台湾で同性婚、大阪でゲイカップルが里親認定、保毛尾田炎上など。2017年のLGBTニュースをまとめてみた

こんにちは、松岡宗嗣です。

2017年もLGBTに関する様々なニュースがありましたね。感覚としても年々LGBTに関する報道は増えているように感じています。

今年も、個人的に印象に残ったニュースを振り返っていこうと思います。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171231145816j:plain

 

1月13日:声優の三ツ矢雄二氏がゲイをカミングアウト

アニメ『タッチ』の上杉達也役などで知られる声優の三ツ矢雄二(62)が、12日深夜放送のテレビ東京系『じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告~』(毎週木曜 深0:12)に出演。これまでたびたび“グレーゾーン”として明言を避けてきた自身のセクシャリティーに関して「ゲイかストレートかって言われれば、ゲイ」と初めて告白した。

 

1月24日:人事院性的指向性自認に関するからかいやいじめをセクハラと明記

「ホモっぽい」「おとこおんな」とからかうような言動はセクハラ――。国家公務員の就労ルールを定める人事院は1月から、規則の運用通知を改め、「性的指向性自認」をからかったり、いじめの対象にしたりする言動をセクハラと明記した。一般職の約28万人に適用され、違反すれば懲戒などの処分対象となる。 

 

2月25日:映画「彼らが本気で編む時は」公開


2月27日:映画「ムーンライト」がアカデミー賞を受賞

自分の居場所やジェンダーを模索する主人公を3つの時代構成で描き出した。2人が生まれ育った米マイアミの黒人コミュニティを舞台に、過酷な環境の中でアイデンティティや愛の形を見出していく姿が、情感あふれる詩的な語り口と映像美でつづられていく。

 

3月9日:「レインボー国会」開催

3月9日に衆議院議員会館で、性的指向性自認に関する公正と平等を求める院内集会「レインボー国会」が開催されました。

平日の昼間にもかかわらず300人ほどが集まり、議員会館で一番大きい会議室がほとんど埋まっていました。

 

3月12日:トランスジェンダー細田智也氏が入間市議に当選

3月12日投開票の埼玉県入間市議選で、トランスジェンダーであることを明らかにして立候補した細田智也さん(25)が初当選しました。トランスジェンダーの男性として公職に選ばれたのは国内で初めての例です。 

 

3月16日:文科省、いじめ防止対策推進法の基本方針に性的少数者が追加

 

いじめ防止対策推進法に基づいて国が定める基本方針について、文部科学省は16日、新たに原発事故で避難生活をする子どもや、性的少数者(LGBT)への対応を盛り込んで改定し、全国の教育委員会などに通知した。また、学校内での情報共有不足が子どもの自殺につながる例が相次いだため、情報共有を怠れば同法に「違反し得る」と明記。学校にマニュアルなどを定めるよう求めた。

 

4月5日:大阪市で男性同性カップルが養育里親に認定

虐待などにより親元で育てられない子供の養育里親について、大阪市が男性カップルを認定したことが5日、市への取材で分かった。厚生労働省同性カップルの里親認定について「聞いたことがない」としており、全国初とみられる。 

 

5月7日:東京レインボープライド2017が開催

渋谷の街を虹色にしたのは、セクシュアル・マイノリティの祭典「東京レインボープライド」のパレード。

2012年に始まった東京レインボープライドは、今回で6回目となる。当初4500人だった参加者は10万8000人に増え、過去最高の5000人がパレードを歩いた。

 

5月24日:台湾で同性婚容認の憲法判断

台湾の司法最高機関にあたる司法院大法官会議は5月24日、「同性同士での結婚を認めない民法憲法に反する」という判断を下した。BBCテレグラフ紙などが報じた。アジア初の同性婚認可に向けて、台湾は大きな一歩を踏み出したことになる。異性間だけ結婚を認めている現行法について、大法官会議は「憲法が保障する法の下の平等や結婚の自由に反する」との見解を示した。

 

6月1日:札幌市で「パートナーシップ制度」がスタート

札幌市で1日、性的少数者(LGBT)カップルの関係を公的に認証する「パートナーシップ宣誓制度」が始まった。同様の制度を政令市が導入するのは初めて。 

 

7月6日:LGBT自治体議連発足・文京区の前田邦博議員がカミングアウト

性的指向性自認に関連する人権擁護を目的とする「LGBT自治体議員連盟」が7月6日に発足した。世話人の当事者5人が都庁で記者会見した。文京区議の前田邦博さん(51歳)は初めて、公の場で「私はゲイです」とカミングアウトした。

 

9月28日:「保毛尾田保毛男」が炎上

フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」30周年記念のスペシャル番組で石橋貴明氏扮する「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」が登場。これが物議を醸し、最終的にフジテレビの宮内正喜社長が謝罪するに至った。 

 

10月17日:最上もが氏がカミングアウト

過去にもブログでバイセクシャルであることを明かしていた最上。今回、理想の男性についてインタビューされる場面で「10歳くらいの頃から女の子のほうが好きだった」と女性も恋愛対象であることを改めて打ち明けた。

 

10月20日:北海道滝川市議のたてうち孝夫氏がカミングアウト

 

11月15日:オーストラリア・国民投票同性婚合法化を支持

オーストラリアで同性婚合法化の是非を問う国民投票が2カ月かけて実施され、15日に発表された開票結果で賛成が61%の多数を占めた。反対は38%にとどまった。

→12月7日にオーストラリア連邦議会同性婚を認める法案を可決

 

11月17日:元女子バレーの滝沢ななえ氏がカミングアウト

元女子バレーボール選手の滝沢ななえさん(30)が11月16日、バラエティ番組「衝撃のアノ人に会ってみた」(日本テレビ系)に出演し、年下の女性と交際していることを明かした。

 

11月23日:自民党・竹下総務会長「宮中晩餐会の同性パートナー出席、反対」

自民党竹下亘総務会長は23日、天皇、皇后両陛下が国賓を迎えて開く宮中晩餐(ばんさん)会をめぐり、「(国賓の)パートナーが同性だった場合、私は(晩餐会への出席には)反対だ。日本国の伝統には合わないと思う」と述べた。岐阜市内で開かれた党支部パーティーの講演で語った。

 

11月28日:厚労省性別適合手術に保険適用へ

厚生労働省は28日、心と体の性が一致しない性同一性障害GID)の人を対象にした性別適合手術について、来年度から新たに公的医療保険の適用対象とする方向で検討に入った。

 

12月6日:港区議会、同性パートナーシップ制度を求める請願が採択

12月6日、港区議会総務常任委員会同性カップル パートナーシップ制度創設のの請願が審議され、採択された。

 

12月25日:京都府長岡京市議の小原明大氏がカミングアウト

京都府長岡京市議の小原明大さん(40)が、このほど閉会した12月定例会本会議の一般質問で、LGBT(性的少数者)であるとカミングアウトした。LGBTへの差別解消に向けた対策の遅れが指摘される中、地方議員の当事者が公にする例は極めてまれだ。「いろいろな人がいて当たり前。当事者のしんどさを伝え、理解を広める、一つのきっかけになれば」と話す。

 

12月27日:同性パートナーに遺族給付金が支給されず

名古屋市中村区で2014年12月に起きた殺人事件で、長年同居した同性のパートナーを殺され、犯罪被害者遺族への給付金を申請した男性(42)に対し、支給の可否を審査した愛知県公安委員会が22日付で、「(給付対象となる)配偶者や内縁関係とは認められない」と不支給を決定したことが分かった。男性側は決定を不服として国家公安委員会に改めて審査を求める方針。

 

2018年に向けて

振り返ってみると、今年も著名人のカミングアウトや制度面での変化がいろいろありました。今回は主に国内のニュースを振り返りましたが、アメリカ・トランプ政権下のLGBTを取り巻く環境や、4月にロシアのチェチェンで100人以上の同性愛者が拘束されたというニュースなどもあり、国内外問わずポジティブな内容ばかりではありませんでした。

一進一退な部分もありつつ、確実にLGBTや性の多様性に関する認識は進んできていると感じています。2020年の東京オリンピックパラリンピックが大きなマイルストーンだとも言われていますが、2018年が今後のさらに大きな前進の一歩目となることを期待したいです。

 

2016年の振りかえりはこちら↓

soshi-matsuoka.hatenablog.com

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

 

「兄弟を装い24年間一緒に生きてきた」日本人と外国人のゲイカップルに立ちはだかる在留資格の壁

台湾人のGさんと、日本人のXさんは男性の同性カップル。24年間ともに日本で生活していたが、Gさんはオーバーステイ在留資格がない違法滞在の状態)として逮捕され、強制退去を命じられた。現在Gさんの在留資格をめぐる裁判が行われている。

12月10日の世界人権デーに合わせ、昨日、明治大学で開催されたシンポジウム「同性国際カップルの在留資格をめぐって 〜ふたりを引き裂く日本の法制度のゆくえ〜」で、原告のGさんや弁護団の方がその思いを語った。さらに、同じような境遇にある同性国際カップルが登壇し、在留資格に関する現状や困難を話した。

f:id:soshi-matsuoka:20171211011536j:plain

兄弟を装い24年間共に生きてきた

原告のGさんは、自分が同性愛者だと気づいたときから「罪悪感を抱え、誰にも打ち明けることはできなかった」と話す。

「1980年代後半、自分のセクシュアリティに悩んでいた頃、鬱で自殺未遂を繰り返していました。家族に同性愛を気づかれて『おまえは病気だ、はやく同性愛を治してこい』と言われました。」

パートナーと出会ったのは日本語関係の資格取得のため観光ビザで来日したときだった。

交際が進み、滞在期限が迫るGさん「オーバーステイになることがわかっていましたが、家族と疎遠になっていた等の理由から、パートナーと過ごすため日本に残る決断をしました。世間の目を気にしながら、顔は似ていないのに兄弟を装い24年間生きてきました。国民健康保険にも入れないので、病気になるたびにいつも不安でした。治療途中で、医師の忠告を受けず自ら強制退院した経験が何度もあります。」

