗嗣 (@ssimtok) 2017年5月24日
まだまだ今後に注目だけど、アジア初の婚姻の平等化に向けてこれからも突き進んでほしい。日本も続いていきたい。#台湾 #同性婚 #LoveWins #Taiwan #marriageequality
婚姻は子どもを産むことを前提条件としていない
今回の判決の要旨をEMA日本がまとめてくれています。
「同性婚を認めたとしても、異性婚を前提としてきた社会秩序が変わってしまうわけではない。むしろ、婚姻の自由を同性カップルにも広げることで、社会の安定が強化されるであろう。同性愛者であれ異性愛者であれ、愛する人と肉体的にも精神的にも一緒にいたいと思う気持ちやその必要性は変わらない。婚姻は人間の尊厳を擁護し、健全な個性を育むために重要である。
我が国(台湾)においては、同性愛者は社会から否定されてきた。それゆえ、彼らは社会から隔離され、孤立し、事実上および法律上の差別に苦しめられてきた。また、社会の偏見により、彼らが民主的な方法で法的な不利益を改めることも困難であった。
民法の婚姻規定は、子どもを産むことを前提条件とはしていない。婚姻した一方が子どもを作れないからといって婚姻が無効になることもなく、離婚の理由にもならない。子どもを産むことが婚姻の基本的な要素であるとは全く言えない。ゆえに、自然な妊娠によって子どもを授かることができない同性カップルについても、そのことを理由に婚姻を認めないことは、合理性を欠く。
同性婚が認められても、同性カップルは異性カップルと同様、婚姻中も離婚後も権利と義務を負うのであり、社会の基本的倫理は不変である。社会的倫理に影響することを理由に同性婚を認めない、つまり同性カップルの人たちに異なる扱いを認めることは、全く合理性を欠き、憲法の定める平等の原理に反するものである。」
すばらしい判決文です。
誰もが平等に婚姻制度を利用できるために
婚姻の平等化に関して、具体的な行動が起きたのは1986年。あるゲイカップルが立法院に対して婚姻制度の創設を請願した所、「同性愛は公序良俗に反するので認められない」と回答されたそうです。
そこから31年、アジア初の婚姻の平等化に向けて、台湾はまた大きく一歩を踏み出しました。
同性婚が認めれらていない現行の民法が違憲とされたことで、台湾は次のステージに進んでいきます。前回のイベントで登壇されていた許(キョ)さんは「同性婚」という言い方ではなく「婚姻の平等」を目指すとお話ししていました。
「同性婚という言葉を使うと、同性以外の性別を排除するかたちになってしまいます。同性の婚姻ではなく、婚姻の平等に力点を置きました。」
今回の憲法解釈では"同性カップルが現行の民法では法的に保障されていない"ことが違憲という判断でした。今後は、セクシュアリティにかかわらず、誰もが平等に婚姻制度を利用できるための法整備が進んでいくことになると思います。
日本でも議論を加速させていきたい
日本を見てみると、朝日新聞の世論調査では、同性婚を法律で認めるべきかについて、「認めるべきだ」が49%と、「認めるべきではない」の39%をやや上回っています。
また、女性では「認めるべきだ」が54%と過半数を占めていたり、18~29歳、30代では容認派が7割に達しています。(60代では「認めるべきだ」「認めるべきではない」がともに42%、70歳以上では「認めるべきではない」が63%と、年代のギャップが大きく出ています)
あるテレビ番組で同性婚について取り上げられた際に、出演していたデヴィ夫人が「愛し合うのは認めますよ。結婚は自然の摂理に反すると思う。結婚は子孫を残すことですから、それに反します」と同性婚に反対したことが報じられました。
今回の台湾の判決文の中にもある通り、「結婚は子孫を残すためのもの」という考えは、子どもを持たない・持つことができない異性カップルはどうなるのかとか、シングルで子どもがいる人、高齢で結婚した人、いろんなものを見落とすことになります。婚姻した一方が子どもを作れないからといって婚姻が無効になることもなく、合理的ではありません。
また、「自然の摂理」という話もよく出ますが、自然界ではライオンやキリンやイルカなどなど、数多くの動物で同性愛関係が確認されています。例えば雄同士のペンギンで子育てをしていたり、性的指向の話ではありませんが、ファインディングニモでおなじみのカクレクマノミは雄から雌に性別が変わったり、自然界でも「性のあり方」は様々なのです。
まだまだ日本では同性婚についての議論が十分にされているとは言えません。
アジア初の婚姻の平等化を目指して、台湾の大きな前進を祝福すると共に、日本での議論も今後もっと加速させていきたいと思います。
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
Twitter @ssimtok
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「同性愛について違和感はあるけど、嫌いという訳ではない」という人こそ考えて欲しい"無意識のうちの嫌悪"
国際反同性愛嫌悪・トランスジェンダー嫌悪の日
5/17のIDAHOT(国際反ホモフォビア&トランスフォビアの日)に合わせて。
— 松岡宗嗣 (@ssimtok) 2017年5月15日
1990年のこの日にWHOの精神疾患リストから同性愛が削除されたことをきっかけに、ホモフォビア(同性愛嫌悪)トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)に反対する記念日として世界中に広がっています。 pic.twitter.com/iGnFiTfVBS
同性愛嫌悪による迫害や事件
無意識のうちの嫌悪
「気づく」ことができれば「変わる」こともできる
いつでもアップデートし続ける姿勢
東京レインボープライド2017「フェスタ・パレード」について取り上げた記事まとめ
5月6日(土),7日(日)に開催された東京レインボープライド「フェスタ・パレード」について取り上げた各社記事をアーカイブ
HuffPost
