「"普通の人かLGBT"じゃない」世界がもっとカラフルに見えてくるきっかけをくれた"東京レインボープライド"とは

LGBT」という言葉を知った頃、自分と異なるセクシュアリティの人と出会う度に「この人はどんなセクシュアリティなんだろう」と、いつも気になって仕方がなかった。そして、そんなことはどうでも良いんだと気づくまでに、私はだいぶ時間がかかった。そう思えるようになったきっかけは、3年前の「東京レインボープライド」だった。
 
 
セクシュアリティはその人を構成する要素のひとつにしか過ぎない。それでも、そのたったひとつの要素が社会から「普通じゃない」とされてしまうことで、自分らしく生きることができなくなってしまうことがある。
どんな性別を好きになるか、ならないか、自分の性別をどう思っているかは、LGBTLGBTではないかに関わらず全ての人が持っているひとつの属性だ。そして、本来それは「普通の人とLGBT」とか、「LGBTとそれ以外」に分けるものではない。セクシュアリティはグラデーションのようになっている。
 
誰もが多様な性のあり方の一つで、自分という存在にプライドを持って生きていける。そんなひとりひとりの存在を「Happy Pride!!」の掛け声と共に、渋谷の街を歩きながら「楽しく」可視化していくイベント「東京レインボープライド」が、今年も5月6日(土)、7日(日)に開催される。
 
 
ゴールデンウィークをレインボーウィークに
 
 
東京レインボープライドのメインイベントである「フェスタ・パレード」は、ゴールデンウィーク最後の6日(土)、7日(日)に渋谷の代々木公園イベント広場で行われる。
 
昨年度の動員数は約7万人。今年は10万人が見込まれている東京レインボープライド。その最大の魅力は、やはり最終日の「パレード」だ。
 

f:id:soshi-matsuoka:20170504170247j:plain(東京レインボープライド2016)

 
華やかに彩られたフロートと呼ばれる山車に先導され、盛り上がる音楽と共に、レインボーの服やフェイスペイントなど、カラフルな思い思いの格好で渋谷と原宿の街を歩く。
特に、渋谷といえば一番最初に思い起こされる「スクランブル交差点」を通過するのは普段なかなか経験できない貴重な体験だ。
 
 
そもそも、なぜこうした「パレード」が開催されるようになったのか。この話は1969年のアメリカまで遡る。
 

Hairpin drop heard around the world

 
"Hairpin drop heard around the world” ヘアピンの落ちる音が世界中に響き渡った。
 
1969年6月28日、アメリカで差別や弾圧に苦しめられていたLGBTが立ち上がった「ストーンウォールの反乱」。最初に警察官に投げつけられたのは、ある一人の"女装したゲイ"の「ヘアピン」だったという逸話がある。
 
その1年後に反乱を記念して行われたデモが、今日の「プライドパレード」のはじまりと言われている。ヘアピンが落ちる音が響き渡るように、いまや世界中の至るところでプライドパレードは毎年開催されている。
 
これだけ世界との距離が近くなり、同時に分断も起きている今の時代に、国境も越えて、同じ方向を向いて、同じ人間として自分たちの存在を祝福しあう。世界の大きな流れの息吹を感じる機会はなかなかないと思う。
 

「カラフルな格好でインスタに写真をあげたいから」でも良い

 
東京レインボープライドの会場では、毎年様々なブースが出展されている。年々その華やかさは増していて、例えば、GoogleマイクロソフトYahoo!ミクシィ、freee、ライフネット生命資生堂野村證券アクセンチュアIBMリクルート、丸井などなど、誰もが聞いたことがあるのではないかという企業のブースは、初めて来る人でもきっと楽しめるものが多いと思う。
 
今年は自治体として渋谷区もブースを出す。また、今年初めてドン・キホーテもブースを出展し、オリジナルのレインボーグッズを販売する予定だ。それを身につけてパレードに参加するのも良いかもしれない。
 
日差しが強いと喉も渇く。チェリオコーポレーションのブースでライフガードをもらったり、飲食ブースの中でも特に、エスニックな料理がとても美味しいirodoriでお昼ご飯を食べながら企業以外のブースも回ってみたい。
 
疲れたら休憩できるようなブースもある。いろんなセクシュアリティの人と話をしてみると、きっと東京レインボープライドをより楽しめると思う。
 
 

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毎年パレードの日のラストを彩るスペシャルライブ。今年のアーティストは「中島美嘉」さんに決定した。「偏見や差別のない、様々な幸せの形を尊重し合えるムーブメントが広がっていく事を強く願っています」とコメントを寄せてくれている。
 
お祭り気分でふらっと参加できる東京レインボープライドは、もちろん参加するのにセクシュアリティは不問。LGBTや性の多様性に関心のある人もそうでない人も、ただ「面白そうだから」でもいいし「寄ってみた」だけでも良い。「カラフルな格好でインスタグラムに写真をあげたいから」という理由でも、「ゴールデンウィーク最終日、することが何もない」からでも全く問題ない。いろんな人がそれぞれの楽しみ方ができるイベントになっている。
 
東京レインボープライド、フェスタ・パレードは5月6日(土)、7日(日)に代々木公園イベント広場で開催。詳細は東京レインボープライドの公式WEBサイトから確認できる。
 

自分の目の前に広がる世界は、以前より確実に色鮮やかでカラフルなものになっている

 
自分がゲイなんだと気づき始めた小学校の頃、違う学年に男性として入学して、自分のことを女性だと思っている人がいることを知った。でも、自分とは関係のないことだと思っていた。
ゲイは笑われる存在なんだと思い込んできた18年間が過ぎて、LGBTという言葉に出会ってすぐのときも、その言葉が自分と関係のあることだとは思わなかった。
 
高校を卒業し上京してきて、たまたま参加した東京レインボープライド。自分と異なるセクシュアリティの人にたくさん出会った。パレードを歩くカラフルな人たちを見て、この時も「この人たちはどんなセクシュアリティなんだろう」と気になって仕方がなかった。
 
そこから、いろんな人に出会って話を聞いて、自分を含むそれぞれの困りごとを知って、社会の構造にも触れた。同時に、ひとりひとりがその人自身の生き方や幸せのあり方について考え、時には躓きながらも大切に毎日を生きていた。
 
いつの間にか、目の前にいる人と話すときに「この人はどういうセクシュアリティなんだろう」と考えることもなくなった。
 
自分の目の前に広がる世界は、以前より確実に色鮮やかでカラフルなものになっている。
 
 

プロフィール

松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)

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1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。NPO法人ReBitスタッフ。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program

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