2016年に職務質問を受けた際、Gさんのオーバーステイが発覚し、逮捕された。その後退去強制処分を命じられたGさんは、在留特別許可を申請するも許可されず、今年3月に退去強制処分発布処分の取り消しを国に求めて提訴した。

f:id:soshi-matsuoka:20171211011650j:plain弁護士の永野靖さん

国に戻るか、法を犯してパートナーと日本に留まるかという究極の選択

Gさんの弁護士であり、シンポジウムの運営委員の永野靖さんは「異性カップルであれば、婚姻をすれば日本人の配偶者ということで在留特別許可が得られることが多い。しかし、同性カップルは婚姻ができないため許可が得られない」と話す。

同じく弁護士の丸山由紀さんによると、現在、在留特別許可の資格の49.2%が「日本人の配偶者等」だという。「Gさんが異性カップルであれば、そもそもオーバーステイになるまえに解決できた可能性があるし、なったあとでも在留特別許可が受けられる可能性が極めて高いケースだと言えます」

永野さんは「本当に好きな人ができて、一緒に暮らして、お互いが離れがたいと思った時、Gさんは国に戻るのか、法を犯して日本に留まり続けるかという究極の選択を迫られたんです。悩んだ末に、パートナーと離れがたいと思ったGさんは日本に留まることを選択しました。いくら違法だからといって、これは非難されることなのでしょうか?私はそうは思いません」

また、「根本を変えるためには、やはり国の法律を変えなければならない」と永野さん。相手が異性であれ同性であれ、平等に婚姻ができるように、地方レベルで同性パートナーシップ制度の制定を求める、国レベルで婚姻の平等が認められるよう国会議員に求めることが必要という。

「先日、港区で同性パートナーシップ制度を求める請願が採択されました。これは一人の方がかけずりまわって請願採択までこぎつけたのです。やればできます、できるんです。ぜひ一人一人が動いて制度を作ることにご協力いただきたい」

f:id:soshi-matsuoka:20171211011812j:plain
日本とアメリカ、ドイツ、カナダなどの同性国際カップルの方々

できれば日本で一緒に暮らしていきたい

パネルセッションでは、実際に日本に住んでいる5組の同性国際カップルが登壇し、それぞれの困りごとを話した。

中島さんとバウマンさんは日本とドイツの同性国際カップル。ふたりはベルリンで出会い、交際をはじめ、2年間一緒に住んでいた。約4年前ふたりで日本に帰国。バウマンさんは学生ビザで日本語学校に行き、その後ホテルの専門学校を経てホテルで働き始めたそう。

バウマンさんは「もし仕事が見つからなかったらどうすれば良いか不安だった」と話す。

中島さんは「できれば日本で一緒に暮らしていきたい。でもパートナーの方が就労ビザを更新し続けないと日本にいられません。私たちはドイツで登録パートナーシップ制度を利用していて、ドイツにいけば家族として暮らせるし働けます。なので、もしかしたら最終的にはドイツに住むかもしれないと思っています」

f:id:soshi-matsuoka:20171211011855j:plain
ブラッドさん(左から2番目)と光さん(左から3番目)

光さんとブラッドさんは日本とアメリカの同性国際カップル。5年前に東京で出会った。昨年の12月にカリフォルニアで結婚し、日本でも手続きをしようと、カリフォルニアの日本領事館に申請したところ『男性同士ですので日本の法律では認められません』と返送されたそう。

ブラッドさんがもし病気になった際「日本ではなくアメリカでないと保険が適用される状態で医者に診てもらうことができないのが不安だ」と光さんは話す。

「私は日本が大好きです」とブラッドさん。「日本は和を重んじているし、すごくお互いを尊重しあう。バスは8時2分にちゃんとやってくるし、日本はみんなのことを考えて誠実さを持ち合わせている。なのに、なぜ同性カップルだとダメなのでしょうか?なぜ光さんと一緒に住むことはできないのでしょうか?とても不思議です」

無関心であったり知識がないということは、公権力として許されない

同性愛者に関する裁判で代表的なものは1997年の府中青年の家事件だ。

今回のシンポジウムの主催者のひとりである明治大学鈴木賢教授「府中青年の家事件の裁判で『行政当局は、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使の当たるものとして許されないことである』と書かれていた。この行政当局は入国管理局も入っていると思います」

Gさんの在留資格に関する裁判は、日本国内における同性間のパートナーシップを認めるかに関する初めての裁判になるだろう。

次回の裁判は2月23日(金)10時30分から、東京地方裁判所で行われる。弁護士の永野さんは「傍聴席を日本人と外国人の国際カップルで埋め尽くしたい。ぜひ裁判の傍聴に来てください」と呼びかけた。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

 

「誰もが誰かのALLYになれる」今年もMEIJI ALLY WEEKを開催します。

「誰もが誰かのALLYになれる」今年もMEIJI ALLY WEEKを開催します。

 

2015年に日本で初めて主催したMEIJI ALLY WEEKは、色んな意味で初めてのチャレンジでした。

いつも多大なるお力添えをいただいている、明治大学情報コミュニケーション学部の田中先生が担当するジェンダー論で、ゲストスピーカーとしてお話させていただいたのが2015年の春。

f:id:soshi-matsuoka:20171205115457j:plain

そのとき、たまたま「ALLY」について紹介するスライドを1枚だけ入れて話してみました。
授業後に回収したリアクションペーパーには9割近くが「ALLYって良いな」「ALLYになりたい」と書かれていました。


LGBTはいないのではなく、見えていない」それと同じように、「LGBTを理解したい、味方でありたい」と思っている人もまた"見えていない"のではないか。そう思う瞬間でした。


「じゃあ、まずは大学の中から、ALLYを可視化していこう。」
そう思い、ALLY WEEKを企画しました。

 

いろんな人に話を聞き、様々なアイデアをいただきました。初めてクラウドファンディングにも挑戦し、多くの方から応援していただきました。

同じような思いをもって参加してくれたメンバーとともに、最後までサポートしていただいたジェンダーセンターの先生方や事務室の方々とともにALLY WEEKを開催しました。

f:id:soshi-matsuoka:20171205115712j:plainMEIJI ALLY WEEKでは、白い服をきて写真を撮りSNSでALLYでありたいという気持ちを表明する"Ally in White"という企画や、ひとりひとりが多彩な性のグラデーションのひとつだと伝える"Gender Gradation Fashion Show"を実施しました。

 

あれから2年。今では早稲田大学愛知教育大学などでALLY WEEKを開催していただき、全国的に広がりを見せています。

 

さらに、今年、声をあげてくれた後輩がMEIJI ALLY WEEK 2017を開催してくれます。「まずは出会ってほしい、様々な違いに触れてほしい。明大生から、さらにALLYを可視化して行きたい」最後の最後まで考え込んで、作ってくれました。

 

「誰もが誰かのALLYになれる」

LGBTをきっかけに、ジェンダーセクシュアリティにとどまらず、様々な違いに対して味方でありたいと思える人を増やし、可視化していく。

12/8(金)まで開催中です。ぜひ応援していただけたら幸いです。

 

www.meiji.ac.jp

 

《MEIJI ALLY WEEK 2017の全体像》
① 知識として「知る」〜さまざまな形でまず知ろう!
日程:12月4日(月)~6日(水)
内容:
LGBTや性の多様性に関するフライヤーの配布
・アライであることを表明できる缶バッジの配布
・明大前から和泉キャンパスまでの通り沿いの店舗でのレインボーフラッグの設置

※詳しくはTwitterアカウント「MEIJI ALLY WEEK」を検索!!

② 出会うことで意識が、言動が「変わる」
◆ALLYについて考えるトークイベント〜当事者との出会いと対話
日時:12月7日(木)17:30〜20:00
会場:明治大学和泉キャンパス 第三校舎1F 国際交流ラウンジ
※事前申込不要

LGBTの学生と話してみませんか?—さまざまなセクシュアリティの大学生が「今までどんなことを経験してきて、何を感じて生きているのか」を話す。聴く側はそれに応える。このような対話を通して「LGBT」では括れない「ひとりの人間」が見えてくるはず。「ALLYとは何か」「ALLYとして何ができるか」を共に考えるイベントです。

③ 表明し、「広げる」
◆体験型ブースイベント〜ALLYの輪を広げよう!
日時:12月7日(木) 10:30~17:00
12月8日(金) 10:30~19:00
場所:明治大学和泉キャンパス 第一校舎前
 
~メッセージボードを持って写真を撮り、発信!~
ALLYもまた目に見えいくい存在です。だからこそ「ALLYになりたい、ALLYだよ!」という意図を可視化していくことが大切です。性の多様性について「知って、変わって、味方になりたい」と思ったら、それを表明し、更にアライの輪を広げましょう!
※参加してくれた方にはチェリオのライフガードをプレゼント!

 

フライヤーはこちら。

f:id:soshi-matsuoka:20171205115838j:plain

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

 

 

「私はエイズでパートナーを亡くした」来春公開の映画「BPM」上映会で語られた日本のHIV/エイズ

2018年3月公開の映画「BPM(Beats Per Minute)」ジャパンプレミア試写会が東京・中野区の「なかのZERO」で行われた。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171124073838p:plain

第70回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、第90回アカデミー賞 外国語映画部門フランス代表に選出されたロバン・カンピヨ監督の長編第3作。舞台は1990年代初めのパリ。エイズ発症者やHIV感染者への差別や不当な扱いに抗議し、政府や製薬会社などへ変革に挑んだ実在の団体「ACT UP-Paris」の活動を通して、若者たちの恋と人生の輝きを描く。ACT UPのメンバーだったという監督自身の経験が物語のベースとなっている。明日も知れぬ命を抱える主人公の葛藤、感染者を一人でも減らしたい、友人の命を助けたいという情熱、恋人との限りある愛・・。生と死、理想と現実の狭間で揺れ動きながらも、強く生きる若者たち。彼らの生き生きとした表情や行動が、力強くエモーショナルな映像と共に綴られる、感動作。

映画「BPM」公式WEBサイトより

印象的な四つ打ちのBGMに煽られながら、登場人物の感情そのままを突きつけられる、心揺さぶられる映画だった。

ACT UPのミーティングと活動とを順に追うドキュメンタリーテイストでありながら、細部に描かれる人間関係が鮮明で、フィクションとは思えないほど生々しい。生と死の間で、怒りや喜び、悲しみが溢れ出るように表現され、目を離すことができなかった。

