大学を卒業しました。就職はせず「一般社団法人fair」を立ち上げます。
こんにちは、松岡宗嗣です。1年間の休学を挟みましたが、先日、明治大学を卒業しました。
今後について報告ブログを書こうと思います。少し長くなりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
報告は大きく3つあります。
明治大学を卒業しました
2013年に名古屋から上京し、明治大学政治経済学部に入りました。最初の方は人間関係がうまくいかず寮生活はすぐにギブアップ。新しいことを始めようと思って入ったサークルもなんとなく合わなくて行かなくなりました。
一方、Twitterでゲイの友達と多く出会うことができて、大学以外での生活は充実していました。マイノリティにとってインターネットの力は偉大だと思います。多分この頃一生分遊び倒しました。笑
転機となったのはカミングアウトでした。
高校卒業後に地元の友達にゲイであることを伝え、受け入れてもらえたこともあり、大学で出会った人にも徐々にカミングアウトするようになりました。
思い返すと、上京してすぐの居心地が悪いと感じていたコミュニティでは、自分の居場所はここにないと無意識に感じていたのかもしれません。
新たな出発点となったReBit
「LGBT」という言葉を知ったのはこの頃でした。セクシュアリティを伝える/伝えないという選択ができないのは社会の側に問題があるのでは。もしLGBTと呼ばれる人たちの存在を知らないなら、見えていないなら、自分を媒介にして少しでも見えるようにできれば。そんなことを思うようになりました。
そして、明治大学にあるLGBTの学生サークルに入り、2014年に初めて東京レインボープライドに参加。そこでReBitに出会いました。
学校に行ってLGBTについて授業をする。自分の小中高校時代を思い出して、次の世代の人たちにとって、セクシュアリティが生きる上でハードルにならないようにと願い、参加するようになりました。
仲間との出会いにも恵まれ、ReBitでの濃密な約3年間は、多くの出会いときっかけを得ることができた新たな出発点になりました。
最初のチャレンジとなったMEIJI ALLY WEEK
2015年の12月に開催したMEIJI ALLY WEEKも、自分の中の大きなきっかけのひとつでした。
「LGBTは居ないのではなく見えていない」のと同時に、「LGBTについて理解したい、支援したいと思う人も見えていない」。それなら「ALLYを可視化しよう」と、明治大学情コミ学部ジェンダーセンターの田中先生に相談した所からはじまりました。
3人からスタートしたチームも最終的に10人程に。初挑戦したクラウドファンディングでは多くの方にご支援いただきました。メンバーには迷惑をかけてばかりだったなと思いますが、田中先生はじめ最後まで一緒に駆け抜けてくれた仲間に感謝しかありません。
最初はLGBTを支援する人をALLYと呼んでいましたが、当事者どうしでも、さらにはジェンダーやセクシュアリティ以外の"違い"についても味方(ALLY)となることはできるのではと。「誰もが誰かのALLYになれる」この言葉はいまでも大事にしている軸になっています。
社会の見え方が変わったSmartNews ATLAS Program
SmartNewsのNPO支援プログラム「SmartNews ATLAS Program」の第1期にReBitのスタッフとして参加。その後、望月優大さんに誘っていただきATLASの運営に携わることになりました。
望月さんの後ろをついていくのがやっとではありましたが、最初の頃の自分を思い返してみると、少しは成長したかな...(今もまだまだですが)。
約2年間で自分の中の思想的な部分、特に社会の見え方が変わってきたように感じています。ひとえに望月さんの影響が大きく、望月さんとの出会いは人生の分岐となる大きなきっかけの一つとなりました。ギブしてもらうことばかりなので、これから恩返しができたらと思っています。
一般社団法人fairを立ち上げます
長くなりましたが、これからの話をしたいと思います。
まず、大学を卒業した私ですが、就職はしないことに決めました。少しだけ就職活動もして葛藤もありましたが、素直にやりたいことをやる。自分の想いを信じて進むことを選択しました。
立ち上げる団体の名前は「fair」です。「どんなジェンダーやセクシュアリティであっても、フェアな社会を作りたい」そんな願いを込めています。
その背景には、社会がセクシュアルマイノリティにとってフェアではない現実があります。
LGBTの約6割が学校でいじめを経験し(※1)、同性愛や両性愛者の約4割、トランスジェンダーの約7割が就職時に困難を感じています。(※2)
例えば、
- 就活で結婚などの話題からカミングアウトしたところ、面接を打ち切られた