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BuzzFeed
NHK
朝日新聞
東京新聞
毎日新聞
時事通信
ORICON NEWS
Letibee LIFE
GENXY
Walkerplus
ねとらぼ
モデルプレス
日刊スポーツ
デイリースポーツ
Time Out Tokyo
Japan Times
「"普通の人かLGBT"じゃない」世界がもっとカラフルに見えてくるきっかけをくれた"東京レインボープライド"とは
(東京レインボープライド2016)
Hairpin drop heard around the world
「カラフルな格好でインスタに写真をあげたいから」でも良い
自分の目の前に広がる世界は、以前より確実に色鮮やかでカラフルなものになっている
東京オリンピックに関わる企業「LGBT施策」が必要な理由
オリンピック憲章「性的指向による差別の禁止」
「組織委員会は、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は、人種、肌の色、性別、 性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」というオリンピック憲章の理念を強く支持する。」差別・ハラスメントの禁止社会的少数者(マイノリティの権利尊重)サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等において、民族的・文化的少数者、性的少数者(LGBT等)、移住労働者といった社会的少数者(マイノリティ)の人々の権利を、他の 人々と同様に尊重し、それぞれの特性に応じたプライバシー保護にも配慮しつつ、これらの 人々が平等な経済的・社会的権利を享受できるような支援に配慮すべきである。雇用及び職業における差別の禁止
東京オリンピックに関わる企業だけの問題ではない
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松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
生理って「女性」特有のもの? 友人から返ってきた答えは
ハフィントンポストで、女性が自身のカラダについてオープンに話す「Ladies Be Open」という企画が行われていますが、興味深く考えさせられる記事ばかりです。
生理に関する女性の悩みや、仕事への影響をつづった記事が多いのが特徴です。
ところで、この企画は、女性達を意味する英単語「Ladies」が使われています。しかしながら、「生理」は果たして「女性」特有のものなのでしょうか?体が女性として生まれたからといって、好きになる性や心の性が「女性」とも限りません。たとえば自身のことを「男性」だと思っているのに、生理と向き合う人もいるはずです。
「生理」を切り口に、体の性について考えてみたいと思い、私の友人の「やすとさん」と「まつりさん」に話を聞いてみました。
24歳のやすとさんは、身体的には女性として生まれ、自身のことを男性だと自認しているFtM(Female to Male)と呼ばれる「トランスジェンダー」です。現在は手術によって胸を切除していますが、子宮は摘出していないとのこと。
まつりさんは体も心の性も女性で、「パンセクシュアル」というセクシュアリティの24歳。パンセクシュアルとは日本語では全性愛と言ったりしますが、好きになる性に性別を問わないというセクシュアリティです。
2人とも体の機能として「生理」を経験していますが、自分のことを女性と認識しているのか男性と認識しているのかで、この身体的現象への捉え方が異なります。そのあたりを重点にインタビューしてみました。
(やすとさん)
■いつ生理についての情報を得ましたか?
やすとさんは小学5年生の時、林間学校に行く前の男女別の研修で生理について知ったそうです。
「それより前に知ってたのかもしれないけど、覚えていません。初めての生理はその年の冬あたり。急にお腹が痛くなって下痢だと思ってたらパジャマに茶色っぽいのがついていて、『もしかして』と思って気づきました。母親に赤飯炊かれたのですが、弟はその意味がわからないので『七五三なの?』と聞かれた記憶があります(笑)」
当時はまだ自分のことを男性と自認していたわけではなく、「生理」という現象と、「妊娠するための機能」という女性の身体的特徴が頭の中でつながっていなかったため、嫌悪感はなかったそうです。
一方のまつりさん。小学校3年の時に学校の授業で生理について教わったそうです。
「(その後)小学校5年生のあたりになると、クラスで誰が生理がきたかとかが噂になることが多く、みんな隠したがっていました」
同じ頃、まつりさんにも、はじめての生理が来ました。生理のことは授業で習っていたうえ、すでにクラスの友達に生理が来ている生徒がいたため、驚きはなかったそう。
「ただ、なぜかわからないけど、お父さんには言いたくなかったので、お母さんに『お父さんには言わないで』と伝えた記憶があります」
■最初にやすとさんに聞きます。体は女性として生まれましたが、ご自身のことをいつ「男性」と認識し始めましたか?
「初めて自分のことを男性だと思ったのは大学2年生のとき。それまで中学校や高校時代は活発に運動をしていたこともあり、自身のことを『ボーイッシュな女性』だと思っていました。中学から女性と付き合ったこともあり、『レズビアンなのかもしれない』と思った時期もありました」。
そんな中、自分が「男性」なのかもしれないと思ったきっかけは、長く続けていた部活を引退した時だそうです。
「『女子っぽくしたくない』って思い始めたんです。その当時にレズビアンの先輩と知り合いました。この人は女性としての自身に違和感を持っていませんでした。それがわかったとき『あ、自分は違うんだ』と初めて気づきました。ただ、だからといってすぐ男性になりたいと思ったわけでもないんです」
■やすとさんは、トランスジェンダーの男性として生きていて、生理にまつわることで困ることはありますか?