最後の沈黙にこの映画を観た人は何を想うのか。ひとりひとり異なるがきっと何かを受け取り、考えさせられる映画だ。

岩が頭の上から落ちてきたように、ただただ怖かった

上映後のトークショーでは、第31回日本エイズ学会学術集会・総会会長の生島嗣さん司会のもと、社会学者の山田創平さん、新宿でバー「タックスノット」を経営されている大塚隆史さんから、日本の1980年代のHIVを取り巻く状況について話があった。

特に大塚さんは、1989年に同性のパートナーをHIVで亡くされていて、その当時と今回の映画とを比較しながら思いを語った。

f:id:soshi-matsuoka:20171124024202j:plain大塚隆史さん(写真中央)

1988年の秋頃から、大塚さんのパートナーは風邪が治らなくなり、むしろ悪化の一途を辿っていた。

HIVだとわかったのは12月頃でした」と話す大塚さん。

「新聞で『ゲイがかかる病気』という記事を見つけて、何だろうと思いながらも他人事のように読んでいました。まさか自分の所までやってくるとは思いもしなかったです」

パートナーが亡くなったのは翌年の4月頃。大塚さんもHIVの検査を行ったが結果は陰性だった。

病院では「何もできることがない」と言われ、肺炎になったら肺炎の治療を、と対症療法でしかできることがなかったそう。また、医者からは「このことは信頼できる友人にだけに伝えて、それ以外の人には言っちゃダメだ」と言われた。
 

実はその頃、週刊誌が「国内初の女性のエイズ患者」「この人と性行為をした人は気をつけろ」というような内容で、エイズ患者の女性の顔を掲載し、マスコミも交えたセンセーショナルな報道が日本中に広がり、いわゆるエイズパニックへと発展した。神戸事件と呼ばれている。

当時からゲイバーを経営していた大塚さんは「自分らしく、ありのままで生きていこう」と客に伝えていたが、自分は本当のことが言えない。

「岩が頭の上から落ちてきたように、ただただ怖かった」と当時を振り返る。

 

花見の時期に、パートナーはトイレに行くだけで息が切れるようになり、即入院。滅菌室に入れられ、大塚さんがパートナーと面会できたのは週にたった1日だけだった。

結局、パートナーは入院してから3週間ほどで亡くなってしまったため、実質、2回ほどしか面会することはできなかったそう。

 

「映画の中で登場人物たちは『怒り』を力に活動していた。自分は当時何も知識がなくて、ただただ怖かったんです」

 映画の中で出てくる「沈黙は死だ。知識は力だ。」というスローガンが印象的だったと話す大塚さん。「怒りだけではなく、そこに知識があること、一人じゃないということが大事だと思います」 

HIV/エイズをめぐる現実はものすごいスピードで変化している

「映画の中で、目覚まし時計が鳴ったら薬を服用するというシーンがありましたが、昔は1日何回も薬を飲まなくてはいけませんでした」と山田さんは説明する。

「今では6〜7割の人が、1日1回の服用で済む。また通院も2ヶ月に1回程度で、今はほとんどの人がウィルスが検知されない『検出限界以下』になっています。こうなるどコンドームを使用しなくてもHIVに感染しないという研究結果もあるようです」

12月1日の「世界エイズデー」に合わせ現在開催中のTOKYO AIDS WEEK 2017。公式WEBサイトには「HIV/エイズをめぐる現実はものすごいスピードで変化している」と書かれている。

映画で語られているように、そして大塚さんが当時を振り返って話すように、知識は力となり、その後の社会に強く影響を与えるだろう。

HIVエイズへの関心を高めることで感染拡大の防止をはかり、さらにHIV陽性者などに対する偏見や差別の解消を目指すため、TOKYO AIDS WEEK 2017では、中野を中心に様々なイベントが行われる。

スケジュールは公式WEBサイトから確認できる。関心のある方はぜひ参加してほしい。

 

aidsweeks.tokyo

「たった紙一枚で人の意識はこんなに変わる」渋谷区パートナーシップ証明書から2年

2015年11月、渋谷区で同性カップルのパートナーシップを証明する「パートナーシップ証明書」の交付が始まった。ちょうど2年がたった昨日、渋谷・男女平等ダイバーシティセンター「アイリス」で、パートナーシップ証明実態報告調査会が行われた。

公正証書を作成するプロセスが、二人の関係を見つめ直す機会になった

渋谷区総務部男女平等・ダイバーシティ推進担当課長の永田龍太郎氏によると、渋谷区では11月1日時点で24組のカップルに証明書を交付している。そのうちの取得者12名、取得を検討中4名の計16名の方に対して、今回、渋谷区とLGBT関連のNPO、学術研究者グループが共同でインタビュー調査を行った。

f:id:soshi-matsuoka:20171107012227j:plain
NPO法人虹色ダイバーシティ代表の村木真紀氏

「交際開始年が、一番古い方で1977年からのカップルがいました。それぞれのカップルのストーリーを聞くと目頭が熱くなってきます」と話すのは、NPO法人虹色ダイバーシティ代表理事の村木真紀氏。

証明書を取得したカップルへのインタビューから、「行政による後ろ盾があるという安心感」によって「社会からの"承認されている"と感じる」人が多かったと話す。また、「公正証書を作成するプロセスが、二人の間の関係を見つめ直す機会になった」という声もあった。

証明書取得は、周囲に「本気だよ」と伝えるため

別日には、実際にパートナーシップ証明書を取得した5組のカップルと長谷部健渋谷区長との懇親会が行われた。

なぜ証明書を取得したのか。交際9年目の男性同士のカップルは「それまで困難を感じたことはあまりなかったが、家のローンを組むときに『夫婦ではないためどちらか一方でないと組めない』ということを知った。その後、生命保険の受け取り人を同性パートナーに指定できるという話を聞いて証明書を取得しようと思った」という人や、交際3年目の女性同士のカップルは「両親やまわりのひとに、自分たちの関係が『本気だよ、気の迷いじゃないよ』というのをアピールするため」と話した。

f:id:soshi-matsuoka:20171107012328j:plain
パートナーシップ証明書を取得した方と長谷部健渋谷区長との懇親会

渋谷区のパートナーシップ証明書は、世田谷区等、他の自治体とは異なり公正証書の作成が必要だ。それに伴い、例えば渋谷区が規定する内容で公正証書を作ると1.5〜5万円程度費用が発生する。

他の自治体と比べて渋谷区のパートナーシップ証明書取得者は戸籍上男性の方が多く、本人とパートナーの年収の合算が400万円を満たないカップルはいなかった。

男性同士のカップルは「結婚しようと思ったら、色々かかるコストのうちの一つと思うことができるけど、平等という観点からだとどうかなとは思う 」「法律をかえるために第一歩としてこれは良いこと、ありがたいことだと思う」と話した。

f:id:soshi-matsuoka:20171107012419j:plain
パートナーシップ証明書を取得したカップル

たった紙一枚で人の意識はこんなに変わるんだと思った

今回の実態調査に対して、学術研究チーム、国立社会保障・人口問題研究所の釜野さおり氏は「たった紙一枚で人の意識はこんなに変わるんだと思った」と証明書の意義を語った。

「日本ではじめてこういった証明書が発行されて、それを取得した人に直接話をきいたということはすごいこと。今後は、生活がどうなっているか、制度を使ったカップルと制度を使っていないカップルの比較、異性間と同性間の比較なども行っていきたい」

同じく学術研究チーム、金沢大学人間社会研究域法学系教授の名古道功氏は「これまで男女という2つの性、そして異性婚が大前提として法律が作られてきた。これを根本的に見直していく必要性が出てきているんじゃないか。法律の分野に突きつけられた課題ではないかなと考えている」と語った。

f:id:soshi-matsuoka:20171107012527j:plain
長谷部健渋谷区長

なぜ、あえて公正証書の仕組みにしたのか、長谷部区長は「なるべく結婚と同等にしたいという思いから公正証書にした」と話す。

「費用の面でハードルが高いのではと想定していた。実際に取得した方と話すと、思ったよりそこはハードルにはなっていないようだと感じたが、補助等も含めて今後検討していきたい」

調査では、証明書を取得したカップルだけでなく、企業に対してもインタビューが行われた。民間企業からは、渋谷区の取り組みは公正証書に基づいている点が、同性パートナーシップ対応において依拠しやすいという点で評価されている。

実際に証明書を取得した方のなかに、別の区にある病院に入院した際、手術に家族の同席が必要だったが、同性のパートナーではダメだと断られ医者とトラブルになったという方がいた。その時パートナーシップ証明書を持って行ったところ再度検討してくれて、結局パートナーの同席が可能になったそう。

保険会社でも、公正証書とパートナーシップ証明書によって、死亡保険の受取人を同性パートナーに指定できるというのが標準的だ。パートナーシップ制度が導入されていない自治体や企業でも、公正証書があれば場合によっては今後同性パートナーを認定するところは増えていくかもしれない。

f:id:soshi-matsuoka:20171107012628j:plain

多くの人に知ってもらって、世の中の空気を変えていきたい

今回、証明書を取得した人の中には、自治体のパートナーシップ制度に加えて「単身者がもっと生活しやすいとか、子どもを育てやすくしてあげてほしい」という声もあがった。

長谷部区長は「今回はパートナーがいる方々が享受できる仕組み。思春期に悩む方も多いと伺っているので、相談対応なども重点に考えていく必要性がある」

「渦はまわりはじめたので、どんどん大きくしていく。多くの人にこの取り組みを知っていただいて、世の中の空気を変えていきたい」と今後の意気込みを語った。

現在パートナーシップ制度を導入している自治体は渋谷区、世田谷区を始め全国で6つ。11月1日時点で合計134組のカップルがこれらの制度を利用している。

台湾では今年5月に「同性婚が認められていない現行の民法違憲」と判断され、2年以内に修正することが決まった。日本と比較して自治体数は異なれど、2015年時点で11の都市、人口のうち約80%の自治体で同性パートナーシップ制度が施行されている。

日本でもこれからパートナーシップ制度を導入する自治体が増えていくだろう。各自治体での取り組みが最終的には国レベルでの法制度につながるのかどうか、今後に期待したい。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

【2017衆院選】LGBTの政策について各党にアンケートをとって比べてみた

こんにちは、松岡宗嗣です。


10月22日に投開票日を迎える、第48回衆議院議員総選挙憲法改正や消費税増税原発などが主な争点として注目されています。

 