- 飲み会で上司から『お前はホモか?気持ち悪い』と怒鳴られた
- 外国人の同性パートナーが日本に来るとき、法的なパートナーではないため配偶者の在留資格を得られなかった
- 法的なパートナーではないため特別養子縁組を受け入れることができなかった
- 会社の設備が男女分けしかなく、自分の望む性別での利用ができなかった
- 医療機関の受付で戸籍上の名前で呼ばれることから受診しづらくなった
- 公的書類で本人確認が必要なときに、身分証の性別と見た目の性別が一致しないことからトラブルが起きた
- 性的指向や性自認を理由にいじめを受け、就労困難となり生活保護を申請したが、窓口で『それくらいの理由で就労できないわけがない』と言われ、申請を断念した(※3)
など、教育や就労、医療、公共サービスなど、さまざまなライフステージのさまざまな領域で、LGBTを取り巻く課題は山積しています。
もちろん当事者の中には、自分は困っていないと感じる人もいると思いますが、LGBTであることが要因で困難を感じる人がいるとき、社会のあり方として、困っている人に標準をあて、サポート体制を整えることが必要だと私は思います。
例えば、性的指向や性自認を理由とした差別を解消する法律や、同性間のパートナーシップを保障する法律。トランスジェンダーの中には医療的アプローチを望む人も望まない人もいるため、戸籍の性別を変更する際の手術要件の撤廃などが求められます。
さらに、制度を整えても、運用するひとや社会の意識が変わらなければ差別や偏見はなくならない。LGBTが身近な存在であるという認識を広げるためには、当事者の存在を可視化していく必要もあると考えています。
どんなジェンダーやセクシュアリティでも、フェアな社会をつくるために、「Equality:平等」な制度を整え、存在を「Visibility:可視化」する。
この2つの軸をもとにfairは活動をしていきます。
「関心をあつめる」ための3つの事業
課題解決のためのアプローチはさまざまありますが、fairでは「関心をあつめること」を切り口に3つの事業を展開していく予定です。
- Media:記事や動画などを通じて情報を発信していきます。
- Campaign:より多くのひとを巻き込むため、キャンペーンを設計していきます。
- Conference:課題と解決方法を考えるために、シンポジウムなどを実施していきます。
これまでもブログやハフポストを通じて、個人で情報を発信してきましたが、今後はより多くの人を巻き込んで情報を発信していきたいと思っています。
「Fair’s fair(フェアにいこうよ)」という言葉がありますが、「フェア」であろうと思うひとりひとりの気持ちが、誰もが生きやすい社会につながると私は信じています。
もちろん、私ひとりではまだまだ力不足です。知識や経験も足りていないところばかりです。それでも、もし少しでもこの想いに共感し、関心を持っていただける方がいたら、ぜひ応援していただけると幸いです。一緒に活動したいと思う人がいたら、ぜひ声をかけてください。
なかなかいつも一歩踏み出すのに時間がかかる私ですが、丁寧に進んでいけたらと思います。どうぞよろしくお願いします!
個人でデザイン事業もやります
最後にもうひとつだけ。
以前から個人でデザインを担当させていただく機会が増えました。
SmartNews ATLAS Programで支援した「スタディクーポン・イニシアティブ」では、全てのデザインを担当しました。
スマートニュースでも様々なイベントのクリエイティブを作ったり、
チャンス・フォー・チルドレンの東北応援月間キャンペーンのクリエイティブを担当したり、
キズキ共育塾のパンフレットを制作させていただきました。
株式会社コモンセンスの望月さんとともに、NPOの情報発信を引き続きお手伝いしています。もし頼みたい!ということがあれば、ぜひぜひご連絡お待ちしています!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
未熟ながら、チャレンジを積み重ねていきたいと思っています。温かく見守っていただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いします!
2018年3月29日
松岡宗嗣
※1 宝塚大学看護学部日高研究室 LGBT当事者の意識調査「REACH Online 2016 for Sexual Minorities」(2016)
※2 (c) Nijiiro Diversity, Center for Gender Studies at ICU 2016
※3 LGBT法連合会 http://lgbtetc.jp/pdf/list_20150830.pdf
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program