「生理の期間中は1日何回もナプキンを変えるんですが、学生時代ボーイッシュなキャラで通っていたので、なんとなくナプキンを持ち歩けなかったです」。理由は「ポーチを持ってトイレに行くこと=生理なんだ、と思われるのが嫌だったから」
現在、周囲からは「男性」と認識されて生活しているやすとさん。女性の体で生まれたことはあまりオープンにしておらず、だからこその困りごとがあるそうです。
「精神面では、生理がくることで『女性』としての機能を実感してしまうことに対する嫌悪感があります。あと、見た目からは男性として認識されることがほとんどなので、生理用品や鎮痛剤を買いに行きづらかったり。また、生まれは(身体的には)女性であることをカミングアウトしていないので、突然生理が来てしまったときは、女性の友人や同僚に『生理用品、持っていない?』と聞けないんです」
「男性トイレの個室にはナプキンを捨てるところがないことが困ります。パンツもトランクスだとすかすかだからナプキンが落ちてしまったり、かといってボクサーパンツだと男性の身体を想定しているため、パンツの縫い目の部分がフィットしていないから違和感あります」
(まつりさん)
■今度は、まつりさんに聞きます。まつりさんは好きになる人の性が「女性」や「男性」であることが関係ありませんが、異性には生理について話しづらいですか?
「男女で付き合っているカップルとかは、彼女も彼氏に生理のこと話しづらい人多いんじゃないかなと思う」。体の性が「女性」である人と付き合っている時は、同じ身体的特徴を共有できるため、「精神的に楽」だそうですが、相手が男性だとどうしても話しづらくなってしまうそうです。
「この前、男友達と遊んでたときに生理が来てしまって、コンビニ行って生理用品を買ったけど、買ってるところは絶対見られないようにしました」
■企業の生理休暇についてどう思いますか?
やすとさんは現在、職場でのカミングアウトを人事の担当者にしかしていません。そのため「生理休暇を申請する時に上司を通さないといけないのかなと思うと、セクシュアリティについて上司が理解のない人だったら制度は使えないのかなと思う」。
まつりさんは、つい先日の生理が特に辛かったそうで、生理休暇の必要性を感じたばかりでした。
「その時はベストな状態が横になることで、発することができる言葉は、ただ「痛い」だけ。寝落ちするしかどうにかする方法がなかったから、この状態で仕事に行っても自分は使い物にならないなと思うと生理休暇もアリなのかなと思いました」
■社会に求めることは何ですか?
最後に2人が「生理」をはじめとする「体」や「性」について社会に求めることを聞いてみました。
まつりさんは「ナプキンがポケットティッシュくらいの感覚になれば良いのに」と話します。
「からだの構造として生理について学びたいです。女性だけのものと語られがちだけど、家族とかで絶対関わってくるからみんな知っておくべき。学校の先生とか周囲の大人が『恥ずかしいもの』という認識を植え付けてしまっているように感じます。もっとまわりがサラっと話せる感じになれば良いのに」
「生理が男性には見せるべきではない女性らしさ、しかも汚いとまでは言わなくても、『隠すべきもの』みたいなネガティブな意味づけがされている気がします」
やすとさんは「小学校の頃、男女に別れて生理について学ぶこと自体考え直してみてもいいのかなと思います。男女で分けられるから、”お互い話してはいけないこと”みたいなタブー感が出てしまうような気もしますね」
「海外の病院の問診では男性ですか、女性ですか、ではなく「あなたは子宮を有してますか?」という聞き方をされたりします」とやすとさんが日本との違いを挙げたところ、まつりさんがこんなことを言ってくれました。
「もっとフラットにからだのことを話せる社会になると良いなと思います。もっといくと、その身体的特徴を女性だから男性だからではなく、それぞれが持っている多様な特徴で把握できれば良いなと思う」
「うちの地元にLGBTはいない」なんて言わせない。LGBT差別解消を求める「レインボー国会」が開催
3月9日に衆議院の議員会館で、性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会「レインボー国会」が開催されました。
平日の昼間にもかかわらず300人ほどが集まり、議員会館で一番大きい会議室がほとんど埋まっていました。
(国会議事堂前でレインボーフラッグを掲げて写真を撮る"性的指向や性自認に関する公正と平等を求める院内集会"実行委員会のメンバーら)
オリンピック憲章には2014年から「性的指向による差別禁止」を明記しており、オリンピックの開催国はこれに準ずる必要があります。しかし、日本はLGBTを保護・承認する法律がまだありません。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまであと約3年。オリンピックのためではなく、今苦しんでいる人や不当な扱いを受けている人が平等な権利を得るために法律が必要ですが、少なくとも2020年を目安に、一歩でも前進していく必要があります。
SOGIハラ=性的指向や性自認を理由とするハラスメント
レインボー国会では「SOGIハラ」という言葉がキーワードとして取り上げられていました。
SOGI(ソジ)とは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字からとった言葉です。
LGBTと何が違うかというと、そもそもLGBTはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどの人々のことを指す総称として使われていますが、SOGIは全ての人が持っている「性的指向」や「性自認」のことを指しています。
(SOGIハラについて説明する実行委員会のメンバーら)
異性愛でも、同性愛や両性愛でも、何らかの性的指向を持っていて(そもそも好きになる性を持たない無性愛も含む)、誰もが自分自身のことを男性だったり、女性だったり、両方だったり、どちらでもなかったりと、何かしらの性別を自認しています。