今年7月に行われた東京都議選では、東京に住むゲイの一人として、各政党にLGBTに関する考え方についてアンケートを送り、比較してみました。

今回の衆院選では、LGBTに関する法整備を目的とする全国組織「LGBT法連合会」が、各政党にアンケートを実施していたので、そのアンケート結果を共有いただき、まとめてみました。

 

アンケートで聞いた質問は、大きく以下の5つ。

  1. LGBTに関する課題全般に人権課題として取り組むかどうか
  2. LGBTの人権を保障する法制度の制定についてどう考えているか
  3. 教育、就労、医療、行政、民間サービス、政府の6つの分野におけるそれぞれの考え方
  4. 同性カップルを法的に保障することについてどう考えているか
  5. 性同一性障害特例法の見直してについてどう考えているか

その中でもいくつかのポイントを抜粋、比較した表が以下になります。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019184206j:plain※「その他」という回答には、各政党からのコメントがついています(後述)

 

LGBTに関する課題全般に人権課題として取り組む」に対し、全ての政党が「積極的に取り組みが必要」と回答。今回アンケートに回答いただいた全ての政党でLGBTに関する記載があり、時代の変化を感じます。

概ねほとんどの政党がLGBTの人権を保障する法制度の制定に賛成。「同性婚」「教育・就労における差別の禁止」「性同一性障害特例法の見直し」については、各党考え方が分かれました。

 

アンケート回答結果一覧

以下、各問いごとの回答をまとめて、比較しています。

f:id:soshi-matsuoka:20171019184550p:plain

f:id:soshi-matsuoka:20171019184616p:plain

自民党性的指向性自認に関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定を目指すと記載しています。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019184717p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党
A-1 全教職員への知識の啓発・訓練:「教職員等を対象とした研修等を強化し、一層の理解を促し浸透させること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

A-2 多様な性を授業等で学習することを通じた子ども間のいじめ・差別の防止:「性的指向性自認によるいじめも含め、『いじめ防止対策推進法』および『いじめ防止基本指針』に基づいた総合的ないじめ対策を一層進めるとともに、いじめや差別を許さない 適切な生徒指導・人権教育をさらに推進すること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォロー アップしていく予定です。

A-3(入学拒否・転校強要・退学など)差別的取り扱いの禁止:「教職員等を対象とした研修等を強化し、一層の理解を促し浸透させること。」と政府へ要望を行ったところであり、 今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

A-4 苦しむ子ども・保護者への相談・支援の制度化 (カウンセリング、自殺防止等):「性的指向性自認について悩みを抱える児童生徒および保護者に対し、きめ細やかな相談対応や適切な措置ができる体制を整えること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予 定です。

A-5 合理的配慮(性自認に合わせたトイレ、制服、等):「性的指向性自認について悩みを抱える児童生徒および保護者に対し、きめ細やかな相談対応や適切な措置ができる体制を整えること。」と政府へ要望を行ったところであり、 今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。


希望の党
今後の検討課題とする


公明党
A-3 (入学拒否・転校強要・退学など)差別的取り扱いの禁止:様々なケースが想定されるため、実態把握を行った上で、今後検討が必要だと考える。

A-5 合理的配慮(性自認に合わせたトイレ、制服、等):学校で生じる困難について、実態把握を行い、合理的配慮につとめるべきである。

 

立憲民主党
A-5 合理的配慮(性自認に合わせたトイレ、制服、等):対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。


社民党
教育・啓発は当然必要ですが、包括的な差別禁止法を制定した上で具体的な条例や行政指導で行われるべきです。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185115p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党
B-1 採用時及び就労期間中の不利益・不均等な取扱の防止・禁止:「従業員の多様な性的指向および性自認を積極的に受容する取り組みを行っている企業等が存在することを踏まえ、そうした事例を収集し広く情報提供を行うことにより、当事者が就職の際参照できるようにするとともに、他事業者の取り組み検討の参考に供し、後押しをすること。また職場におけ る自主的な取り組みを促すため、ガイドラインの策定等の施 策の検討を積極的に進めること。」
「公正な採用選考についての事業主に対する啓発・指導において、性的指向性自認に関する内容も含めることにより、当事者が不当な取り扱いを受けることを防止すること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

B-2 ハラスメント対応(職員・社員への啓発・訓練、相談支援・アドバイス、等):「パンフレットやWebサイト等を活用して総合的に周知に努めること。また労働基準監督署都道府県労働局、ハロー ワーク等の職員や相談員について、性的指向性自認に関す る研修を充実させ、事業主や労働者に対する相談や指導が適切に行われる体制を整えること。」「都道府県労働局における 総合労働相談コーナーや個別労働紛争解決制度において、性的指向性自認に関する相談・紛争への対応も行っているこ とについて、一層の周知を図ること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

B-3 合理的配慮(性自認に合わせたトイレ、制服、等)
労働基準監督署都道府県労働局、ハローワーク等の職員や相談員について、性的指向性自認に関する研修を充実させ、事業主や労働者に対する相談や指導が適切に行われる体制を整えること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

 

希望の党
今後の検討課題とする


公明党
B-3 合理的配慮(性自認に合わせたトイレ、制服、等)
職場等で生じる困難について、実態把握を行い、合理的配慮につとめるべきである。

 

立憲民主党
B-3 合理的配慮(性自認に合わせたトイレ、制服、等):対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

 

社民党
職場における相談・支援の仕組みは当然必要ですが、包括的な差別禁止法を制定した上で既存の法律や条例、行政指導で行われるべき。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185258p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党
C-1 医師・医療関係者への啓発・訓練:「医師や看護師の教育に関し、『医学教育モデル・コア・カリキュラム』や『大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会最終報告』において、性同一性障害性分化疾患等に関して既に盛り込まれているところであるが、関連する専門知識の一層の普及に努めること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

C-2 多様な性自認性的指向に配慮した対応と診療:「医療、介護、障害福祉等のサービス提供にあたっては、 利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立ったサービスの提供に努めなければならないこととされていることを踏まえ、利用者が性的指向性自認を理由とした不当な取り扱いを受けないよう、改めて通知等を発出することにより監督官庁の指導を徹底させること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

C-3 同性パートナーを配偶者同等に扱い、医療に関する意思決定に参加させる:「医療、介護、障害福祉等のサービス提供にあたっては、 利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立ったサービスの提供に努めなければならないこととされていることを踏まえ、利用者が性的指向性自認を理由とした不当な取り扱いを受けないよう、改めて通知等を発出することにより監督官庁の指導を徹底させること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

C-4 LGBT当事者に多い、HIV陽性者の抱える困難の解消について:わが党は性的指向性自認の多様なあり方を受容する社会や、当事者の方が抱える困難の解消を目指しております。ご質問の「LGBT当事者に多いHIV陽性者の抱える困難の解消のため」、学校教育の現場においては、当事者生徒・学生への正しい知識の普及と厳しい現実の共有によりHIV感染に対して脆弱な若年層における予防をはかります。また全国の保健所等で実施されているHIV検査の利便性を高めるなど検査・治療の体制を整え、早期発見・早期治療を促すとともに、安定した治療環境の構築を目指します。また、性の多様性への正しい理解を広げるとともに、ゲイ男性及びバイセクシャル男性の肯定感を高めます。

 

希望の党
今後の検討課題とする


公明党
C-1 医師・医療関係者への啓発・訓練:医療現場で生じる困難について、実態把握を行い、合理的配慮につとめるべきである。

C-3 同性パートナーを配偶者同等に扱い、医療に関する意思決定に参加させる:医療における自己決定においては、既に現場の裁量に委ねられており、本ケースも同様に扱われるべきである。

C-4 LGBT当事者に多い、HIV陽性者の抱える困難の解消について:HIV陽性者、感染の髙いリスクにさらされている人への偏見や差別を解消すべきである。

 

立憲民主党
C-3 同性パートナーを配偶者同等に扱い、医療に関する意思決定に参加させる:対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

C-4 LGBT当事者に多い、HIV陽性者の抱える困難の解消について:対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

 

社民党
医療現場における適切な対応は当然必要ですが、包括的な差別禁止法を制定した上で既存の法律や条例、行政指導で行われるべき。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185407p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党
D-1 全職員への啓発・訓練と、住民対応の際の配慮:「各府省の人事担当者向けの勉強会の開催や、内閣人事局 が実施する研修等において性的指向性自認に関する内容を追加すること等により、各府省職員の理解の促進を図ること。自治体においても同様の取り組みを促すこと。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

D-2 国および各自治体における、支援のための基本計画の策定と実施:「国における、理解増進のための基本計画の策定」を法律で義務化することを検討しています。

D-3 各自治体における、相談・支援センターとなる施設の指定・設置:「よりそいホットライン(寄り添い型相談支援事業)においてセクシュアルマイノリティラインを設置して相談対応を実施していることについて、より一層の周知徹底を図ること。また性同一性障害に関しては各自治体に設置している精神保健福祉センターにおいても相談対応を行っていること についても、同様に周知徹底を図ること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

D-4 地域防災計画での明確化と、災害時の配慮・対応の強化:「災害時の避難所等において、性的指向性自認に関する 理解促進を進め、当事者に対して適切な対応がとられるよう必要な措置を講じること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定で す。

D-5 行政対応での差別取り扱いの禁止:「意図せぬ性別の暴露(アウティング)を防ぐため、住民票の写しに代え、性別の記載の省略が可能な住民票記載事項証明書の交付が請求できることに関し、一層の周知を図ること。」「印鑑登録証明は法律等に基づかない自治事務であり、性別の記載が必ずしも必要ではないことを通知等で地方自治体に示すこと。」「地方自治体において性的指向性自認に関する当事者に配慮した取り組み等を行っている事例を収集し、把握すること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

 

希望の党
今後の検討課題とする

 

立憲民主党
D-4 地域防災計画での明確化と、災害時の配慮・対応の強化:対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

 

社民党
基本計画の作成や適切な行政サービスの実施は当然必要ですが、包括的差別禁止法を制定した上で条例や行政指導で行われるべきです。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185514p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党
内閣府『人権擁護に関する世論調査』において、性的指向に関する人権問題として『宿泊施設、店舗等への入店や施設利用を拒否されること』が一定挙げられていることを踏まえ、今後の外国人観光客の増加傾向等を勘案し、宿泊施設や入浴施設等あるいは観光客向けの施設において、性的指向性自認に関し不当な差別なくかつ適切な配慮がされるよう検討を行い、必要に応じてガイドラインの策定や通知等により行うべき対応を明らかにすること(特にホテルでの宿泊におけるダブルベッドルームの予約等)。」
「同調査において『アパート等への入居を拒否されること』も性的指向に関する人権問題として一定挙げられていることを踏まえ、性的指向性自認に関する当事者を、『住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方針』における住宅確保要配慮者に位置付ける等の対策を検討し、必要な措置を講じること。」と政府へ要望を行ったところであり、今後政府の取組みをフォローアップしていく予定です。