そこで、SOGIという言葉を用いることにより「どんなSOGI=性的指向や性自認を持っていても、すべての人が平等であるべきだ」と言うことができます。
例えば、ストレートとも呼ばれるような、自分の心と体の性別が一致していて異性愛者の人は、自分の望む性別のトイレの使用を禁止されることもなければ、自分が好きになる性別をオープンにした途端周りから笑いの対象にされることもありません。しかし、それ以外の性的指向、性自認を持っている人は、たったそれだけで笑われたり、不当な扱いを受けたり、差別の対象とされてしまうのです。
つまり、「LGBTという特別な人たちが差別を受けないようにしましょう。」ではなく、「誰もが持っているSOGI(=性的指向や性自認)にかかわらず、全ての人が平等に扱われるようにしましょう。」という意味でSOGIという言葉が使われるようになりました。
長くなってしましたが、SOGIハラとは、SOGI(=性的指向や性自認)を理由とするハラスメントのことで、学校でのいじめや職場で不当な扱いを受けることなどを指す言葉として使われています。
13名の国会議員からのスピーチ
レインボー国会では、国際人権NGO「Human Rights Watch」の土井香苗さんとTOKYO RAINBOW PRIDE共同代表でトランスジェンダーの杉山文野さん進行のもと国会議員、LGBTの当事者、各界著名人、法学者の方々からお話がありました。
BuzzFeedの記事で当事者のスピーチの様子が取り上げられていますので、まずはこちらから読んでみてください。
続いて13名の国会議員の方々が会場を訪れ、性的指向や性自認に関する法整備についての考えを述べました。発言そのままではありませんが一部抜粋して紹介します。(議員の方々は到着した順番にお話をしていました。)
(レインボー国会に参加した国会議員の方々)
「みなさんこんにちは、元気ですか?」と軽快な口調で話し始めた馳浩議員。LGBTの課題に取り組むことになったきっかけが2つあるそうで、1つは16年前の性同一性障害特例法の立法のとき。もう1つはオリンピックパラリンピック招致の本部長を務めた際、LGBTの課題が大きな問題であることに気づいた時がきっかけだそうです。
「法律を作るのか、理解を広げるのか、住んでいる自治体や働いている職場、通っている学校で何とかならないか、それぞれの段階での課題が何なのかを考えていきたい。」
小宮山議員の地元、埼玉県川越市の隣の入間市で、性同一性障害の当事者として市議会議員に立候補している人がいてその方と深く関わりがあるそうです。
「日頃障害者に関する政策にも取り組んでいますが、よく「障害があるのが問題ではなく、障害は社会の側がつくっているんだ」と言っています。こういったことはLGBTにも言えることだと思います。ともに勉強できればと思っています。」
性的指向及び性自認における差別を解消する法案の筆頭提出者である西村議員。「民間や企業は人権の啓発は進んでいるが、この国会で進んでいないことが申し訳ない」と話します。
「ぜひみなさんで良い議論をしていただいて、みなさん自身で国会を動かしていってほしい。世界に恥じない立法をしていきたい。ともに頑張ってまいりましょう。」
アメリカで同時多発テロが起きた際、同性カップルの苦労を目の当たりにしたそう。「日本でそのサポートって十分だったんだろうかと考えるきっかけだった。」と話しました。
「先輩議員にLGBTについての話をすると、「うちの地元にはいないよ」と言われることもありました。絶対にいないことはありません。声をあげにくい情勢であることを承知の上で、私たちも頑張っていきたいです。」
「中のシャツをレインボーにしてきました。」と意気込みを語る池内さおり議員。
「誰一人として同じ人はいないからこそ世界は鮮やかなんです。その中で私も当事者だし、みんなが多様性の当事者です。みんなが自分らしく生きることを保証される、呼吸のしやすい社会にしていきたいと思っています。」
性の問題は自分が普通だと思う人が多いが「そもそも普通とは何だろうか」と話す初鹿議員。
「なんとなくこの国が向かっているのが窮屈な方向な気がしているのは、私だけではないはずだと思います。」「SOGIハラという言葉がありましたが、名前が決まって広まっていくことで、これはどういう意味なんだろう、苦しんでいる当事者がいるんだということを知るきっかけになります。流行語大賞になるくらい、SOGIハラを広めていただきたいと思います。」
「いわれなき差別や偏見、社会的な不条理のない社会をつくっていくことは当然です。オリンピックパラリンピックをひとつの目安にしながら。LGBTについて多くの人に正しく理解をしていただき、共感をしていただく必要があると思います。」
アメリカやヨーロッパに住んでいた時から、クラスメイトや職場の同僚にセクシュアリティをオープンにしている当事者の方が多くいたそう。
「日本に戻ってきて、何で同じ割合のLGBTが周りにいないんだろうと疑問でした。その理由はカミングアウトできない社会だからなんだろうなということにも気がつきました。自分らしく生きていた同僚やクラスメートのことを思うと、同じことが日本でも起きるように頑張っていかなければと思います。」
「LGBTの問題は議員になった直後から取り組んできましたが、なかなか国会の中で具体的な動きにならなかった。」と話す細野議員。
「個人的には法律を作っていかなければならないと思っています。まずは差別解消法を作っていきたい。2020年が間もなくきます。同性婚も社会的に認めていくことが本来の姿だと思いますが、国会はまだ随分手前にいます。一歩でも二歩でも前進できるようにしていきたい。」
もともと看護師だった頃から「人が病んだり、苦しんでいるという声が自分自身の学びにもなった。」と話す石田議員。
「改めてまだ知らなかったことが多くあるんだなと思い、社会だけでなく自分自身のためにも意味があると思っています。自由民主党の中でLGBTに関する特命委員会の委員をつとめていますが、法律だけではく理解や細かい制度の見直しも必要です。生きづらさを取り除くための制度づくりと理解を同時に進めていきたい。」
過去にアメリカのシアトルに滞在していた際、パレードを見たことがLGBTについて知ったきっかけだったそう。
「人権課題だと痛感しました。なんとか突破口をつくっていきたいと思っています。」
「昨日はWomen’s Marchをやりました、今日はレインボー国会と熱気に感動しています。」と話す福島議員。
「カミングアウトしてもしんどい、しなくてもしんどい、社会を変えるためにはLGBT差別解消法案が必要です。」
「セクシュアルマイノリティが「マイノリティ」と言われていることに抵抗感がある。なぜならこれは、全ての人が幸せに生きていくための問題だから。」と話す辻元議員。
「アメリカなど、世界ではこれに逆行する動きも出てきていますが、国会ではこの課題に関して仲間も徐々に増えてきています。全ての人の問題として、ともに頑張っていきましょう。」
ダイバーシティは企業の活力の源泉
国会議員の方々に続き、各界から著名人の方も会場に足を運んでいました。
差別をなくし理解を進めていくために"SOGIハラスメント"を広めてていきたい
最後にLGBT法連合会事務局長の神谷悠一さんが閉会の挨拶を述べました。
「今年の1月から、国家公務員の性的指向や性自認に基づくハラスメントを防止対策が実施され、ハラスメントの排除や、研修などが義務化されました。国会では国家公務員担当大臣がSOGIハラ防止をしっかりやっていこうという話もされていました。しかし、民間企業や地方公共団体ではそういったものはまだ義務化されていないため、教育現場でのいじめ、民間企業でのハラスメントは無くなっていない。この防止規定がなければ全国の学校や職場などでSOGIに関する啓発・研修すら実施されません。私たちは差別をなくし理解を進めていくために、SOGIハラスメントを広めていきたいです。」
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
「女の皮をかぶった男」のような女性しか活躍できないのか
「女の子にもっと優しくしなさい」の違和感
成功には酒と女と、
チームで何かに取り組む際に女性がいないことに違和感を覚える
男性だと自認している人こそ
自分のスタイルを、自信を持って表現できる人を増やす
「女の子の中にはスーパーヒーローが好きな子もいれば、プリンセスが好きな子もいる。男の子の中にもスーパーヒーローが好きな子もいれば、プリンセスが好きな子もいる。」
「「女の子らしく走ってください」という問いに対して、参加者は内股になり、手をばたつかせながら走るフリをする。そんな中、子どもたちに同じ質問をすると、その子たちは全力で走るフリをした。「女の子らしく走るとはどういうことか」という問いを投げかけると「できるだけ早く走ること」と答えた。」
すごくフェミニンな格好の女性の友人が「女らしくしたいんじゃなくて、これが私のスタイルなの。これが好きなの。」って自信持って言っていて素敵だなと思った。きっとこういう人は自分と違うスタイルの人を見ても「素敵だね」と言えるんだと思うhttps://t.co/NYdSHSzVyv
— 松岡宗嗣 (@ssimtok) 2017年2月24日
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
「犯罪を犯しても奪われない結婚の権利を、同性愛者はそもそも奪われている」台湾の婚姻平等化から日本が学ぶべきこと
アジアで初めて、台湾で同性婚が認められるかもしれないと昨年末あたりから話題になっています。
1895年から1945年までの50年間、日本の植民地とされた台湾では日本の法律が適用されていました。現在でも日本と密接な関係にある台湾でこうした動きが起こっていることは日本にとっても意味があることだと思います。
そんな台湾で婚姻の平等化の運動を進めている台湾同性伴侶権益推動聯盟の理事長で、弁護士の許秀雯さんが来日し、2月25日に明治大学で開催されたワークショップ「台湾における婚姻平等化に向けた法改正の動きについて」で講演をされていたので、その内容を一部ここにまとめたいと思います。
民法を改正し婚姻平等化を実現する
まずはじめに、今回のワークショップを企画した明治大学法学部教授の鈴木賢先生から、今回の趣旨と法案についての説明がありました。
鈴木先生によると、台湾では既存の異性婚に、同性婚を付け加える形で民法を改正することで、婚姻の平等化を実現しようとしているとのこと。例えば第972条は今まで「婚約は、男女当事者が自ら執り行わなければならない」と記載されていましたが、そこに「同性の婚約は、双方当事者が自ら執り行わなければならない」という記載を追加する条文になっています。また、性別だけでなく年齢の平等化も同時に実施しようとしていて、今までは結婚可能な年齢を男性=18歳、女性=16歳としていましたが、性別に関係なく18歳に統一する条文に変更されています。
そんな台湾で婚姻の平等化の運動を中心となって進めている台湾同性伴侶権益推動聯盟の理事長で、弁護士の許秀雯さんが、活動の経緯や今後の展望について話しました。
台湾同性伴侶権益推動聯盟理事長の許秀雯さん
性別で結婚できるかどうかを決めることはおかしい
許(キョ)さんは一組の女性同士のカップルの写真を私たちに見せ、一つの問いを投げかけました。
「この二人は法的に結婚している夫婦です。どちらが夫で、どちらが妻だと思いますか?」
実は、写真にうつる女性は二人ともMtF(Male to Female)で、もともと男性として生まれて現在は女性として生活しています。
あれ?と思う方もいるかもしれません。どちらも”女性”ということは、まだ同性の婚姻が可能ではない台湾でなぜ結婚ができているのでしょうか。
「なぜ二人は夫婦なのかというと、一方が性別適合手術をして戸籍の性を変更したあと、二人は”男女"として結婚したからです。」
結婚したあと、戸籍の性は男性のままだったもう一方のパートナーも女性に変更しようとしたそうですが、ここでひとつの問題が発生しました。
"二人とも戸籍の性別を変えてしまったら、既に認められている男女としての婚姻ではなく、同性のカップルとなるため、この婚姻は無効となるのか、それとも戸籍の性別を変えること自体が無効になるのか"