 

希望の党
今後の検討課題とする


公明党
E-2 同性カップル・パートナーへの配慮 (カップルを法的認知するか否かに関わらず):配慮すべき具体的な事項については、今後検討が必要である。

 

立憲民主党
E-1 多様な性自認性的指向に配慮したサービスの提供・施設面の対応:対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

E-2 同性カップル・パートナーへの配慮 (カップルを法的認知するか否かに関わらず):対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

 

社民党
包括的な差別禁止法を制定した上で行政の裁量、ならびに各々の現場で自主的に取り組まれるべきです。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185617p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党:今後の議論の中での検討課題と考えます。

希望の党:今後の検討課題とする

公明党:施策の具体的な内容は、今後検討が必要である。

立憲民主党:対応が必要だと考えるが、どのように実施するかは検討していきたい。

社民党:包括的な差別禁止法を制定した上で条例や行政指導で行われるべきです。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185739p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党憲法24条の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」が基本であり、同性婚容認は相容れないものです。また、一部自治体が採用した「パートナーシップ制度」についても慎重な検討が必要です。

希望の党:差別を解消した上で、ダイバーシティ社会へと歩みをすすめ、制度導入に向けた検討につながることを期待する。

立憲民主党:今後検討します。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171019185819p:plain

「その他」と回答した政党のコメント

自民党自民党HPに「わが党の基本的な考え方・政府への要望」「議論のとりまとめ」「性的指向・性同一性(性自認)の多様性って?~自民党の考え方~」「性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&A」を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
なお、自民党では性的指向・性同一性の多様性に関して理解促進を図るための法整備を検討しており、具体的な施策については政府申し入れにより現行制度をフル活用して実現を目指す方針です。
従って、具体施策について法律で義務化することを目指すものではありませんが、一方で、今後も引き続き政府の取り組みをフォローアップし、党として政府に対して調整や働きかけを続けますので、行政や現場の裁量に委ねてしまうことも考えておりません。 そのため、問三には私たちの方針に適切な選択肢がありませんでしたので、記載のような回答となっています。ご理解賜りますようお願い申し上げます。

立憲民主党:今後検討します。

 

各政党からの感想とメッセージ

自民党
自民党HPに「わが党の基本的な考え方・政府への要望」「議論のとりまとめ」「性的指向・性同一性(性自認)の多様性って?~自民党の考え方~」「性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&A」を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
なお、自民党では性的指向・性同一性の多様性に関して理解促進を図るための法整備を検討しており、具体的な施策については政府申し入れにより現行制度をフル活用して実現を目指す方針です。
従って、具体施策について法律で義務化することを目指すものではありませんが、一方で、今後も引き続き政府の取り組みをフォローアップし、党として政府に対して調整や働きかけを続けますので、行政や現場の裁量に委ねてしまうことも考えておりません。 そのため、問三には私たちの方針に適切な選択肢がありませんでしたので、記載のような回答となっています。ご理解賜りますようお願い申し上げます。


希望の党
性別、性的指向、年齢、人種、障害の有無等にかかわらず、すべての人が輝ける社会を目指す。LGBTに対する差別を禁止する法律を制定する。

 

公明党
性的指向性自認の無理解により、今日様々な課題が表面化しています。その解決のために、正しい理解を広げる取り組みが必要だと考えております。
公明党は、貴会と連携を深め、性的指向性自認の多様性が尊重され、これを理由とする差別のない社会の実現に向け、さらに尽力して参ります。

 

日本共産党
どういう立場や分野の問題であれ、マイノリティ(少数者)の人たちが肩身の狭い思いで生活せざるをえなかったり、差別や偏見のためにありのままの自分を肯定できなかったりする社会は、健全な社会とはいえません。とりわけ、LGBT・SOGIは、かつては他人に知られたくない、知られてはいけない存在であるかのように受け取られ、なかなか表面化しにくい時代が長く続きました。しかし、当事者の皆さんの勇気ある、そして粘り強い取り組みによって、最近では社会の中の一員として、自然に受け入れる認識も広がってきました。まだまだ法制度の整備が不十分であることをはじめ課題も数多くありますが、人権と生活向上をめざす運動は、これからもいっそう求められているし、発展していくと確信しています。
私たちは常日頃、皆さんの活動や提言から、多くを学ばせていただいています。そのことに、この場を借りて御礼を申し上げるとともに、心からの敬意と、変わらぬ連帯の気持ちを送ります。これからも手を携えて、すべての人が個人の尊厳を守られ、自分らしく生きられる社会をめざし、ともに頑張っていきましょう。

 

立憲民主党
記載なし

 

社会民主党
社民党事実婚ひとり親家庭ルームシェア、養子や里親、LGBTなどのセクシュアル・マイノリティの婚姻など、「多様な家庭」の形成を支援していきます。 LGBT故の生きづらさをなくし、公営住宅高齢者施設への入所などにおける差別的取り扱いを禁止するためLGBT差別禁止法を急ぎます。そして性別にかかわらず多様な形態の家族に対して民法上の権利を保障する、フランスのPACS(連帯市民協約)にならった新制度の創設を目指します。


実現可能性に注目

 

ほとんどの政党が公約の中でLGBTについても取り上げていたり、LGBTの人権を保障する法制度の制定に賛成しています。どのような法制度かは各党によって考え方は異なりますが、LGBTに関する法制度は実現可能性が高いということになると思います。

次の議員の任期で、ここで回答したLGBTの人権を保障する法制度が実現されるのか、各党や政治家がどう動くかを、私たちもしっかりと注目していく必要があります。

 

LGBT法連合会のサイトには、政党に加えて、各候補者へのアンケート結果も掲載しています。併せて見てみてください。

今週末、22日(日)に投開票日を迎える第48回衆議院議員総選挙。他の様々な争点を見比べつつ、その中の一つの軸として「LGBT」についても捉えていただけたら幸いです。

 

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

 

 

国連「同性愛者の死刑を非難する決議」に対し、日本はまさかの反対

9月29日、国連人権理事会で「同性愛行為が死刑の対象になること」に対して非難する決議が出されたが、日本はこれに反対票を投じた

同性間性行為が死刑になることに対して、日本は「仕方がないと思っている」という立場なのだろうか。

 

今回の決議案はベルギー、ベナンコスタリカ、フランス、メキシコ、モルドバ、モンゴル、スイスの8ヶ国が主導して提案

Pink Newsによると、人権理事会に加盟している国47カ国のうち、今回反対したのは、ボツワナブルンジ、エジプト、エチオピアバングラデシュ、中国、インド、イラク日本カタールサウジアラビアアラブ首長国連邦アメリカ合衆国の13カ国。

キューバ、韓国、フィリピン、インドネシアチュニジア、ナイジェリア、ケニアは棄権した。

 

f:id:soshi-matsuoka:20171009174754p:plain

UN WebTVより

 

今回、日本が反対票を投じたことについて、高岡法科大学の谷口洋幸教授は以下のように指摘する。

 

  • 反対しているいくつかの国は「死刑の存続、廃止の議論については文化や伝統、政治状況などの事情から、国が決めることだ」と、国家主権の枠内で考えるということを明記するよう求めたが否決。そのため今回の決議案そのものへ反対票を投じた。
  • 日本は、国内で死刑制度を残していることもあり、「死刑廃止・モラトリアム(適用猶予)を目論む決議には賛成できない」という立場。なので、同性間性行為への死刑廃止については”明確に”反対したわけではないというのが前提。また、2015年の死刑問題決議でも反対票を投じているため、投票行為は一貫している
  • しかし、前回は「死刑制度の廃止」が議論されたが、今回はそうではなく、「平等・無差別の権利」との抵触、つまり「死刑の適用方法」が議論のテーマだった。そのため「精神・知的障害、18歳未満」「背教・不敬・姦通・合意ある同性間性行為」に対する死刑適用の廃止が求められていた。
  • さらに、決議の提案国は「死刑の廃止・モラトリアムの義務づけ決議ではない」と説明していて、死刑制度がある国でも賛成して問題ないように練られていた。賛成できなくても棄権することができたはず。反対したということは、死刑制度の適用において「平等・無差別の権利」を確保しないととられても仕方がない
  • にもかかわらず、日本は「死刑廃止・モラトリアムは義務じゃないから、決議に反対する」と表明した。これにどれだけの意味があったのだろうか。


国連LGBTコアグループに参加している日本。これまで、国際人権理事会ではLGBTの権利に関して支援的な態度をとってきたそう。今回の反対票は明確に同性間性行為への死刑廃止について反対しているわけではないかもしれないが、それでもこの反対票によって伝わってしまう政治的な効果は大きいのではないか。

未だ国内にもLGBTを保護/承認する法律はない。10月10日は衆議院選挙の公示日だが、LGBTに関する政策は、いくつかの党の公約にも既に取り上げられている。国内外でLGBTの権利に対する立場を明らかにしていく必要がある。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok 
Facebook soshi.matsuoka

「保毛尾田保毛男」という負の遺産が2017年に復活してしまった

フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした。」が30周年を記念したスペシャル番組を放送した。その中で「保毛尾田保毛男」に扮した石橋貴明と「ノリ子」に扮した木梨憲武が登場。

まさか2017年に「ホモ」という言葉をテレビから聞くことになるとは思ってもみなかった。

 

f:id:soshi-matsuoka:20170929085720j:plain


「この格好は28年ぶり」と話す「保毛尾田」こと石橋は、顔の下半分を青くして露骨な青ヒゲを表現し、頬はピンクに塗り、くぐもった話し方をする。

共にコーナーに参加したビートたけしが保毛尾田(石橋)を見て「別の国に行ったら死刑だぞ」と笑う。さらに「小学校のときこういうオヤジが公園で待っていた。みんなで一緒になって逃げたことある」と続ける。

ノリ子(木梨)がすかさず「あんたホモでしょ?」と聞くと
保毛尾田(石橋)は「ホモでなくて、あくまでも噂なの」と答えた。

きっとこのくだりが約30年前にやっていたネタなのだろう。全く面白くもない。

 

 

私は保毛尾田保毛男をリアルタイムで見たことはないが、人から当時の様子などを聞いたことがある。

年上のゲイの知人は、自身のセクシュアリティに悩んでいたとき、最初に見た同性愛のキャラクターが保毛尾田保毛男で絶望したと言っていた。

当時は今よりももっと声をあげにくかったのだろうと想像する。保毛尾田保毛男がテレビの中で同性愛者をネタにして、面白おかしく振る舞い、周りもそれを見て笑う。テレビを見ていた人たちは、次の日、学校などで保毛尾田保毛男のマネをして「ホモ」「きもい」と笑っていたのではないだろうか。

その中にはきっと同性愛・両性愛者の児童生徒もいただろう。痛みをこらえながら無理して周りにあわせ、一緒になって笑っていたかもしれない。そして、自分で自分のことを否定してしまう人もきっといたと思う。

私自身、中学高校時代、自分のセクシュアリティは人とは違う気持ち悪いもので、「笑いにする」か「隠す」しか方法はないと思い込んでいた。それはメディアや社会で同性愛者がそう語られていたからだ。

 

こんな負の遺産が、2017年に復活してしまった。

 

 


ここ数年で、ニュースの中ではLGBTなど性的マイノリティについて取り上げられる機会が多くなってきた。報道の分野では性的マイノリティ特有の困りごとを伝えたり、一般社会にLGBTが存在し生活していることを伝える側面が増えた。

ドラマでも、TBSの「逃げるは恥だが役に立つ」や日テレの「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」など、ゲイのキャラクターが日常に溶け込んでいる様子を描いたものも増えている。

しかし、バラエティの分野では、まだまだ同性愛という属性だけで笑いとして消費されることが多いと感じる。

 

フジテレビも、同社が運営しているニュースサイト「ホウドウキョク」ではLGBT LIFEというコーナーを設け、LGBTに関する情報を発信したり、今年5月にはTOKYO RAINBOW PRIDEに合わせてお台場のフジテレビ社屋を6色のレインボーにライトアップしたりと、積極的にLGBTに関する理解を広げている。

 

依然、性の多様性の理解に関しては過渡期で、知っている人もいれば知らない人もいる。同社の中でもそれは同じだろう。知らなかったのだとしたら、知ってもらえるようこれからも働きかけていきたい。

ただ、気持ちとしては番組制作に関わっていた誰かが「これ、ダメじゃない?」と気づいて欲しかった。一般社団法人日本民間放送連盟の放送基準11章-77には「 性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する。」と記載されている。懐かしいねと盛り上がっている中で、誰か一人でも気づいてくれていたら、何かが変わっていたのかなと思う。

 


この「保毛尾田保毛男」を懐かしいと感じる世代は、小学校や中学、高校生の子どもがいる人も多いのではないか。この番組をみた大人が何の悪気もなく懐かしがっているのを見て、自分のセクシュアリティに悩む子どもたちの心が翳るのを想像すると胸が痛い。

私は批判することは大事だと思っているが、批判だけして「同性愛を笑いにすると叩かれるからやめよう」という空気になってしまうのも違うと思う。性が多様であるという認識を広げ、今まで見えていなかっただけで、様々なセクシュアリティの人たちが、同じように毎日を生きていることを伝えていきたい。

メディアの表現物により良いものが増えていくよう、自分にできることをやっていきたい。

 

【UPDATE】東洋経済オンラインで、今回の件を改めて振り返った記事を書きました。(10月4日)

toyokeizai.net

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok 
Facebook soshi.matsuoka 

アウティングによる加害者も被害者も生み出さないために、知っておきたい4つのこと - ゲイの大学院生が自死してから2年

一橋大学で、ゲイの大学院生がアウティングされたことによって自死してしまった事件から2年が経ちました。
このショッキングな事件は、実は氷山の一角であり、今も至るところでアウティングは起きてしまっています。


勝手にセクシュアリティを暴露されてしまう「アウティング」は、暴力的で危険なことであるのは確かですが、残念ながら完全に防ぐことも難しい。

しかし、「知っておくこと」によって防げる部分は必ずあるはずです。そこで、アウティングによる加害者も被害者も生み出さないために、最低限知っておきたいことを1枚の画像にまとめてみました。

 

f:id:soshi-matsuoka:20170825014939j:plain

PDFファイルはこちらからダウンロードすることができます。

 

知っておきたい4つのポイント


1、そもそもアウティングとは?

アウティングとは「本人の承諾なく、その人のセクシュアリティを第三者に暴露してしまうこと」です

 

例えばカミングアウトされた人が、他の人に「○○ってゲイなんだって」と勝手に言いふらしたり、LINEやTwitterなど、SNS上で誰かに暴露してしまうことをアウティングと言います。
ちなみに、自分で自分のセクシュアリティを誰かに明かすことは「カミングアウト」、自分ではない誰かが勝手に言いふらすことが「アウティング」です。

 

2、なぜアウティングをしてはいけないの?

その人の居場所を奪ってしまったり、プライバシーの侵害につながる可能性があるから

 

「友達にカミングアウトした翌日、学校に行くとクラス全員にセクシュアリティが暴露されていた。そこからいじめが始まり、学校へ通えなくなった」というように、カミングアウトした相手に悪気があってもなくても、アウティングによって当事者は居場所を奪われてしまうことがあります。家から追い出されたり、友達から縁を切られたり、職場に居づらくなることもあるのです。

こういったことが起きてしまう背景には、まだまだLGBTに対する差別や偏見があり、セクシュアリティがバレてしまうことで、周りから「普通じゃない」という烙印を押されてしまう社会があります。


3、カミングアウトされたらどうすればいい?

肯定的に受け止め、「誰に伝えているのか」「誰に伝えて良いのか」を聞いてみてください

 

カミングアウトはとても勇気がいることで、それと同時に相手を信頼している証でもあります。まずは肯定的に受け止め、素直に疑問に思ったことを聞いてみたり、いつもと変わらないコミュニケーションをとってみてください。
「ただ知っておいてほしいだけ」、「具体的に困っていることがある」など、カミングアウトする理由はひとそれぞれです。その時、誰にまで伝えているのか、誰にまでだったら伝えて良いのかを聞いてみてください。

 

4、困ったときは自分だけで抱え込まず、相談しましょう

▶︎アウティングされて困った場合

アウティングをされて、そのコミュニティに居続けることが難しくなった等、辛い時は我慢せず、誰かに相談しましょう。よりそいホットラインなど、セクシュアルマイノリティ専門の電話相談を受けている所もあります、ぜひ利用してください。

アウティングについて考える時、LGBTではない人からのアウティングを想定することが多いですが、当事者から「セクシュアリティをバラす」と脅されたというような、当事者間でのトラブルによるアウティングの事例もあります。まずは信頼できる人や、LGBTに関する活動や支援を行っている団体、電話相談を利用して相談してください。


▶︎カミングアウトされて困った場合

突然カミングアウトされて困惑してしまうこともきっとあると思います。ただ誰かに相談したいという思いから、悪気なくアウティングをしてしまったということもあるかもしれません。

例えば、カミングアウトと同時に告白された等の場合、カミングアウトについては肯定的に受け止めて欲しいですが、告白に応えるかどうかはもちろん自分の気持ち次第です。

もし自分が信頼できる相談相手が(カミングアウトした当事者が属していないコミュニティに)いれば、本人の情報を明かさないよう注意しながら相談してみましょう。相談する人がいない場合も、自分だけで抱え込まず、電話相談等を利用して相談してみてください。


相談先:よりそいホットラインなど

「よりそいホットライン」

電話番号:0120-279-338(全国から24時間365日通話可能。4番がセクシュアルマイノリティ専門の相談窓口)

他にも、自治体やLGBT関連の活動団体が独自に相談を行っている場合もあります。「LGBT 電話相談」や「LGBT 地名」などで検索してみてください。

LGBT向け電話相談がまとめられているページや、こちらのブログにも相談窓口が記載されています。

 

アウティングによる加害者も被害者も生み出さないために

アウティングを完全に防ぐことは難しいですが、LGBTの存在があたりまえなものとして社会に認知され、平等に扱われるようになれば、アウティングという概念も過去のものになっていくはずです。


それまでは、「知らない」ことによってアウティングが起きてしまわないよう、万が一起きたとしても、自分だけで抱え込んで辛くなってしまわないよう、この4つのポイントが広く活用されれば幸いです。

 

どんなセクシュアリティでも安心して毎日を過ごせるよう、アウティングの危険性やLGBTの置かれている現状が広く伝わって欲しい。それと同時に、「かわいそう」という視点ではなく、セクシュアリティが何であれ、それがことさら問題にもならないような、同等に扱われるような社会になると良いなと思っています。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok 
Facebook soshi.matsuoka 

「彼女いるの?」という聞き方、ちょっと変えてみませんか?