ある意見では「結婚した時点で二人とも手術をしていたので、戸籍上は異性になったとしても実質的な性別は同性なので、これは同性婚にあたり無効なのではないか」というものがあったそうです。
それに対して許(キョ)さんは「病気など何らかの理由で生殖器を切除した人も結婚した場合、それは同性婚になるのかと考えると、性別は生殖器の有無で決まるものではありません。そもそも実質的な性別とは何でしょうか。何をもって婚姻における性別を判断するのかというと、それは「法的な戸籍に登録された性別」です。今回の件は、婚姻した時は戸籍上は異性だったため婚姻は無効ではありません。」と話しました。
許(キョ)さんがなぜこのケースを紹介したかというと、性別によって結婚できるかどうかを決めることはおかしいのではないかということを伝えるため。
「このカップルは付き合い始めた時はお互い男性でした。しかし、結婚する際は片方が戸籍を変えたため、そのタイミングではたまたま男女だったので結婚ができ、そのあと二人とも女性になりました。なぜその一時だけ婚姻が可能なのでしょうか。性別で結婚できるかどうかを決めることはおかしい。」
同性婚ではなく、婚姻の平等
ニュースでは「台湾で同性婚が」と、あくまで同性婚という言葉をつかっていましたが正確には少し違います。許(キョ)さんらは「婚姻平権」つまり婚姻の権利平等化という言い方をしています。
「同性婚姻という言葉を使うと、婚姻する権利を求めるという動きになりますが、同性以外の性別を排除するかたちになってしまいます。同性の婚姻ではなく、婚姻の平等に力点を置きました。」
さらに許(キョ)さんは、「異性愛者であれば犯罪をおかしても結婚の権利は奪われないけれども、同性愛者は何も犯罪を犯していなくてもそもそも権利を奪われていることになる。」と話しました。
「国家が婚姻の平等を認めないことは同性愛者等を排除することに繋がり、それに連なる様々な権利が侵害されることになります。反対に婚姻を認めることはセクシュアルマイノリティを市民としてちゃんと承認することに繋がります。」
台湾における婚姻平等化の経緯
許(キョ)さんは今日までの婚姻平等化の動きを振り返って「30年間でいろいろ変化があった。」と話しました。
- 最初に具体的な行動が起きたのは1986年。ゲイカップルが立法院に対して婚姻制度の創設を請願したのがはじまり。その当時の立法院の回答は「同性愛は公序良俗に反するので認められない」だった。
- 1996年に作家・許佑生の同性結婚式がメディアに取り上げられたのをきっかけに声があがりはじめた。
- その後何回か婚姻の平等に関する法案が提出されたが、反対派の抗議や、それに対する当事者団体の準備不足で廃案になった。
- 2016年は今までと政治状況が全く異なり、民進党が与党になりそれまで反対していた国民党が野党になっていたため法案が提出でき積極的に議論された。
「法律上の婚姻は様々な権利とリンクしてくる。」と許(キョ)さんは話します。
- 例えば医療の場における同意権、夫婦の財産、養子縁組ができるかどうか、外国籍の人に在留資格を与えるかなど、498の法律で法律上の配偶者にのみ権利を与えられている。
- 法的な効果の点で、法律には異性愛中心の言葉がちりばめられている。そのため2013年に作った改正案では、例えば男女=当事者、夫妻=配偶者、父母=両親など、民法の中にある異性愛を前提としている言葉を中立的な言葉にかえるという意図があった。
- これが「子どもがお父さんお母さんと呼べなくなる」「両親1両親2と呼ばなきゃいけないのか」と、反対派から強い抵抗を招いた。しかし、例えば配偶者と法律に書いてあったとしても一般の人は配偶者とは呼ばないように、法律の言葉が普段の言葉を規制するということはない。
反対派との攻防
「反対派の中心にいるのはキリスト教関係の団体です。キリスト教徒の割合は台湾の人口のうち5%たらずですが、その声は大きい。」と許(キョ)さんは話します。
もちろんキリスト教徒のなかにも婚姻の平等を支持する人や、なかには同光長老教会など同性愛者のための専門の教会もあるそう。しかし、反対派からは「同性婚を認めると、同性愛を奨励することになってしまう。」という声や「伝統的な家族の価値を損なう。」という声があがっています。
伝統的とは何を指しているのか。
「日本に侵略される前から台湾は諸外国から侵略を受けています。もともと台湾にいる人もいますし、中国から来た人もいたり、そもそも台湾人は多様なのです。」
また、「少なくともこうした反対派の論理を支持する人たちがいることは、まだまだ理解が不足していることを示している。」と許(キョ)さんは話します。
しかし、こうした許(キョ)さんをはじめとする婚姻平等化の動きによって、世論も賛成派が確実増えてきています。そこで最近反対派は戦略を変えてきたそう。民法の改正ではなく、特別法として同性パートナーシップ法を作るなら良いという意見です。
実は、すでに台湾では11の都市で同性パートナーシップ制度が実施されていて、実際に1674組以上のカップルがこの制度を利用しているそうです。日本でもいくつかの地方自治体で同性パートナーシップ制度を実施していますが、日本と同様、台湾のパートナーシップ制度にも法的効果はありません。
しかし、許(キョ)さんは「最大の効果は「可視化」させたこと。せっかくできたのに法的効果がない、このコントラストをアピールすることで逆に民法改正の必要性を認知してもらうステップになった。」と話します。
ただ、許(キョ)さんは、同性パートナーシップ法を作ることは、セクシュアルマイノリティを隔離することになるため受け入れられないというスタンスを取っています。
「彼らが考えているのは、あくまで同性愛者は自分たちとは”違う"存在だということ。その人たちを隔離するなら良いという戦略に変わってきています。」
「異性愛と同性愛の唯一の違いは自然に受精し、出産することができないという点だけです。しかし、台湾の法律では子どもを産むことは婚姻の要件ではありません。子どもを持たない夫婦もいますが婚姻は可能です。そのため、自然に受精して出産できないという一点だけを過大評価して、それを理由に同性に結婚を認めないことは適当ではないと考えています。」