職場や飲み会でも一度は必ず聞かれる「彼女(彼氏)いるの?」。

LGBTと呼ばれる人の中には、その一言によって「嘘を積み重ねる」きっかけになってしまうことがあります。

相手のプライベートを知ることで信頼関係が深まり、仕事がしやすくなるということはもちろんあると思います。しかし、そこに様々な「想定」がないと、人間関係に思わぬ亀裂を生んでしまうことがあるのです。

 

要求される「異性愛を前提としたプライベートの開示」

私の友人のAさんは、「彼女いるの?」という一言から、職場で「嘘を積み重ね」はじめているうちの一人。

今年から金融業界で営業として働きはじめたAさんは、私と同じく「ゲイ」ですが、そのことを会社ではオープンにしていません。

Aさんに4カ月を振り返ってもらって浮かび上がってきたのは、悪気なく要求される「異性愛を前提としたプライベートの開示」でした。

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805105724j:plain

(Aさん)

 

新卒研修では、話し方が柔らかいからというだけの理由で、同期から「オネエのAくん」というあだ名をつけられました。普段は軽く受け流していましたが、同期100人ほどが集まった親睦会で大声で呼ばれてしまった時は、周りの不穏な空気を感じ「オネエじゃないよ」と苦笑いをしながら否定しました。

居酒屋で店員を呼ぶ際に使うボタンが硬く、Aさんが押せなかった人の代わりに強めにボタンを押すと、周囲の人から「本当に男だったんだね」と言われたそうです。

配属先で初めて自己紹介をした後、一番最初に先輩から投げかけられた質問は「彼女いますか?」でした。同性のパートナーと付き合って約4年になるAさん。「彼女は、いません」と答えました。

取引先との飲み会で突然「お前は童貞か」と聞かれ、「違います」と答えると、「その答え方じゃダメだよ〜」と言われ無理やり風俗へ誘われました。その後もゲイをネタにするような発言があり、Aさんが「ひとそれぞれですよね」と言うと、「ノリが悪い」と一蹴されました。

 

「仕事においてゲイかどうかは関係ない」「仕事にプライベートを持ち込むな」という意見もあると思いますが、「本当にそうでしょうか」と、Aさんは疑問を呈します。

確かに、相手のプライベートを知って、自分のことを話す中で生まれてくる信頼関係はあります。

「勤務中に何度『彼女いるの?』と聞かれたかわからないし、飲み会では異性愛を前提とした下ネタを共に楽しむことを強要される。しかも、『これを言ったらセクハラになるけど』とか『パワハラになっちゃうかもだけど』と、ある一定の理解が進んでいるが故に、それが枕詞のようになってしまっているようにも感じます」

「コミュニケーションをとる上で、お互いに人格をつかむことが大切だということは一致しています。性のことってプライベートなことだからこそ、その開示によって信頼関係につながったと"演出する効果"がある気がします」

 

経営者の視点も、労働者のまなざしも変わりつつある

Aさんの例以外に、同じゲイでも、また他のセクシュアリティの人にも様々な困りごとがあります。それは大きく2つの面に分けられるのではないかと思います。

ひとつは、男女分けが前提となっている設備などの「ハードの面」、もうひとつは"周囲の目"と表されるような、周りの認識など「ソフトの面」です。

当事者が「見えにくい」ので、問題はなかなか顕在化されにくいですが、だからこそ「誰もが働きやすい職場」とはどんな所なのか、想像力をはたらかせながら、当事者がどこに困りやすいのかを細かく把握してハードとソフトの両面で取り組む必要があります。

 

そんな企業のLGBTに関する取り組みは、ここ数年で増加傾向にありますが、最近はさらにそれを後押しする機運も高まってきています。

例えば、5月には経団連が企業のLGBT施策について調査し、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」という提言を発表しました。

調査では、回答した233社のうち(経団連会員企業1385社、156団体)、90%以上がLGBTの取り組みの必要性を感じ、約80%が何らかの取り組みを実施、もしくは検討している状態であることがわかりました。

 

今回の調査結果を見て「予想以上だった」と話すのは、政治・社会本部主幹の大山さん。

「それぞれの企業で取り組みの必要性を理解した上で「ぜひこの提言を参考にしていただいて、横展開していただきたいです」

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805105903j:plain

(左:経団連 政治・社会本部主幹の大山みこさん、右:政治・社会本部長の岩崎一雄さん)

 

経営的な視点も大切ですが、働くひとりひとりからの視点もとても重要です。

以前から、性的指向及び性自認に関する差別・ハラスメント禁止に取り組んできている連合は、昨年の8月にLGBTに関する意識調査の結果を発表しました。

調査によると、職場におけるLGBTの割合は8%で、大手広告代理店の行った調査とほぼ同じであることがわかりました。「職場におけるLGBTへの差別をなくすべきという回答が約8割だった」など、調査についてはこちらの記事にまとまっています。

調査から約1年が経ちますが、総合男女平等局総合局長の井上さんは「反応はものすごく大きかった」と話します。

「これまで差別されていたのが、我慢しなくて良い、おかしいことを『おかしい』と言える時代に変わってきた。それは明らかに昔の排除の社会から比べると変わっていると思います」

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805105949j:plain

(連合 総合男女平等局 総合局長の井上久美枝さん)

 

オリンピック憲章に「性的指向による差別の禁止」が盛り込まれ、東京五輪の「調達コード」という、オリンピックに関係する製品やサービスを提供する企業の選定基準にも「性的指向性自認に関する差別・ハラスメントの禁止」が取り入れられています。

性的指向のことを英語でSexual Orientation、性自認のことをGender Identityと言うことから、頭文字をとってSOGI(ソジ)、性的指向性自認に関するハラスメントのことを「SOGIハラ」と呼ぶ動きも出てきています。

冒頭のAさんの職場のように、まだまだLGBTの存在が想定されていない企業も多い現状。こうした動きが、社員にも、お客さんにも、または営業先にもLGBTがいるかもしれないという想定があたりまえになる、その後押しになることを期待します。

 

心はフラットに、言葉は丁寧に

当事者の生きやすさは、良い意味でも悪い意味でも、最終的には職場にいる周囲の人の捉え方次第で変わってきます。

Aさんの例のように、飲み会でゲイについて揶揄する人にカミングアウトしたいとはなかなか思えません。逆に、日頃からいろいろな「想定」がある人は、多様性を受容する態度がその言動の端々に現れてくると思います。

例えば「彼女いるの」ではなく「付き合っている人いるの」「パートナーいるの」という言葉を使うとか。そもそもアセクシュアル(無性愛)という、性的指向、恋愛感情をそもそも抱かない人もいます。こういった質問自体が適切かどうか考えることも想定の一つかもしれません。

以前「心はフラットに、言葉は丁寧に」という素敵な言葉に出会いました。フラットな視点で、ひとりひとりに様々な「想定」がある職場というのは、きっとLGBTだけでなく、誰もが生きやすい、働きやすい職場なのではないでしょうか。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

「全国で動き出せば日本は変わる」約100名の議員が参加したLGBT自治体議連研修会

ゲイやトランスジェンダーであることをオープンにしている自治体議員を中心に、日本で初めて「LGBT自治体議員連盟」が7月6日に発足。

 

議連の最初の取り組みとして、LGBTについて学ぶ「LGBT自治体議員連盟2017 夏の勉強会」が27日、28日の2日間にわたって開催されました。

開催場所である豊島区役所には「学校で何ができるのか」「同性パートナーシップ制度はどう進めていったのか」と、全国から自治体議員をはじめ100人を超える方々が集まりました。

 

LGBT自治体議連の世話人の一人であり、自らもゲイであることをオープンにしている豊島区議会議員の石川大我さん

「私たちは歴史の重要なポイントに立っています。LGBTに関して、10年前までは『それは個人の問題だ』と言われて続けてきました」

「今日これだけの議員の皆様が集まっていただけているのが本当に感慨深いです。近い将来『かつて日本では男女しか結婚できなかったんだよ』と言うと子どもが驚く、そんな時代になることを目指してがんばりましょう」

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805104745j:plain

(研修会に参加した議員の方々:LGBT自治体議員連盟提供)

 

同性カップルを家族として扱う流れは確実に進んできている

1日目は自治体のLGBT施策に関わった有識者からの講演が中心でした。

 

最初に講師を担当されたのは、今年6月にスタートした札幌のパートナーシップ制度に中心となって携わった明治大学鈴木賢教授。

同性パートナーシップ制度は渋谷区と世田谷区から始まり、札幌も合わせて6つの自治体で施行されています。札幌市では7月の時点で23組のカップルが制度を利用しているそうです。

鈴木教授によると「札幌は世田谷区と同様、条例ではなく要綱に基づいて、カップルの宣誓書に対し受領証を発行する形で承認するという方式を採っています。違う点としては、戸籍上の性別にこだわらない、同性に限定しないという点。実際に利用者で戸籍の性別上は異性のカップルが1組いました。このカップルは制度上は婚姻が可能ですが、本人たちの性自認は"同性"なのでこの制度を利用したのです」「なので、私たちはこの制度を同性パートナーシップ制度ではなく『札幌パートナーシップ制度』と呼んでいます」

 

渋谷区、世田谷区の同性パートナーシップ制度の社会的なインパクトは大きく、いまや民間企業における従業員や顧客の同性カップルも家族として扱うという事例がとても増えてきました。

鈴木教授は異性カップルの事実婚と比較して「事実上、同性カップルを家族として扱う流れは進んできていて、これは世界的な動きであり不可逆です。もうスイッチは押されたのだと思います」

「今動かせるのは自治体と司法です。これだけたくさんの議員さんが来てくれたのは心強い、全国で動き出していただければ日本は変わると思っています」

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805104935j:plain

鈴木賢教授:LGBT自治体議員連盟提供)

 

渋谷区・文京区の施策を紹介「人権の問題を真正面に据えてやっていけるのは公務員であり、議員です」

昨今の同性パートナーシップ制度の広がりのきっかけである渋谷区から、長谷部健区長、男女平等・ダイバーシティ推進担当課長の永田龍太郎さんも講師として登壇されました。

長谷部区長は当事者との出会いから、6年前のパートナーシップ証明書の構想、そして2年前の発行に至るまでのお話とその意義を紹介。

「ただ、パートナーシップ証明書は、パートナーがいる一部の人が幸せを享受できる仕組みのようになっています。大事なのは子どもたちが自分のセクシュアリティに悩まずに生きていけること」

 

担当課長の永田さんは、それに付随して「同性パートナーシップ条例という報道が多くありましたが、実際には『渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例』という名前で、パートナーシップ証明書は性的少数者をサポートする施策のひとつなのです」とお話ししました。

「この条例は男女平等の柱に加えて性的少数者の柱を加えているものですが、この大きな二つの柱は別物ではなく、例えばレズビアンは女性であり同性愛者であるというように、両者は多様な性を尊重する地続きの課題であると感じています」

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805105025j:plain

(渋谷区 長谷部健区長:LGBT自治体議員連盟提供)

 

日本大学の鈴木秀洋准教授からは、自治体におけるジェンダー・人権施策の進め方についてお話しがありました。

元文京区男女協働・子ども家庭支援センター担当課長でもあった鈴木准教授を中心に進めていた「文京区男女平等参画推進条例」では、性的指向性自認による差別禁止を明文化しています。

性的指向性自認は「タバコやお酒などの『嗜好』とは違い、人格を形成する中核部分の問題である」ということを条例の基本的な考えの中に位置づけ、人権の問題として「真正面に据えてやっていくべき。それをできるのは公務員であり議員です」とお話ししました。