「多くの国で同性間の婚姻を認める以前に特別法でパートナーシップ法を実施いることを知っていますが、これは白人と有色人種を分けていることと同じで、隔離であり差別だと考えています。」
現在の審議と問題点
現在の立法院の審議では、いくつかの草案が提出され、そのうち2つの案に整理して審議にかけられているそうです。
しかし、「この2つの案にはいくつかの欠陥がある」と許(キョ)さんは説明します。
三つめの嫡出推定の問題点について許(キョ)さんによると
「第三者から精子の提供を受けて出産した場合、異性愛であれば結婚が可能なので、遺伝的な繋がりがなくても夫が父となることができます。しかし、レズビアンのカップルが第三者からの精子の提供を受けて出産した場合、産んだ親は母親になれますが、パートナーの人は親にはなれません。」
いま、台湾から学ぶべきこと
現在も台湾の各地で反対派、賛成派両方の大規模なデモが起きています。それを見て司法院大法官が3月に憲法法廷(口頭弁論)を開き、憲法解釈を行うことを決定しました。婚姻の平等化を進めたい現政府にとっては「裁判所が言ったからしょうがないよね」と反対派のプレッシャーを避ける機能をはたすことになるかもしれませんし、逆に反対派にとっては時間稼ぎができることになります。
許(キョ)さんは最後に「憲法解釈がどうなるかはわかりませんが、わたしたちの活動は続いていきます。」と、優しい表情と共に力強い言葉で話しました。
台湾では2004年に「性別平等教育法」、2008年に「性別就業平等法」を採択、改正し、それぞれ性的指向による差別の禁止を明文化しています。また、毎年開催されている台灣同志遊行(台湾LGBTプライド)はアジア最大級のパレードと呼ばれています。
日本ではLGBTの権利を保障したり、差別の禁止を明文化するような法律はまだありません。現段階で5つの自治体で同性パートナーシップ制度を導入していますが、まだまだ少数です。日本も台湾から学ぶべきことが多くあります。
台湾の婚姻の平等化に関する今後の動きに注目です。
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
「ホモネタって笑っていいの?」これからのメディアとLGBTの関わり方
「ゲイ引退」というタイトルがスポーツ誌の一面見出しにつけられた件がまだ記憶に新しい。友人の菊本寛さんがハフィントンポストに寄稿した「オネエが笑われることの何が不快か」というブログで指摘されているように、まだまだメディアで消費されている笑いが一般社会で再生産されている現状があります。
私たちが無意識のうちにメディアから受けている影響は大きく、しかもそれを反射的に学びとり、悪気なく実践してしまっていたりします。また、メディアと一括りにするには難しい程、私たちは様々なチャンネルから情報を得ることができるようになってきました。どうすればメディアや受け取る側の無意識的な差別や偏見をなくしていけるのか。今回「メディアとLGBT “ホモネタ"って笑っていいの?」というイベントに参加してきたので、その中で特に印象に残ったことを紹介したいと思います。
(シンポジウム「メディアとLGBT "ホモネタ"って笑っていいの?イベントサイトより))
メディアのLGBTに関する倫理規定
主催は東京弁護士会「性の平等に関する委員会」
貴重講演に続き、パネリストとして評論家・シノドス編集長の荻上チキさん、タレント・文筆家の牧村朝子さん、BuzzFeedJapan記者の渡辺一樹さんが登壇されました。
貴重講演では、各メディアの倫理規定等についてのお話がありました。
- 日本放送連盟の放送基準では、11章「性表現」に「性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する。」と書かれています。事例として記載されていたのは、番組中の「ホモの見分け方」コーナーに講義があり中止された。という事例や、深夜の情報番組でMtF(Male to Female)のトランスジェンダーの方の日常生活に密着し、女性トイレを使用するシーンを放送で使えるかという問い合わせに対して、性同一性障害の問題をまじめに取り上げていると判断し使用可と回答した。などの事例が取り上げられていました。
- テレビ東京の報道倫理では、3.人権の尊重のところに「性別、性的指向などによって差別しない」と明記されていたり、また、<全体の文脈での点検>というところには以下の記載がありました。
「ある言葉によって傷つけられたと感じる人がいる以上、いわゆる「差別語」の使用は避けなければならい。またいわゆる「差別語」を使わなくても、差別はあり得る。従って、全体の文脈の中で差別していないか点検すべきである。映像表現にも同様の配慮が必要である。」
- 日本新聞協会の新聞倫理綱領や日本雑誌協会の雑誌編集倫理綱領でも人権の尊重という記載はありますが、特にLGBTに対して触れていませんでした。しかし、共同通信社の記者用語集では2008年からホモセクシュアルをホモ、レズビアンをレズと省略しないという記載が加わっていました。
「基準がある所とない所があることに加え、一定の基準があるにもかかわらず差別や偏見を助長する番組や記事が制作されてしまっている現状があります。」
笑えるオネエか、泣ける性同一性障害か
パネルディスカッションでは評論家、タレント、記者それぞれの立場からメディアとLGBTについて議論が交わされました。
タレント・文筆家の牧村さんは冒頭に「笑えるオネエ、泣ける性同一性障害」というタイトルでメディアとLGBTに関する歴史や自身の経験を話しました。
牧村さんによると、古くから伝統芸能とされるものは異性装をしていたり、今でいうLGBTは存在していたと話します。そこから「めずらしい人」「笑いの対象」そして最近では「配慮する対象」となってきたという印象を持っているそうです。実際に自身がアイドルをされていた際には、番組のひな壇で男性の好きなタイプを聞かれたり、オーディションでカミングアウトした所「日本初のレズビアンタレント」と表現されたりしたそう。「レズビアンタレントといわれると、パフォーマンスみたいでうーんって思った。」と牧村さんは話します。「男の筋肉きもーい」と言ってくださいということを言われたりもしたこともあるそうです。