条例の法律との整合性や、制定までの戦略、条例制定後の具体的な取り組みについて、また文京区でやりたかったがやれなかったこと等を詳しく伺うことができました。

 

f:id:soshi-matsuoka:20170805105107j:plain

(鈴木秀洋準教授:LGBT自治体議員連盟提供)

 

1日目だけで、既にものすごい情報量でしたが、2日目は豊島区、文京区、世田谷区、中野区の担当課長や当事者議員、地域で活動している当事者団体から各自治体での取り組みの説明がありました。

「同性パートナーシップ制度」が自治体の施策として注目を集めやすいところですが、どの自治体も多様性を受容する基本方針等を策定し、行政や教育に関わる職員や区民向けの研修、相談窓口の設置やコミュニティ運営など多岐にわたる施策を実施しています。

 

研修会では座学だけでなく、実際に新宿二丁目にあるHIVをはじめとするセクシュアルヘルスに関する情報センター、フリースペースの「akta」や、渋谷区男女平等・ダイバーシティセンター「アイリス」を視察しました。

2日間を通して参加した議員の方々は「元自治体職員の方や大学教授など、いろいろな立場の方からお話を伺うことができて良かった」

「具体的に議員としてどういう風に進めていけば良いのかがわかった」など、自分の自治体で活かせる実践的な内容を学ぶことができたという声が多くありました。

 

10年後「あのときの研修会があったから今がある」と言えるよう、草の根から始めて、大きな一歩にしたい

 

参加者数が当初の想定より非常に多かったそうで、全国的な関心の高さを伺うことができました。

世話人の一人であり、トランスジェンダーであることをオープンにしている世田谷区議会議員の上川あやさんは「当事者の議員である我々が身近に感じてきた問題が、当事者以外の議員の中でもダイレクトに身近に感じていただくことができました。バトンを渡された議員のみなさんが、今後どういう成果を報告してくださるかが楽しみです」

 

同じく世話人の一人、文京区議会議員の前田邦博さんは「10年後振り返ったときに、あのときの研修会があったから今がある。草の根から始めて大きな一歩にしていきたい」

参加された自治体の議員の方々が、この研修会で学び取ったことをそれぞれの自治体の施策に反映することができれば、とても大きな動きになるのではないかと思います。すべての地域で性的指向性自認にかかわらず安心して暮らせるよう、様々な自治体で取り組みが加速していくことを期待したいです。

 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

f:id:soshi-matsuoka:20170222180245j:plain

1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

早稲田大学が「ダイバーシティ推進宣言」なぜこのタイミングなのか、LGBT学生支援センターの課長に話を聞いてみた

早稲田大学が7月1日に「ダイバーシティ推進宣言」を公表しました。

今年4月からLGBTの学生を支援する「GS(ジェンダーセクシュアリティ)センター」を設置している同大学では、キャンパス内のだれでもトイレに「All Genders」マークを新たにつけたり、授業の出席簿から性別欄を廃止するなど、多様な性に配慮した施策を進めています。

なぜこのタイミングでLGBTへの配慮を本格的に始めたのか。早稲田大学GSセンター課長の関口八州男さんにお話を伺ってみました。

見えてきたのは、「当事者の声、学生の声をしっかり反映することが、見落とされがちな細かい配慮に活きている」ということ。他大学のみならず、企業など多様性を受け入れる制度づくりの上で参考になるお話でした。

f:id:soshi-matsuoka:20170714210521j:plain
GSセンター課長の関口八州男さん。「GSセンターはLGBTの学生が気軽に相談しに来れたり、ジェンダーセクシュアリティに関心のある全ての人が自由に利用できるフリースペースです」

 

■学生からの提案でもあり、トップダウンでもある「早稲田」だからできること


ーーどういった経緯でGSセンターは設置されたのですか?

関口さん早稲田大学では、2032年で創立150周年を迎えるということで、「WASEDA VISION 150」という中長期計画を2012年に発表しました。その中で、学生が大学に対して、このビジョンに沿った提案を行う「Waseda Vision 150 Student Competition」という学生コンペがあり、そこでダイバーシティ早稲田という団体が「日本初、早稲田大学LGBT学生センターを」という提案をして、総長賞を受賞したのです。

総長賞になったものは基本的に大学は実現を目指すことが暗黙の了解となっており、学生提案ではあるのですが、いわゆるトップダウンでもあり、早稲田大学ならではの仕組みなのではないかなと思います。

2015年の秋から設置に向けて動きだし、ダイバーシティ早稲田が提案したイメージを損なわないよう、学生にも意見を求めながら進めました。

ーー学生から声があがったというのが良いですよね

関口さん:学生から声が上がっていなければ、この組織はできていなかったと思っていますので、提案は素晴らしかったと思いますね。

私も社会の流れの中で「本来は何かしなければいけない」と思っていました。早稲田大学にはもともとLGBTの学生サークルもあったので、一定の認識はあったのですが、その一方で、学生からの相談が顕在化されにくい状況にありました。

学生相談室にも学生はあまり相談に行っていないようでした。理解をしていない人に話すと、辛い反応をされることもあるというのがあって、学生にとってはハードルが高いようです。

--GSセンターはどこが管轄されているんですか?

関口さん:2017年4月に早稲田大学学生部に「スチューデントダイバーシティセンター」が新たに設置されました。GSセンターは「スチューデントダイバーシティセンター」内のひとつの担当箇所となります。早稲田大学の学生部では元々、ICC(異文化交流センター)と障がい学生支援室が設置されており、学生部内のそれぞれ単独の組織だったのですが、「多様性」というひとつのキーワードの中、これらを統合した組織を作るべきではないかということで、新たに設置したGSセンターを加え、「スチューデントダイバーシティセンター」の設置に至りました。

ICC、障がい学生支援室、そしてGSセンターの3つの担当で「スチューデントダイバーシティセンター」は成り立っているんです。

f:id:soshi-matsuoka:20170714210729j:plain

6色のレインボーフラッグがGSセンターの目印。学生が訪問するためのハードルを少しでも下げるために、あえて「LGBT」という名前は使わなかったそうです。

 

■利用者は月に約100人。「敷居の低さ」がポイント

--GSセンターを設置して約2ヶ月、反応はいかがですか?

関口さん:学生の反応は、思ったよりありますね。最初どれくらい来るのだろうと正直思っていましたが、今は1ヶ月で100人弱くらいGSセンター事務所に来所しています。
新入生に配る書類に紹介パンフレットを入れたので、それを見て来たという人も実際にいましたね。

--そんなに来ているんですね。学生からはどういう相談があったりするのでしょうか?

関口さん:ひとつは大学の制度に関すること。例えば4月に多かったのは健康診断に関する相談でした。現在、早稲田大学は学生から相談があれば、個別対応をしています。その他、ハラスメントの相談を受けることもありますし、ご自身の気持ち、セクシュアリティについてちょっと話を聞いてほしいとか、そういう相談もありますね。

あと、本を読みにくる学生も結構いますよ。気軽に読みに来てもらって大丈夫です。本は多種多様に揃えておいて良かったと思いますね。

f:id:soshi-matsuoka:20170714210836j:plain

ジェンダーセクシュアリティに関する様々な本が置かれています。ソファで話をしたり、本を読んだり、思い思いの利用ができるそうです。

GSセンターの職員で、自らもMtX(法的な性別は男性だが、自らを男性でも女性でもないXジェンダーであると感じること)を自認されている大賀一樹さんにもお話を伺った所、GSセンターは「学生が相談にくるための敷居が低い」ことが良いそうです。

「だからこその課題もあって、やっぱりアウティングセクシュアリティについて、本人の同意なく第三者に暴露されてしまうこと)のリスクをどう防ぐか。例えば、GSセンターの利用には受付が必要ですが、ニックネームでもOKにしてもらっています」

学生からの相談内容は様々で、教員へのカミングアウトについてや、当事者間でのトラブルについて、また、ALLY(アライ)としてどう振る舞えば良いのかという相談もあるそうです。

特に当事者間でのトラブルについては、「言える場所が他になくて誰にも相談できない。第三者的な視点で、でも知識や理解がちゃんとある場所が必要なんだなと改めて感じました」

--GSセンター設置と同じタイミングで、全学として、だれでもトイレの表記に「All Genders」というマークを追加したり、授業の出席簿から性別欄をなくしたりという取り組みをされていますよね。今後はどんなことを進めていかれるんですか?

関口さん:とにかくまずは多くの学生にこの取り組みを知って欲しいですね。
ただ、広く学生の皆さんに啓蒙活動を行いたい一方で、当事者の学生への窓口であることも重要だと思っています。

最近、課題と感じていることは、センター内のフリースペースの中で当事者と当事者ではない学生が一緒になることで、当事者の学生が息苦しさを感じてしまっていることです。当事者の学生が安心して、センターで相談できる環境を保っていかないと、学生が来づらくなってしまいます。ただ、当事者ではない学生にも、GSセンターの事をもっと知ってもらいたいと思っています。両者を併存する事がなかなか困難であることから、まずは、当事者以外の学生の啓発活動として、イベントなどを行っていきたいと思います。

また、大学全体の課題の一つとして、教職員の研修が必要であると思っていますので、ダイバーシティ推進室を中心にGSセンターも協力していきたいです。

■「誰のためにやっているのか」当事者の声を拾い上げ、学生と連携する


早稲田大学は今回「ダイバーシティ推進宣言」を公表しましたが、「ただアピールだけして、それで終わり」だともちろん意味がありません。その意味では、これまでも早稲田大学としての取り組みをひとつずつ重ねてきたことが、もちろんまだまだ課題はあるけれども、取り組みを進めていく姿勢を見せる=宣言することにつながっているのだと思います。

お話を伺っていて感じたのは、当事者の声を拾い上げる、つまり学生との連携がとても重要だということ。すごくそこを気遣っているように見えました。

「あまり大学が一方的にということになってしまうと、誰のためにやっているのかとなってしまうと思うんですよね」と話す関口さん。

「私自身も他の人から見れば、ダイバーシティとは無縁な人間のように見られてきたけれども、最近は随分変わったと職場の方からも言われたりします。」と、いつの間にか自分自身の意識も変化しているそうです。

「いろんな人たちが安心して学生生活を送れるような環境にする、というのがひとつの理想です」

早稲田大学の取り組みが、他大学はもちろん、学校や企業など様々なコミュニティに広がることを期待したいです。