BuzzFeed記者の渡辺さんは、LGBTという言葉のGoogle検索数に関して「2012年を1とすると2017年で約20倍になりました。ただ、それでもゲイやレズビアンという言葉に比べると10分の1以下の検索数で、今後もっとニュースとして報じていかなければと思っています。実際に記事を書いている者としての感覚では、LGBTと書いただけでそんなにドカンと読まれるかというとそうではなく、日常のニュースとして消費されていると感じています。」と話しました。さらに、「娯楽やエンタメでは”ちょっと違う何か"を楽しむというような世界観の対象としてLGBTが描かれていることが多く、逆に真面目な報道の記事では"なにか困っているから助ける、支援する"という切り口で書かれることが多いです。「身近にいて、なにも変わらないんだよ」というような内容のものはまだまだ少ない印象を持っています。」とのこと。
それに対して評論家・シノドス編集長の荻上チキさんは、「日本では概ねLGBTを福祉的な描写で描くことが多い」と話します。「まだ社会的に認知されていないので、いかに不平等な状況にあるのかを示すことは大事です。また、実際にセクシュアルマイノリティはいじめを受けやすく、長期化もしやすいというデータがあります。一般的にいじめのピークは小学校高学年なのに対して、セクシュアルマイノリティは中学校です。理由としては多くの方が思春期に性を意識しはじめるから。それによって不登校など進学や職歴に影響を与えてしまっている現状があり、それなのに教科書には「思春期には自然と異性に興味がわく」と書いてあったりします。」と話しました。
日常の態度の手本となる"アティチュードモデル"
メディアにおけるLGBTのロールモデルがいない現状があると思いますが、という質問に対して、牧村さんは「自分をレズビアンのロールモデルだとは思っていません。でもロールモデルが必要な部分もある。ジョディフォスターさんみたいな人がいるといいなと思ったりします。」と話しました。
荻上さんは「役割であるロールモデルではなく、日常の態度やコミュニケーションの手本となるアティチュードモデルが必要ではないか。」と話すと同時に「日常の風景を見えるようにしていくことが大事。例えば当事者がテレビ番組見ているときに「いまの表現は嫌だったなー」とTwitterでつぶやくのは意味があるかもしれない。」と語りました。
セクシュアリティは"タグ"になっていく
LGBTというカテゴリーに関して、荻上さんは「LGBTに限らずカテゴリーをつけることによって見えるようにするということはよくありますが、そのカテゴリーは時代によって変わっていくため、使い方には注意が必要。」と話します。「今はLGBTという言葉が求められていますが、場合によっては一括りにすることで誤った配慮を生むこともある。」「複合的な差別や困難につながることも多いため、LGBTという言葉を使うことでほかの問題が削り落とされるように使われてしまったり、アピールとして使われている反面、踏み絵的に使われているようになっている部分もある。」と話しました。
本来「LGBTかLGBTではないか」ではなく、一人一人が多様な性のありかたのひとつであると思いますが、セクシュアリティが真の意味で”普通"になるためには、まずメディアはどうすればよいかという質問に対して、渡辺さんは「まずは、個人の自由や権利を尊重するための報道をしていくことだと思う。その上で、こんなすごい人、面白い人がいる。その人がたまたまゲイやトランスジェンダーだった。というような書き方ができたら、それを読んだ子どもたちがセクシュアリティを原因に悩まなくて済むようになるのかなと思います。」と話しました。
荻上さんは「LGBTというカテゴリーはある側面では、心と身体の性が一致している異性愛ではない人ということで団結しています。しかし、当事者の語りも世代によって変わります。今はまだ大きなアイデンティティになっているかもしれないけれど、例えばレズビアンであること以外にその人にはいろんな属性がある。そのため、セクシュアリティも最終的には「タグ」になっていくのではないかと思います。
『妄想ニホン料理』という日本オリジナルの料理の名前を海外の料理人に伝え、どういう料理であるかは説明せずに、その名前と簡単なヒントから妄想で料理をしてもらうという番組があります。ある回で中東の方二人が日本料理を作っているのを見て、私はおもわず泣いてしまいました。その当時はフランスでテロが起きていた時で、ニュースでもその件が多く報道されていました。そんな中この二人の料理人は実は一人がクリスチャンで、もう一人はムスリムだったんです。でも、全然そこテーマじゃなくて、あくまでこのひとたちにとってそれはタグなんです。」と話しました。
「ある種の中心主義を問い直し解体していく、霧散していってネットワーク化する。それぞれのタグの中で生きていき、時折連帯することが大事だと思います。」
セクシュアリティが「言っても言わなくてもどちらでも良い」ものになるために
メディアといっても様々なので一概に批判はできないし、例えばオネエと呼ばれ活躍されている人たちをすべて批判するというのは違うと思います。それでもメディアで語られるような笑いをそのまま一般社会で再生産してしまうのではなく、受け取る側もメディアとの付き合い方を考える必要があります。身近な関係の中にあたり前のようにLGBTと呼ばれる人がいたり、自分自身のセクシュアリティも多様な性の一つなんだと自覚する人が増えると、あくまでセクシュアリティは自分を構成する要素の一つであり、「タグ」であるという認識が広がるのかなと思いました。
日本におけるLGBTの人口は左利きやAB型の数と同じくらいと言われていますが、左利きやAB型であることと同じくらいセクシュアリティが「言っても言わなくてもどちらでも良い」ものになると良いなと思います。
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program